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プロローグ


 

 

 「やっぱカッコいいなぁ、、」


 暗闇の中、ロビーのソファに腰掛け顔を青白く照らし、俺はそう嘆息する。


 「なんで現実に居ないんだろうな、こんな奴。」


 目線の先には、青白く光るテレビ画面がある。そしてそこに映っているのは、あるアニメのキャラクターであった。


 無造作に伸びている髪、やる気というのを感じさせない死んだ目、緩んだ口にだらしない服装、


 ここまで聞くと、ただの汚いニートだが、実際アニメでは仲間のためには本気を出し、エゴむき出しの行動をするが最終的には人々を助け、いつのまにか信頼されていく。


 ──そんなカリスマ性のある人間であった。


 「マジでカッコ良すぎかよ。俺も本気出したら凄い強いとか、知らず知らずのうちに慕われているとかねぇのかな。」


 俺がそう呟きながら、ガシガシと頭をかきテレビを消すと

唯一の光源が消え、辺りは深い暗闇と静寂に包まれた。


 その中、俺はフラフラと足元に散らかる漫画を避け、自分のベットへと飛び乗る。


 そのまま仰向けになり、ぼーっと天井を眺めるとそこには闇で真っ黒に染められた天井があった。


 「キャラ変えしてぇなぁ〜。」


 視覚聴覚が遮断され、考えることがなくなり、ついそう呟いてしまった。


 だから夜は嫌いなんだよ。


 だが、一度その思いを口にすると、止まらなくなるのが人間である。俺はそのまま1人でぶつぶつと文句を垂れ始めた。


 「あのキャラに憧れて髪を伸ばしたのに、髪が柔らかすぎて綺麗に整っちゃうし、瞼を落としてみても全く目つき悪くならないし、服装をぶかぶかにしてみても可愛いって言われるだけだし、なんなんだよ。誰も俺の理想に気付いてくれない。」


 確かに自分でも、あのキャラと自分とでは見た目が真逆すぎると感じる。


 あっちは癖毛に奥二重に背丈の高い細マッチョ、コッチは直毛にパッチリ二重に背丈の低い運動音痴。


 よく、男の子なのに可愛いとか羨ましいと言われるが、こっちからしたらひどく迷惑である。


 「そんなに羨ましいなら俺にあの死んだ目をくれよ。代わりに俺の目あげるからさ。勝手に羨ましがりやがって、うざいなぁ。」


 どうせこの様子を他の人が見たら、十分恵まれているのに傲慢だとか、そうは言ってるけど実際可愛い見た目で良かったとか思ってるでしょとか考えるのだろう。


 「ふざけやがって。何も知らないくせに一方的に誉めて来てさ。お前らの愛玩動物じゃねぇんだよ俺は。」


 こんな強い口調を使うのも、可愛いと舐められないためでもあったりするのだが、、


 俺は一通りストレスを発散させると、これ以上余計なことを考えないよう枕に顔を埋め、意識を手放す。


 ああ、起きたら別の世界にでも行けたらいいのになあ


 最後にふとそう願ったのだけは、はっきりと意識できた。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ───これはどういう事だ



 ぶかぶかの寝巻き姿で、俺は途方に暮れていた。


 寝る前も思ったが、確かに俺は、男らしくない容姿や姿で目を引く事は多くある。


 しかもそんな自分が、人の行き交う街のど真ん中に寝巻き姿でいるのだ。

 

 いつも以上に好奇な目で見られるのも分からなくはない。


 ただどうにもおかしい。


 「ここってコスプレ会場だったりする?」


 さっきからコッチへ無遠慮に視線を向ける先にいるのは、頭髪が赤髪や金髪や白髪を始めとした奇抜なやつばかりで、その服装も全身ローブだったり鎧をつけていたりと、非現実的なものばかりである。


 確かにおかしいが、まあ、これに関してはまだコスプレでもあり得なくはない。


 それよりも、一番意味がわからないのがアレだ。


 「だとしても、あの空にいる奴はなんだよ、、」


 俺の頭上には、日に照らされ影になった大型の何かが優雅に空を閃空していた。


 その姿は簡単に言うと、ファンタジーで言うドラゴンのようなものである。


 やばい、意味不明だけど一つだけ思い当たりがある。


 「ドラゴンが本物だとすると、これはアレだな──」


 俺は空をジーッと眺め、諦めたように息を吐くと、いつものように気怠げに瞼を落としながら。


 「異世界転移ってやつか。」


 空から、ドラゴンと思われる甲高い鳴き声が聞こえてきていた。



読んで頂きありがとうございます!


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