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再会しました(嬉しくないです)

「どうして……どうしてエリーデがここに……?」


 エリーデは少しも表情を動かさず、待ちくたびれたようなため息を吐く。


「どうしてって、そりゃあね。私は王宮主席魔術師であり、そしてこれから【新しい王国】の主となるのだから、ここに居て当然でしょう?」

 

 王国主席魔術師……? 新しい王国の主……?

 エリーデが言わんとしていることがサッパリ理解できない。ちんぷんかんぷんだ。


「ねぇ、エリー……」

〔Gugagaga……‼〕


 1歩近づこうとすると、玉座を囲んでいるドクロの兵士たちが反応して剣を構え始めた。エリーデを護るように。これが意味することは、つまり……。


「エリーデ。そのドクロの兵士はあなたが操っているのね?」

「ええ。これらはアンデッドと呼ばれるもの。私の命令を忠実に実行する下僕げぼくよ。ガラムの町で一度会ったでしょう?」


 テルマさんの泊まっていた部屋のドアをぶち破ったドクロの兵士──いや、アンデッドの姿が思い返される。


「……あれもあなたが仕向けたってわけね」

「そうよ。王国の各地にアンデッドを散らばらせ、そしてシャルロットの反応を探らせていたの」

「じゃあ掃除者ギルドの閉鎖や指名手配の件も!」

「もちろん私よ。だって【この計画】を発動するにあたっては、貴女に王都へと来てもらわなければ困ってしまうのだもの。余計な道草はさせたくなかったからね」

「計画……?」


 訊き返すと、エリーデは薄く微笑んでそして天井へと手を掲げた。

 

 ――なにかを仕掛けてくる……っ?

 

 私たちは大きく1歩飛びのいて、なにが起こってもいいように臨戦態勢をとるが、しかし。

 

「見て。綺麗だと思わない?」


 エリーデの手に集まったのは小さく青白い無数の光の球。攻撃してくる様子はない。

 それは確かに美しい光景にも思えたけれど、しかし見ていると心が不安定になるような恐ろしいなにかを感じた。


「なに、それ……」

「これ? これはね、貴女も持っているものよ」


 エリーデはそう言って、自身の胸を指した。

 

「これは人間なら誰もがその身に宿している魔力の源──魂よ」

「な……っ⁉」


 魂? そんな実在するかどうかも分からないものがその青白い光の球だって?

 そんなこと、本来ならとても信じられないような話だけれど。

 数千、いや数万にものぼる光が飛び交う目の前の光景に、私の頭に思い浮かんだのは王都の中で死体のようにぐったりとした様子で倒れ込んでいた人々の姿だ。


「まさかエリーデ、あんたが王都の人たちを……?」

「ふふふふ……っ。ええ、その通り。これは王都に住む10万8千人の人々の魂よ」


 エリーデが心底楽しそうに、コレクションの自慢でもするかのように両手を広げた。


「すごいでしょう? 私、王国主席魔術師になってこんなことができるようになったのよ! なんて便利! なんて優越感! 【我が世の春がきた】とはこのことね!」


 エリーデの高笑いが王の間に響く。

 それはディルマーニ家に居たころの、私の知る彼女ではなかった。

 

「これでようやく私の夢が叶うのよ! やったー! バンザーイ!」

 

 エリーデは手放しで、幼児のような純粋な笑顔を浮かべていた。

 それはひたすらに合理性を追求し、メリットが無ければ自分の感情さえも動かさない冷徹な彼女とはまるで違う。

 その豹変ひょうへんっぷりが少し恐ろしくもあったけれど、いつまでも圧倒されているわけにはいかない。


「なによ、夢って。どうやったか知らないけど、王都の全員の魂を集めていったいなにをするつもり?」 

「選別よ」


 エリーデは酷薄な笑みを浮かべる。


「私はこれから、この1つ1つの魂が私の王国で生きるに値する人間のものかどうかを選別するの。そして要らないものはぜんぶ排除するわ」

「は、はぁ……っ? なに言ってるの? 正気?」

「正気に決まってるじゃない。貴女だって身をもって知ってるはずよ、シャルロット。この世には生きる価値の無い人間が多すぎるってことにね」


 エリーデは憎々しげな目で空中に浮かぶ魂をにらみつける。


「既存権益を守るだけの貴族。自分の私腹を肥やすことしか考えない商人。地位と金を持つだけの無能が才能にあふれる人間を踏みつけにするような非道ひどい世界。私はこの世を一度終わらせて、そして創り直すの」

「……なによ、それ。エリーデ、アンタ神にでもなるつもり?」

「そうね。そうとらえてもらって構わないわ。それでね、シャルロット。ここからが本題」


 エリーデはそう前置きすると、にっこりと満面の笑みを浮かべて、


「ねぇシャルロット、死んでちょうだい? 私の新しい王国のために貴女の死が必要なのよ」


 はっきりとそう言い切った。


「なにを言ってるの……? 私の、死……?」

「シャルロット。私はこの王国で【1番】でなければならないの。貴女は私に敗北をもたらしたこの王国唯一の存在だから。だから、貴女を殺さないと」


 直後、エリーデの身体からドス黒い魔力が発せられる。

 それに呼応するように、エリーデの周りに控えていたアンデッドたちが剣を抜き、そして私たちに襲い掛かってきた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「シャルロットは今後どうなるのっ……!」


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