反省しましょう
――あーあ、ちょっとやらかしちゃったわね。
社交界から2日経ち、5日間の食事抜きと自室からの外出禁止を言い渡されている私は珍しくちょっと反省気分だ。
ティムが気を失ってからその後、社交界はお開きになった。
どうやらだいぶハデな着地をしてしまったようで、背骨にヒビが入り片腕が折れたティムは意識を取り戻してすぐに激痛を訴え、急患として医務室へと緊急搬送されていってしまったのだ。
――いやでも、私もね? まさかあそこまで吹き飛ぶとは思わなかったのよ?
私があの場で使った魔術は【システム:真空作成】。
その名の通り、私が指定した範囲に真空状態の空間を作るシステム化魔術である。
私は真空状態の空間をティムの身体の周りへと作ることによって、ティムが放つ風の魔術がその空間へと流れ込むようにしたのだ。
私としては風の魔術がこっちに飛んでこなければOKだと思っていたけど、結果としてティムの魔術は暴発。想定以上の結果になってしまった。
「いやぁ、反省反省」
「? なにがですか?」
私の独り言に、グリムが首を傾げて訊いてくる。
あ、ちなみにいま私がどこにいるかというとログハウスだ。
システム化魔術で自作したマットレスの上で、森で採れた果物を片手にゴロゴロとしていた。
――え? 食事抜き&自室からの外出禁止を言い渡されているんじゃなかったのかって?
確かに言い渡されているけれど誰もそれに従うとは言ってないわよ。
だいいち、なんでそんな監禁プレイに付き合わきゃならないの?
反省なんていうのはね、誰かにやらせれてするものじゃなくて自発的に心の中で勝手に行うものなのよ。
「ほら、この前社交界でやらかしちゃった~って話をしたでしょ? もうちょっとやりようがあったかなってね」
「公爵の子息に大怪我をさせてしまったというやつですよね? でもあれは向こうの自業自得ではないですか。危険な魔術をシャル様に向けようとしたのがそもそも悪いんです。シャル様が反省するようなことではないと思います」
グリムは憮然とした表情を向けてくる。
まあ、確かにそれはそうなんだけどね?
「別に私も相手に対して悪いことしたなって反省してるわけじゃないの。ただね、少なからず目立ってしまったのがマズかったなって」
「目立つ……? でも、システム化魔術のことはバレなかったんですよね? 公爵の子息が魔術の扱いを間違えて、自分の魔術を暴発させてしまったということで決着したと仰っていたではありませんか」
「まあ、ね……」
確かにあの場にいた貴族どもの中には私が魔術を行使したことを悟ったような人間はいなかった、けれども。
あの日、帰りの馬車の中で。
『シャルロット。貴女、おもしろいことをするのね?』
そう声をかけられたことが頭から離れない。
さあ、なんのことでしょうか、としらばっくれたらそれ以上の追及はされなかったが、しかし、そのあとに意味深に微笑んできたその顔が忘れられない。
銀色にたなびく長い髪、吸血鬼のように白い肌、そして生贄を見つけたときの悪魔のように紅い瞳を輝かせたその人。
――エリーデ・ディルマーニ。
ディルマーニ家の長女であり、4つの属性魔術すべてを使うことのできるディルマーニ家史上最高の天才。
もしかすると私はその虎の興味をひいてしまったのではないか、そう思ってしまうのだ。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「シャルロットは今後どうなるのっ……!」
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