捜索しに行きましょう
ガラムの町を出て平原を北に歩く。
以前の昇格試験のときに歩いたのと方角は同じだ。
丸1日歩いて、ひと晩野営をして、そしてまた歩く。
今回の捜索依頼の調査は往復で5日かかるらしい。
――つまり最低4日間は湯船とさよならしなくてはならないってわけね……ああもう考えただけで大変に辛い。
そしてガラムの町よりも隣町の方が近くなるほどの距離を歩いて、
「こちらの道に入るようだ」
全体を先行して歩いているギルバートのチームの1人が森へと繋がる道を指し示す。
次第に景色は見通しの悪い森のものへと変わっていく。
「敵襲ーっ‼」
先行して歩いている掃除者チームから声が上がる。
どうやらエンシェント・ウルフが通行人を待ち伏せるためか、木陰に潜んでいたらしい。
私も戦闘態勢を取るが、しかし集められている掃除者チームのすべてが高ランクなだけある。
先行していたチームが飛び掛かってきた狼たちを次々に倒していき、私たちの出る幕などない。
――油断は禁物だけど、確かにこのチームなら生存率は高いでしょうね……。
比べてしまっては悪いけど、【疾風の狼殺し】よりも断然レベルは上だった。
「どうしたんです、マリオネットのみなさん。どうやら成果は0のご様子ですが」
「すみませんね。私たちが出る前に終わってしまったようで」
「はははっ、まあ仕方ありますまい。ここにいるのは私を含めて歴戦の勇士たちですのでねぇ。貴女たちの出番などあるかどうか」
ギルバートの言動は終始イヤミったらしくて腹が立ったが、まあ確かにコイツ自身も腕は確かなようだ。
火属性と風属性の魔術を使えるようだったが、立ち昇る火の威力を見るに恐らく我が忌まわしき父上であるラングロよりも強い魔術師であることは間違いなかった。
――まあ、せいぜい活躍してもらうことにしよう。
私のシステム化魔術にグリムの身体強化魔術があれば先ほど程度の狼の群れくらい突破は容易い。
しかし、当然のごとく私たちの持つ魔力は有限なのだ。
私の身体を自動防御してくれるシステム化魔術も魔力が枯渇してしまっていては起動したりはしない。
グリムの身体強化魔術だって同じだ。
――今回の依頼ではなにが起こるのか分からないわけだし、なるべく消費魔力は抑えておかないとね……。
まあ、スドは心配要らないだろうけど。めちゃくちゃ強いから。
それからも散発的にモンスターの襲来があったが、無難に対処。森の中で危険ではあったものの、夜になったので各チーム順番で見張りを立てて野営。
「おいおい。マリオネットのみなさんだけじゃちょっと頼りないかなぁ。誰か別のチームもいっしょに見張りに立ってあげてくれないか?」
「……シャル様、アイツに一撃喰らわしてきてもよろしいでしょうか」
「よろしくない。我慢してよグリム」
細々としたトラブル(主にギルバートの嫌味に起因するもの)なんかはあったが、まあおおむね順調に私たちは先を進むことができていた。
ガラムの町を出て3日目、私たちの目的地であるその場所に辿り着くその時までは。
「……ここが、目的地?」
歩き続けた結果、私たちは北の森を抜けていた。
その先にあるのはうわさに聞く程度の【魔の森】のはずだったのだが、しかし。
「ギルバートさん?」
「なんだい?」
「森、抜けちゃってますけど?」
私たちの目の前に広がるのは一面の青空。ついでに崖。
常人なら落ちれば助かることは無いだろう断崖絶壁だ。
「私たちは【魔の森】付近の調査をしていた掃除者チームの捜索をするんじゃなかったでしたっけ?」
「ははっ、なにを隠そうその崖の下に広がる森がその【魔の森】さ」
「そうですか。それで、どうしてわざわざこんな高台に? もっと他に道は無かったんですか?」
「ああ、無いとも――貴女たちが行く道はね」
ギルバートがそう言い切るのと同時、剣士たちは抜刀しそして魔術師たちは手を掲げる。
私とグリム、そしてスド。マリオネットの私たちに向けてだ。
「……これはいったい、どういうつもりですか?」
「なに、大したことではありませんよ。ガラムの町で英雄的な活躍をしている貴女たちには、ここでも同じように英雄的に活躍したことにして死んでいってもらう、それだけのことですから」
「面白かった!」
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「シャルロットは今後どうなるのっ……!」
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