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昇格試験を受けましょう

 太陽が真上に輝く真昼、私とグリムは2か月ぶりにガラムの町を出ることになった。

 私たちがディルマーニ家から出てやってきたのとは反対の出口から、隣町に向かう道を歩いていく。

 辺りは平原で風通しもよく、実に爽やかな風景だ。

 これがピクニックなら気分も高揚するのだが、あいにくと今回はグリムと2人での小旅行などではない。


「さて、ここからは丸1日歩きどおしになるからな。体力配分はしっかりとするようにね」


 先頭を行く3人組の内の1人、2つのタガーを腰に差す中肉中背の男――テルマが声をかけてくる。

 その他の2人は身体の半分ほどはある大きな盾を担いでいるガッシリとした体格の男――ラックス、そして弓矢を持つ痩身の男――キューレ。

 彼らはチームを組んでいるランク5の掃除者たちであり、今回の昇格試験を受ける私たちに付いた同行者だった。


「お前たちの身の安全は俺たちが保障する。変に緊張することなく、リラックスして試験に臨めばよいぞ」ラックスがいかつい顔を緩めて言う。

「そうそう。別に1回落ちたからって次が無いわけじゃないんだからね。気楽に行こうぜ」キューレもまたこちらを気遣うように言った。


「……ありがとうございます」


 彼らからの同情の込められた言葉にとりあえずそうやって返した。

 うん、まあ仕方ないわね。はたから見れば私たちは【横暴な貴族の言いなりにはなるまいと無謀な行動に出た世間知らずの子ども】そのものなのだから。

 

 ――そう。私とグリムはいま、掃除者ランク5への昇格試験を受けるため、ガラムの町の外へと遠征をしに行く道中なのだ。

 

 掃除者ギルドでギルバートとかいうクソ貴族に圧力をかけられ、低ランク帯の仕事をいっさい受けられなくなったのはまだ今朝のこと。

 そこから私は掃除者ギルドで周りからの制止を振り切って昇格試験を受けることになり、勢いそのままにその日のうちに町を出立するに至ったというわけ。

 

「しかし、テルマさん。あなた方はどうして私たちの同行者を買って出てくれたのでしょうか? 他の掃除者の方々は私やグリムのことを白い目で見ていた気がしますが」


 自分で省みても思うことだけど、正直今朝の私の言動は軽率そのものだった。反省。

 ただでさえ幼女と少年という2人組という力不足な見た目のうえ、勢いで昇格試験を受けようとしたのだから、周りの冷たい反応も仕方のないことだったと思う。

 だが、そんな中でこの3人組の掃除者チーム【疾風の狼殺し】は私たちの昇格試験の同行者を買って出てくれたのだ。

 

「ん~まぁ、さすがに仕事も止められて昇格試験も受けられないんじゃ、やるせないなと思ってさ」言いにくそうにテルマが言う。

「でも、テルマさんたちも私たちが受からないと思っているのでしょう? 完全な無駄骨になるとは考えなかったのですか?」

「いや、俺たちは君たちの合否に関わらず、討伐した分だけ報酬が貰えるから無駄骨なんてことにはならないよ。それに今回がダメだったとしても、この経験は君たちにとっても無駄なことなんかじゃないって俺は思うぜ」


 テルマのその言葉に、キューレが笑った。


「俺たちも昇格試験には3度も落ちたもんなぁ」

「おいおい、いまその話をするのはやめろよ! 格好がつかないだろ!」


 どうやら先ほどのテルマの言葉は昇格試験での失敗経験が元になっているらしい。


「だいぶ討伐が難しいんですか? この昇格試験で狩るモンスターは」

「いや、難易度としては決して高くはないけどな。でもこの昇格試験を受ける掃除者っていうのはずっと低ランク帯の仕事ばかりをしてきた人ばかりだから、戦闘にはどうしても不慣れなのさ。だからな、何回か試験に落ちながら経験を積んでいくってのが普通なんだよ」


 ああ、なるほど。初めての試験が初めての実戦になるケースが多いということなのね。

 それなら戦闘経験が無い掃除者が何度も落ちるというのも納得だった。


「ちなみに君たちはモンスターとの戦闘経験はあったりするのかい?」

「いえ、ないです」


 テルマの問いに、即答する。

 いちおうログハウスで過ごしていたころに狩猟経験はあったし、兄や姉、父とのバトル展開もあったりはしたけど、あれはいちおうモンスターではなかったから、今回訊かれている戦闘経験にはカウントされないわよね?


「まあそりゃそうだよな。だったらやっぱり今回は無理をしないで、モンスターを観察するに留めておいた方がいい。その経験がきっと次回の試験に活かせるさ」


 テルマにそう締めくくられる。

 

 ――うーん、でも私としてはできるだけ早いうちに新しい稼ぎの目処をつけたいのだけれど。

 

 ても、それでもいちおう頷いておく。

 実際私たちがモンスター相手にどれだけ戦えるかっていうのは未知数なことだしね。

 ラングロを倒したのは不意打ちみたいな方法でだったし、エリーデは正面から倒したけれど彼女はまだ子供だったから。

 私がこの世界でどれだけの力を持っているのか分からないうちは、思い上がるのはよくない。


 ――だからいまは掃除者として先輩であるこの3人の言う通りにするのがベストでしょう。


 そう決めて、まだずいぶん先にある昇格試験の地へと足を進めるのだった。


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「シャルロットは今後どうなるのっ……!」


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