《グリム視点》きっとシャル様の身に危険が迫っているに違いありません
「――フッ! ――ハァッ!」
剣の振り方1つ1つに意味を持たせて素振りを行って、1000回。
最近は風を斬る音もだいぶサマになってきたような気がしている。
「シャル様もよくお褒めになってくださるし、僕も少しはお役に立てるくらいにはなっているかな……」
ただ惜しむらくはいまだに実戦の経験は皆無だということ。
せいぜい食糧とする肉の確保のために山に生息する獣と戦うくらいだった。
だから、自分の実力がどの程度のものなのか知れないのはとても歯がゆい。
それでもシャル様をお守りできるくらいの力を得るために、と毎日の鍛錬に手を抜くことはなかった。
――だって、いまは僕の1分1秒を惜しまぬ鍛錬こそがシャル様へと尽くす忠誠そのものなのだから。
シャル様は仰った。『外の世界には私たちの知らない脅威がたくさんあるのだから、あらゆる力を身に着ける必要がある』と。
そして同時に、僕に力をつけて欲しいとも仰った。
そのために僕の仕事の負担の一切を失くし、そして用具入れで生活していた僕に素敵なログハウスまであてがってくれた。
そうして日々明け暮れることになった剣術と魔術の鍛錬はとても厳しく肉体的に辛いことが多かったけれど、それでも生まれて初めて感じたシャル様への忠誠心を胸に、この1年はこれまでの人生で最良の時間を過ごすことができていると実感している。
「でも、充実感を感じているヒマなんてない。もっと強くならないと……」
先日の社交界で、シャル様へと公爵家の子息が悪意の牙を剥いたらしい。
とても強くそして慎重深いシャル様の敵ではなかったようだが、しかしそのせいでいささかシャル様はご自身の立場を危うくされたみたいだ。
ご当主から監禁まがいの罰を受けそうになったようだったし、公爵家に逆らったことによって今後もしかしたらいっそうの危険が押し寄せてくるかもしれない。
――そうなったときに、果たしていまの僕にシャル様をお守りできるほどの力があるのだろうか?
分からない。基準にできる力が僕の周りにはなかった。
自分の力がどれだけのものかも分からないし、魔術を使ってくる公爵家の子息やシャル様のご兄弟たちに太刀打ちできるものなのかも分からない。
でも、分からない以上はあまり考え込んでも仕方がなかった。
――とにかくいまは寝食の時間を削ってでも、いっそうの力をつけなくては!
すべてはシャル様のために。
そうして過酷だった鍛錬の量をさらに増やしていたときだった。
『ディルマーニ家からの家出に関しての進捗報告会を開こうと思ってるんだ』
シャル様が急にそんな発案をして、毎日の夕食のあとに家出の準備がどれだけ整っているのか、あとどれくらいで終わりそうなのかといったことを共有してくれるようになった。
そしてその日以降のシャル様の動きはいつも以上に機敏さを増しており、とてつもないスピードで魔術の鍛錬と家出の準備を進めているようだ。
そんなことをされてしまっては、シャル様のような頭の良さが無い僕であっても気付いてしまうことはある。
――シャル様の身に、なにか目に見えるような危機が迫っているに違いない……ッ!
公爵家の手先か、あるいはディルマーニ家のご兄弟たち、あるいは当主自らか。
きっとシャル様と僕の家出の妨げになるような行動か、あるいはシャル様自身へと危害を加えようとする者がでてきており、だからこそ家出の準備を急ピッチで進める必要が出てきたということだろう。
さて、こんな状況で僕はなにをするべきか……。
「とにかく、鍛錬は続けなきゃダメだ。力が無ければシャル様をお守りすることすらできないのだから。でも念のため、これからはいつでも駆けつけられるようにシャル様の身の安全に気を配れるようにしておこう……」
そう決めて、僕は今日も早朝から剣を振るうのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「シャルロットは今後どうなるのっ……!」
と思ったら
この画面の下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
なにとぞ、よろしくお願いいたします。




