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油断は禁物ですね

 アルフレッドとフリード、その2人に私は裏庭へと腕を引っ張って連れて行かれ、そして放り出される。

 さすがの体格差にふらついてしまっていたところ、地面が意思を持つかのようにうねり、そして私の足首を絡めとった。

 

「ヒヒッ! もうこれで逃げられないぞぉ」


 振り返ると、フリードがしてやったりといった表情でニヤニヤとしている。

 なるほど、どうやら土属性の魔術で拘束されたらしい。


「これであの社交界のときのように逃げ回ることはできなくなったわけだ」


 アルフレッドが見下すように言ってくる。

 

 ああ、あの時のことね。

 私のドレスをはぎ取ろうとして、2人がかりでも逃げ回る私に触れることすらできなかったあの時のこと。

 まだ根に持っているなんてみみっちいわねぇ、兄たちよ。


「それで? 兄様たちは私にどのようなご用件で?」


 呆れ混じりに私がそう訊くと、


「どのような、ご用件だと……ッ?」


 なぜかは分からないけれどアルフレッドがこめかみに青筋を立て始める。

 あれ? なんだろうこの反応は。

 カルシウムが足りていないんじゃなくて?

 そんな風に余裕ぶって考えていたことが仇になった。


「――かはっ⁉」


 いきなりのアルフレッドの蹴りがどストレートに私の腹へと突き刺さる。

 さすがにノータイムの一撃にはどんな対処もできはしない。

 あまりの苦しさと激痛にうずくまって膝を着きそうになったが、しかしアルフレッドに髪の毛を鷲掴みされて顔を持ち上げられる。


「シャルロット、ぜんぶお前のせいだぞ……ッ!」怒りに満ちた声でアルフレッド。

「な、なに、が……」腹の痛みに耐えながら、訊き返す。

「これだよ……ッ!」


 アルフレッドはポケットからくしゃくしゃになった紙を取り出して私に突きつける。

 それは普段あまりお目にかかる機会のない高級紙。

 どうやら貴族の間で使われる便箋のようだった。


「これはな、公爵家のティム様から送られてきた手紙だッ! ここになんて書いてあるか分かるかッ⁉」


 アルフレッドは怒りに任せて便箋を私の頬に押し付けて訊いてくる。

 私の目は頬には無いので読めるわけもない。


「ここにはな! 『教育の行き届いていないディルマーニ家の子息たちとは今後の付き合いを考えさせていただく』と、そう書いてあるんだよッ‼ ティム様はどうやら圧力を他家にもかけているらしい、軒並みこの一帯の貴族たちと俺との関係が断たれたんだッ‼ これがどいういうことが分かるか⁉ 俺の家督が絶望的ってことなんだよ、お前のせいでッ‼」


 ――あー……そういえばアルフレッドは長女のエリーデと家督の奪い合いをしてたんだったかしら。まだ諦めてなかったのね。

 

 それはそれはご心中お察しします。

 そうやって遺憾に思わなくもなくも思わない。

 まあつまりはどうでいもいいってこと。

 それよりもなによりも、いまの私は蹴られてしまったお腹が痛くてしょうがなかったし。

 

 ――ああでも、うん。だいぶ痛みは引いてきたかしら。

 

 目の前ではいまだにアルフレッドが怒鳴り散らしているけれど、正直そっちはそんなに気にしていない。

 私の髪の毛を鷲掴みにしたまま怒鳴っている間は追加の暴力も無いだろうし。


「おいッ、どうしてくれるんだよッ! お前はどう責任を取ってくれるんだッ⁉」


 私は無属性魔術を応用した、身体強化魔術を発動させる。


「おいッ! 聞いてんのかッ⁉」

「はい、聞いてますよ」


 私はそう答えつつ、私の髪を鷲掴みにするアルフレッドの手首を両手で持ち、メキリ。

 

 ――あっ、しまった。

 

「んぎゃぁぁぁあああああああああッ⁉ ⁉ ⁉」


 アルフレッドが絶叫しながら地面にうずくまって、自分の手を抱えるように縮こまる。

 

 ――力加減を間違えちゃった……。

 

 本当なら軽く手首の関節を決めて蹴り飛ばすだけのはずだったのに、間違えてアルフレッドの手首を1回転させてしまった。痛そう。

 まあ、やっちゃったもんはしょうがないわね。

 

「えいっ」


 とりあえず目の前でうずくまられていても邪魔だったので、当初の予定通りアルフレッドは蹴り飛ばしておく。


「がはっ」


 アルフレッドがフリードの横まで吹き飛んで地面を転がった。

 まさか反撃されるとは思っても見なかったのか、フリードがあぜんとした顔でこちらを見る。

 確かにちょっとやり過ぎた感はあるかもだけど、私がやり返したことがそんなにおかしいことかしら?

 どんな動物だって自分の危機には立ち向かうのが当然のことでしょう?


「もう用もないのでしたら、私はこれで」


 とんだ道草を食ってしまった。とは言っても今日はもう自室へと帰って寝るだけだけど。


「シャ、シャルロットぉ~~~ッ!」


 しかし、私が2人から背を向けるやいなや、フリードが土の魔術で先端の鋭く尖った土くれを飛ばしてくる。

 なにそれ、怖いわ。下手な場所に刺さったら死ぬじゃない。


 ――まあ、刺さることもないから大丈夫なんだけどね。ぜんぶ対応済みですから。


 土くれは飛んでいる最中に自壊を始め、そして私に届く前で完全に塵となった。


「なっ⁉ なんでっ⁉」


 困惑するフリードへと、「さあ?」ととぼけておく。

 まあただの化学変化よ。

 システム化魔術で土くれを形成している砂と水分子の結合を解く空間を私とフリードの間に形成しただけ。

 これを使えばどんな土魔術もただの砂に早変わり。残念だったわね。

 

 ――まあ、オツムが残念なフリードへこんなこと言っても分からないでしょうし、そもそもするつもりもないけれど。

 

 とりあえずやられたら絶対にやり返しますよということで、腰の引けていたフリードも蹴り飛ばしておく。

 

「ぎゃんっ!」


 ふいに尻尾を踏まれた犬のような悲鳴を上げてフリードが転がっていく。

 ざまぁないわね。

 

「これに懲りたら、もう2度と私にはちょっかいをかけないことです。言っておきますが次は手加減しませんよ」


 うめき声と嗚咽を重ねる2人の兄たちへと鼻を鳴らして、私はその場を後にした。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「シャルロット、グッジョブ(*^^)b」


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