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《グリム視点》恐怖

 巨像による初撃、僕を横に吹き飛ばすように振られた棍棒を、身体強化魔術でジャンプしてかわした。

 下から空振りとなった棍棒がブオンと大きく風を切る音がする。


 ――これは直撃したらマズいな……。

 

 身体強化魔術を使っていてもタダでは済みそうにない。

 それほどに破壊力は強大だったが、しかし幸いなことにその動きは重い。

 簡単に巨像の背後を取ることができる。


「りゃあッ‼」


 身体強化魔術で最大限までに高めた腕力で、力任せに巨像を斬りつける。

 一撃でその足を切断することができた。

 しかし、


「うそ……」


 数秒のうちに巨像の足はひとりでに繋がった。

 そしてこちらに振り向きざま、こちらに一撃。

 

「くっ‼」


 相変わらずその動きは遅い。

 しかし、それはつまりさきほどと全く変わらない速度でもあるということ。


 ――攻撃しても、ダメージを与えられない……っ?

 

 それからも巨像の攻撃を何度となくかわしつつ、足や腕、身体を斬りつけていくが、その傷はたちまち回復していってしまう。

 

「はぁ……っ、はぁ……っ」


 気づけば息が上がっていた。

 

 ――おかしい。体力をつけるための鍛錬もいっぱいしたし、こんな程度の動きで疲れるわけないのに……。

 

 おかしいのはそれだけじゃなかった。

 これだけ動いて汗だってかいているのに、手足の先が冷たくなっていて小刻みに震えていた。

 

「ッ!」

 

 巨像の振り回した棍棒を紙一重でかわす。

 危なかった。少し、足がもつれた。

 

 ――マズい……このままじゃマズい……っ。

 

 そういえば今更だけどこんな状況はこれまで無かった気がする。

 本気の戦い――命のやり取りを経験したこと自体、あまりない。

 食糧調達のために猪などの獣と戦ったことはあるけど、それは絶対に勝てると確信を持ったあとだった。

 ディルマーニ家では護衛の人たちと戦ったけど相手にもならなかったし、エリーデ様には一撃でやられてしまったみたいだけど、その記憶もない。

 スドさんとの戦いは途中で終わって、さっき戦ったアルガルドたちは手ごたえを感じる間もなかった。

 だから、こんなに息苦しくなる状況は初めてだ。


「――えっ⁉」

 

 気が付けば、巨像の棍棒をかわし続けている間に壁際に追い詰められていた。

 

 ――しまった。自分で逃げ道を1つ塞いでしまうなんて……っ!

 

 巨像が今度は棍棒を上から思い切り振り下ろしてくる。

 それを横っ飛びで回避して、しかし。

 

「ぐ――ッ⁉」


 床に叩きつけられた棍棒が砕け散り、それがいくつもの大きな【つぶて】となって僕の頭や身体にぶつかってくる。

 かなりの勢いに大きく吹き飛ばされ、着地もできずに背中から地面に落下した。

 

「ゴホッ、ゴホッ!」


 肺から空気が抜け、咳き込む。

 咳き込みながらもなんとか起き上がると、右の視界だけ赤かった。

 ……?

 なんだか生暖かい右の顔を触る。

 

 ――血だ。血が額からあふれ出してるんだ……。

 

 触れたその手を見れば真っ赤に染まっている。

 ドクドクと額から血が流れて目に入った。


 ――痛い……。


 ドスンという音が響いて、身体が跳ねあがるようにビクついた。

 巨像がこちらを向いて、再び歩き出してきたのだ。

 

 ――た、立ち上がらないと。

 

 そうは思うのに、しかし足はまるで骨を失ってしまったかのように力が入らない。

 それに手が震えてしまって、かたわらに落ちている剣を握れない。

 

 ――どうしたんだろう、僕。どうしちゃったんだろう、僕は。

 

 心臓だけがうるさく動いていた。

 ドスンドスンと巨像が近づく音が聞こえるたびに鼓動が跳ね上がる。

 考えがまとまらない。

 頭の中が真っ白になっていた、そんな時だった。

 

 ――爆発的な轟音とともに、壁もろとも、僕の入ってきた扉が吹き飛んだのは。

 

「グリムーーーッ‼」


 部屋に吹き込んでくる風に、大きな声が乗ってやってくる。

 破壊された部屋の入口に立っていたのは――。

 

「シャル、様……っ」


 僕のこの世で1番大切で、唯一の忠誠を誓った人。シャル様。

 その彼女が息を切らせながら吹き飛んだ入り口に立っていた。

 

「グリムッ‼ グリム、ケガがッ‼」


 シャル様は地面に座り込んでいる僕を認めると、巨像など目にも入らないかのようにこちらに駆け寄ってくる。


「シャル様っ! 危ないですっ!」

「え……?」


 僕の方へと歩いていた巨像の首がシャル様へと向く。

 マズい、攻撃対象を変えるつもりだ。

 そう思ってシャル様へと逃げるように言いたかったのだが、それは遅過ぎた。

 

「グリムを傷つけたのはお前かーーーッ‼」


 シャル様の怒鳴り声と同時、おそらくいつもの空気の塊の攻撃が巨像へといくつも炸裂する。

 僕たちの何十倍の質量があるだろうその巨像は、風に吹かれる小枝のように地面をたやすく転がった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「2人は今後どうなるのっ……!」


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