友達論ーー中華料理屋にてー
「何かあったら友達を想いなさい」
母さんは、炒飯を食べながら、汗をかき、僕にウィンクしてこう言った。
「友達はいいぞ。お前にもいつか、本当の友達が出来るさ。何事もあきらめずにやるんだぞ」
父さんは、ビール片手に、にこやかな笑顔を見せて、僕に言った。そうだ。僕にも友達が出来る未来がある。義務がある。責任がある。常識はないが友達に立候補する権利だってある。僕は天津飯を食べた。すると、叔父が、ウォッカを飲み干してしまい、僕に足蹴りを決めて、言った。
「お前の未来は友達であふれかえっているさ。さあ、食べるんだ。友達の分までな」
と大声で笑った。そして、続きざまに叔母は、僕を睨みながら、
「友達のためにお金を稼ぐのよ。借金したら、友達は逃げていくわ。だから、しっかりと働きなさい。友達に国境はないわ」
と格好を少し付けた。僕は、この世界で最も、孤独な男だ。そうだ、しっかりと働こう。その術を僕は中華料理屋で知った。これから、どうなるかが楽しみになっていく。僕は、コーラを美味しく飲み、友達作りに励むことを誓った。さあ、天津飯を食べよう。近い未来の友達の分まで。そうすれば、必ず、僕に幸福がやって来る。そうだ、その通りだ。僕は、悪い奴ではない。極めて、イイ奴だ。そうすると、叔父は、また、僕に言った。
「友達の分まで、墓掃除をするんだぞ。今、お前は、怖いくらいに幸せ者だ。わかったか」
僕は、叔父に軽く、頷き、この国の未来を保証するくらいに、友達が欲しくなった。今は、独りぼっちな僕だけど、未来が明るくなってきた。