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エルフに招かれました

 光の糸に絡めとられたドラゴンが地面へ転がり、そうかと思うと今度は私たちを手招くエルフらしき男が現れる。

 

 ――なに? いったいなにがどうなってるっていうの……っ?

 

 訳が分からない。状況が不明過ぎる。

 しかし、


「君たち! その拘束も長くはもたないっ! だから早くこっちに来るんだ!」


 その言葉に、私とグリムは頷くとエルフに向けて走り出した。

 だってこのままいつまでもドラゴンと向かい合っているわけにもいかない。それに、彼はおそらくあの光の糸のことを【拘束】と呼んだ。

 

 ――つまり、どんな技かは知らないけどあの光の糸を出したのはこのエルフの可能性が高いってことよ。

 

 もしこのエルフが悪意を持っているのだとしたらドラゴンから私たちを助ける意味なんてないはずだし、とすれば少なくとも私たちの敵ではない……と思いたいところだ。

 

「よしっ! こっちだ!」


 私たちが走ってくるのを見て、エルフもまた走り出す。

 そうしてその彼の背中を追って、森の中をしっちゃかめっちゃかに移動した。少なくとも私には適当に進んでいるようにしか思えない、そんな道のりだった。

 それが10分か20分か続き、ようやくエルフが足を止めた。


「よし。着いたぞ」


 そこには一見するとなにも無い、ただの森が広がっているだけだった。

 しかし、エルフが首から下げた木札のようなもの掲げると、目の前の空間が割れる。

 

「こ、これ……っ!」


 その光景には見覚えがあった。

 そう、私たちがディルマーニ家の敷地の近くに作ったログハウスを隠すために張っていた結界と同じものだったのだ。


「はは、驚いたかい? 我々エルフは代々、人からもモンスターたちからも離れて村落を築いている。誰にも見つからないようにするために、こういった仕掛けを用意しているのさ」

「は、はぁ……」

「さあ、入りなさい」


 エルフに促されるままに結界の中へと足を踏み入れる。

 するとそこには、森の中とは思えないほどの人の営み――いや、エルフの営みが広がっていた。


「魔の森に、こんな場所があるなんて……っ!」


 立ち並ぶ木組みの家屋、地面には石畳の代わりに綺麗に刈られた芝が広がっており、その整備された大通りを数十人のエルフが行き交っている。


「君たち、こっちだ」


 私たちがその光景に呆気にとられていると、エルフの男はもう別の場所に向かって歩き出していた。そのあとを追って着いた先はたぶん誰かの家。他の民家らしき家屋と比べるとずいぶんと立派なところだった。

 

「まあ、座るといい」


 客間のような場所に通されて椅子を勧められる。

 いやいや、私たち、なんだか流れのままにここまで来ちゃったけれども。


「あの、申し訳ないんだけれど状況を確認させて?」

「うん?」

「あなたはあのドラゴンから私たちを助けてくれたって認識で合ってるのかしら」

「ああ、そうだな。あのままだったらドラゴンの餌食えじきになっていただろうからさ」


 当然だろう? とエルフが首を傾げる。

 うん。まあ確かにそういう危機的状況にはいた。

 

「そう……それはどうもありがとう。助かったわ。それで、私たちがここに連れて来られたのにはどういう理由があるの? あとあなたはエルフで合ってる? そしてここは誰のおうち?」

「めちゃくちゃ質問してくるな……。とりあえず俺はエルフで合ってる、それ以外についてはすぐに分かるさ」

「すぐに分かる……?」


 どういうこと? と私がさらに質問しそうになっていたとき、部屋の扉が開いて何人かのエルフが立て続けに入ってきた。


「ほぉ、人間」


 その中の1人、長いあごひげを蓄えた老人のエルフが私たちを見て目を見開いた。


「人間がこの村を訪れるなど、何百年振りだったかのぉ……。見たところまだ幼子のようじゃが、この者たちは何者じゃ? どうしてここにおる?」

「はい。村長。私が招いたのです。この者たちはたったの2人でかのドラゴンへと立ち向かい、そして大きな損害を与えておりました」

「なんと……! その幼さでとんだ勇士であったか!」


 村長と呼ばれた老人のエルフがこちらを勢いよく覗き込んできたのでちょっとびっくりする。

 危うく条件反射で防御用のシステム化魔術が起動するところだ。


「村長。この者たちと協力をすれば、あるいは……」

「ふむ。なるほど、そういうことか……」


 エルフたちはなにやら仲間内で納得したかのように無言でうんうんと頷き合っているけれど、いやいやこちらにはなにひとつ理解が及ばないのですが?


「ごめんなさい、なんの話です……?」


 静まり返る部屋の中でポツリと疑問をこぼす。

 すると私たちをここに連れてきた男のエルフがなにやら爽やかな笑顔を浮かべて、


「どうだ君たち、俺たちと組んであのドラゴンを退治しないか?」


 なんて持ち掛けてきた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「シャルロットは今後どうなるのっ……!」


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