あまりに短絡的ではありませんか
「……英雄的に死んでいく? なんですかそれは?」
「字面通りのことです。貴女たちは消息を断った掃除者チームを見つけるために、勇敢にも【魔の森】へと踏み入った。しかし実力の足らなかった貴女たちはいともたやすく魔物たちの餌食になる。さすがに【魔の森】へは私も入ることはできませんから、その遺体は回収できない。そういう筋書きなんですよ」
ギルバートが指を鳴らすと、私たちが抜けてきた森の方の道からいままでは捜索チームにいなかったはずの人間――いや、捜索対象のはずの掃除者チームが現れた。
「彼らには1週間前にこの調査依頼を受けてもらい、そしてあえて消息を断ってこの付近に潜んでもらっていたんです」
「なぜそんなことを?」
「分かりませんか? 子どものクセに頭が切れると思っていたんですがね、買い被りでしたでしょうか」
「……まさか、あなた方は新興の掃除者チームである私たちマリオネットが邪魔なだったから、みんなで潰してしまおうと考えたんですか? 表向きは危険地域での捜索依頼で命を落としたことにしてしまおうと」
「その通りですとも。はは、分かってるじゃないですか。すべてはこの僕が仕組んだトリックなのですよ」
得意げに胸を張って、ギルバートは続ける。
「ガラムの掃除者ギルドにはいろいろと融通が利くのでねぇ、ギルド長に我が父上から直々にこの依頼を【マリオネット】と【エターナル・ブリリアント・オンスウェン】、そしてオンスウェン家の息のかかった掃除者チームたちへの指名依頼ということで出してもらうようにしたのです」
どうだここまでは分からなかっただろう? というしてやったり顔でこちらを見てくるギルバートにイラっとくる。
――ていうか別にトリックでもなんでもないし。ただの力技よね? しかしまさか本当に私たちが邪魔だったから消してしまおうなんていう短絡的な理由だったとは……。
「あの、本気なんですか?」
ジョークじゃないよね? といちおう訊き返す。
「はは、もしかして命乞いがしたいのかい? 聞いてやってもいいけれどねぇ、あまり期待しない方がよろしい。マリオネットのみなさん、特にシャル殿。この前貴女が大衆の前で私に恥をかかせた罪はとても大きいのだから」
先日のアレか。私としてはやられた借りを返しただけなんだけど。
――しかし、あまりに下らないこの展開には呆れ果ててため息も出ないわね。
なんでこんなバカな連中を相手にしなくてはならないのだろう。
しかも緊急招集に休日を潰された挙句、すべてが仕組まれた私たちにとってはなんの利益にもならない捜索依頼に5日も取られて、その裏ではチープな動機で暗殺されそうになっていた。
なんだコレ。虚無感がすごい。
「はははっ! どうやら怯えて声も出ない様子じゃないか、シャル殿。最初からそれくらい大人しくしていれば目をつけられずに済んでいたものを」
高笑いするギルバートは有頂天だ。
まあせいぜい、つかの間の天下取りの気分でも味合わせておいてやろう。
「よしみんな、聞けっ! マリオネットで怖いのはあのスドとかいう赤毛の女だけだ。ヤツが加わってからマリオネットは急速にランクアップを果たしているんだからな。私たちエターナル・ブリリアント・オンスウェンがシャルとグリムを殺す。その間に他のチーム全員でスドを相手しろ。いいな?」
おう! と全体から返事が返ってくる。
おうじゃないわよ。
なにに気合をいれているのよお前たちは。
「……のぅ、シャル、グリム。我は寝ててもよいか? なんというか想定を大幅に下回る事態に脱力が極まったのじゃ……」
後ろからスドのやる気のない声が聞こえてくる。
「この依頼にキナ臭さは感じておったのじゃがのぅ……。もっとこう、壮大なトラップが仕掛けられているとか、我らの行動を政治的に縛るような謀略があったりするものかと身構えておったら……なんじゃコレ? 我らは子供のお遊戯会にでもお呼ばれしとったのか?」
「ね。ホントになんだコレ? って感じよね……。分かりみが深いわ」
よかった、私の感覚だけおかしいのかなと思っていたらスドも同じだった。
タネも仕掛けも権力を使っての力任せ。最後のひと押しである私たちの殺害も力任せ。
なんのひねりも無くて眠くなってしまう気持ちが分かる。
しかし、
「許せません……っ!」
唯一、こちら側ではグリムが歯を食いしばって怒りに打ち震えていた。
「シャル様の優しさにつけこんで騙し、あろうことか殺そうとするなんて……っ!」
「まあグリム落ち着いて。敵ははっきりしたわけだし、ちゃっちゃと済ませよう?」
「そうですね。シャル様はお下がりください」
「え?」
グリムは1人で前に出て剣を構えると、
「このような卑怯者たちの相手、僕1人で充分です。シャル様やスドさんのお手を煩わせるまでもありません」
自信たっぷりにそう言い放った。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「シャルロットは今後どうなるのっ……!」
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