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《グリム視点》僕は最近なんだか空回りしてばかり

 真っ暗闇の中、そこにはただランプが照らす半径1メートルほどの視界があるだけだった。

 それほどまでに広い空間だった。

 突然の地面の崩落に巻き込まれて僕が落ちた先の、ここは。


 ――とにかく、早く上に行けそうな道を探さなければ……!

 

 ゆっくりと壁伝いに前へと進んでいく。

 身体強化魔術のおかげもあって、身体もランプも無傷なのは不幸中の幸いだったが、それ以外は最悪の展開だった。

 本来ならシャル様の役に立って当然の立場である僕が、1人でこんな穴に落ちて帰れなくなっているなど恥以外の何物でもないのだから。

 それにシャル様はとてもお優しい方だから、きっといまも落ちた僕を救出しようとして行動しているに違いない。

 僕は役に立つどころか足を引っ張っているのだ、現在進行形で。

 

「はぁ……なんだか僕、最近は空回りしてばっかりだ……」


 シャル様の騎士になろうと誓い、だからシャル様の役に立てるようにがんばってみた。

 野営の時も、この採石場に入る時も。

 でも、そんな付け焼き刃な努力はことごとく無駄になってしまった。

 だって、僕がやろうとしたことは全部スドさんにもできたし、むしろスドさんの方がすごかったんだから。

 

 ――家族でもない僕がシャル様の側に居るためには、僕自身がシャル様を護れるような人間でいなければダメなのに……。

 

 シャル様やスドさん、周りの人に頼ることばかりで自分1人じゃなにも成しえていない、こんなていたらくの僕にはとてもじゃないがそんな資格は――。

 

「……ダメだダメだ。なにを弱気になってるんだ、僕は」


 片手で自分の頬を張る。


「そんなこと気にしてる場合じゃない。いまは一刻も早く――」


 シャル様を安心させるために上へと繋がる道を探さなければ、と続くはずの言葉は途中で飲み込まれた。

 その代わり、

 

「なんだ、これ……」


 驚きの声が漏れる。

 目の前にあったのは鉄製の扉。

 

「ここまでの道のりがやけに人工的だとは思っていたけど……まさか、本当に人の居た形跡があるなんて」

 

 そう、この地下空間は自然にできたというにはあまりに不自然過ぎた。

 普通、なんの手入れもされていない洞窟であれば地面が隆起していたり岩があったりするものだが、ここにはそういったものが一切なかったのだ。

 地面というよりはむしろ床。建物の中にいるような平面だった。

 そしてその上で歩いた先にあったのが扉というオチだ。

 

「誰かが住んでいる……? いや、住んでいた……?」


 それは分からないが、しかし少なくともこの扉の先になにかがあるというのは間違いないようだ。

 願わくば、この扉の先に階段かなにかがあって地上へと繋がっていればいい。

 そう思いつつ、扉を開いた。

 

「なんだろう、ここ……」


 そこには階段はなかった。

 その代わりに、声の反響具合からして先ほどの場所よりも広い空間のようだ。

 扉から手を放し、その空間に足を進めると、その時。

 勢いよくいま入ってきた扉がひとりでに閉まる。


「な……っ⁉」


 そしてどういう仕組みになっているのか、その扉の上に掛けられた松明に火が灯り、その隣の壁のものも、さらにその隣もと連鎖的に松明が点いていく。

 無数の明かりによって空間全体が照らし出される。

 そこは円形の部屋で、そして奥の方に鎮座ちんざしていたなにかが動き始めた。


「人……?」


 そう思ったが、しかしそれは人と言うにはあまりにも大きかった。

 近づくにつれてその正体が分かる。

 それは、岩でできた巨像だった。

 縦にも横にも、僕の体長の2倍はある棍棒を肩に担いで1歩1歩こちらに近づいてくる。


「どうして像が動いているのかは分からないけど……」


 1つ確実なのは、それが僕を倒すために動いているのだろうということだ。

 巨像は僕を間合いにとらえるやいなや、棍棒を大きく横に振り回した。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「シャルロットは今後どうなるのっ……!」


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