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ドラゴンを倒しましょう(決着です)

 風の賢者のダンジョンを攻略して1週間が経った。

 

「ふぅ――」


 私とグリムは静かに息を吐いて、ドラゴンの封印されていた柱が立つ湖のほとりでその時を待っていた。

 1週間、長いようで短い日々。その中で私たちは休息を取り、そして作戦を立てていまここにいる。

 もちろん、それはドラゴンを倒すための作戦だ。

 

 ――さて、本当に上手くいくのかしら……?

 

 正直なところ不安でいっぱいだった。作戦に漏れはないと思うけれど、でもやっぱりあのドラゴンとまた正面から戦わなくてはならいないのかと思うと足がすくむ気持ちだ。

 

「シャル様、大丈夫です」


 そんな恐怖に震える心を見抜いてか、隣のグリムがこちらを向く。

 

「僕が絶対にシャル様をお護りしますから。ドラゴンの攻撃の1つだって、シャル様へ通したりしないとお約束します」

「グリム……」


 その優しくも勇ましい言葉に、状況も忘れてジーンときてしまう。


 ――ああ、グリム。なんてたくましく成長したのかしら……。つい数か月前までは私の胸で泣いていたっていうのに……っ。

 

 これが『男子3日会わざれば刮目かつもくして見よ』っていうことわざが表すものなのだろう。常にいっしょにはいるけれども。

 男らしいその成長に、なんだか嬉しいような、そして同時にグリムが自分から巣立って行ってしまうような寂しい気持ちだった。

 

「ありがとう、グリム。いっしょに無傷で帰りましょうね」

「はいっ! ……っと、来たようですよ……っ!」


 湖の中心にある柱の辺りに、赤い光が輝き始める。

 そしてそれがひと際大きく光ったかと思うと、やはりそこにドラゴンが現れた。


〔Gurrrrru‼〕


 うなり声を轟かせながら、凶悪な黄金の目で私たちをにらみつける。


〔GuGaaaaaash‼〕


 私たちをこの前の人間だと認識したのだろう、憤怒の叫びと共にドラゴンが炎のかたまりを連続して3発こちらに撃ち込んでくる。

 しかし、


「遅い――ッ!」


 炎のかたまりが着弾して爆発したその場所に、すでに私たちはいない。

 そのときにはもう、グリムは私のことを背負ってドラゴンの真後ろを飛んでいた。

 

「せぇいっ!」


 グリムの剣がドラゴンの後頭部へと叩き込まれる。

 

〔Gurrrrru‼〕 

 

 攻撃に気づいたドラゴンが後ろを振り返るがそれも遅い。

 そのときにはすでに私たちは正面へと回り込み、ドラゴンのそのアゴに一撃。さらに死角に回り込んで一撃。

 そのスピードに、ドラゴンはまるで追い付けていない。

 

 ――すごいわグリム……っ! まるでスド並みの速さじゃない……っ!

 

〔Gugyaaaaau‼]

 

 自分の攻撃は当たらずグリムにばかり攻撃されている、その状況にドラゴンが怒り狂ったように叫ぶ。

 そしてひと通りの攻撃を済ませて湖のほとりへと着地した私たちめがけて力任せに突進を仕掛けてきた。

 それはまったくもってこちらの狙い通り。

 

「――聖属性魔術拘束術式ッ! 展開(オープン)ッ!」


 木陰から10人余りのエルフが現れて、ドラゴンが突進してくる空間めがけて手を掲げる。

 するとそこに光の糸が張り巡らされた。

 

〔Gugaaaaa⁉]

 

 ドラゴンが何十本もの光の糸へと突っこんで、そして絡まった。

 

「――束縛(クローズ)ッ!」


 エルフたちの声に合わせて光の糸がキツく締め上げられる。

 ドラゴンの動きが完全に封じ込められた。


 ――よくやってくれたわ、ウィーズたち!


『俺たちエルフが生み出すこの【聖属性魔術】の糸は伸縮自在。それに魔力が尽きない限りは切れたりもしない。エルフの精鋭をかき集めれば、この糸でドラゴンを10秒くらいは拘束できるだろう。その間に頼んだぜ』


 親指を立ててそう言ったウィーズたちの言葉が思い返される。

 さて、完全に動きを封じられたドラゴンが次に仕掛ける攻撃はなにか。

 

〔GuGaaaaaash‼〕

 

 その口元からオレンジの炎がこぼれ出る。遠距離攻撃だ。

 ドラゴンが爆炎を灯した口を大きく開いた、その時。

 

 ――【システム:爆発属性魔術無効化】、起動。

 

 私はその口元からそれを消し去った。

 ただこの前とは違い【超圧縮球】の準備はできていない。

 ドラゴンもそれを分かっていたからこその炎の攻撃だったのだろう。

 

 ――でも、残念だったわね。今回の私たちの狙いはお前の口の中【どころ】じゃないのよっ!


「グリムッ! 行くわよッ!」

「はいッ!」


 グリムが再び私を抱えて地面を蹴る。そして超スピードでドラゴンへと突っこんだ。

 私たちの狙いは最初からただ1つ。かつてウィーズの言った言葉通り。


 ──もうぜんぜん、ぜんっぜん気は進まないけれども。


 でも何度も何度も検討を重ねて、それでこれが一番確実だって結論が出てしまったから。そうするしかないよねって決まっちゃったから。

 私はヤケクソ気味な笑顔で、

 

「――おっ邪魔しまぁぁぁぁぁぁあああっすぅッ‼」


 そして私とグリムは音速の勢いですっぽりと、ドラゴンの口の中へと飛び込んだ。

 ヌメヌメする唾液やらなんやらにまみれながら、2人でドラゴンの食道を通って到達したのは胃袋の中。

 ドボンっ! たっぷりの胃液に私もグリムも頭から漬かってしまう。

 

「――うぐ……っ!」


 酷い臭いだ。目に染みる!

 しかしここからは私の仕事だ。役割を果たさなければならない。


 ――【システム:超圧縮球】、起動。

 

「――集中、集中、集中……っ!」


 ドラゴンの胃袋の中で超圧縮球を作り出す。

 しかし、今回圧縮しているのは空気ではない。このドラゴン自身の胃液だ。

 

「――集中、集中、集中……っ!」

 

 私たちの身体を漬け込んでいた胃液のすべてが私の目の前の圧縮球に吸い込まれていく。

 

 ――知ってるかしら、水も空気と同じ。いや、それ以上に圧縮されれば圧縮されるほどに温度を上昇させるのよ。

 

 恐らく何百リットルもあった胃液はすっかり圧縮されて、太陽のようなオレンジ色に輝くビー玉ほどのサイズになっている。

 これ……いったい何千℃になっているのかしらね?

 

「できたわ、グリム。脱出するわよ」

「はいっ!」


 その超圧縮球(胃液バージョン)をその場に置いて、私はグリムにおぶさった。

 それを合図としてグリムはドラゴンの胃袋に剣を突き立てる。

 

〔Gugyaaaaash⁉〕


 外側からドラゴンの悲鳴が聞こえる。それと同時にグリムは再びの超スピードで食道を駆け上がり、そして大きく開かれたドラゴンの口から脱出した。

 空中に投げ出された私たちが見たものは、苦痛に耐えきれずあちこちを飛び回るドラゴンの姿だ。


「これで終わりよ」


 ――【システム:超圧縮球】、解放(リリース)ッ!


 その直後、マグマのような液体がドラゴンの身体を内側から突き破って噴出する。


〔GyaBoh…………‼〕


 その断末魔は一瞬だった。ドラゴンは空中で翼を広げたまま湖へと落ちていく。

 水をジュワッと蒸発させながら、その身体は湖の深くへと沈んでいった。

 

「か、勝った……っ! 勝ったぞーーーっ‼」


 エルフたちの歓声が聞こえる。勝利の雄叫おたけびだった。


「やった! やったぞシャルくん、グリムくん!」


 ウィーズもまた感激に声を震わせながらこちらに駆け寄ってくるのだが。


「「ゲロゲロゲロゲロ……」」


 私とグリムは身体中にまとわりついたあまりにひどいドラゴンの胃液ゲロの臭いに、2人して吐いていてそれどころじゃなかった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「シャルロットは今後どうなるのっ……!」


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