97_神の戦い方
藍色の長髪をなびかせ男が一度派手なアクションポーズを決めたあと高々と片手をあげると会場は一気に盛り上がる 青コーナーの男とは対象的な人気だ
「しかし おどろいたね まさか選手の方だったとはね・・・・・・ラスト どうやってコンタクトをとる?」
「うん そうだね まぁこうやって興行しているなら事務所通しで連絡をとってもらうのが早道だね まぁ本人が僕たちにあってくれるかは別問題になってきそうだけど・・・・・・」
僕らがそんな話をしている中どうやら試合が始まるようだ
カーン
ゴングの大きな音が会場に響き渡った
「おお 始まるようだね」
最初無関心だったアルミちゃんもスポットライトを浴びて光るリングに視線を奪われているようだ
ミズリーとイシューはリングの中央あたりで相手の動きを伺っているようでお互い組み合おうとしては離れを繰り返している
ダンッ
お互い踏み出した足がマットの上で大きな音をたて上段で組み合い力比べとなった
ミズリーとイシューは互いに力の入った笑顔をつくりながらマウントを取ろうとしていた ジリジリとイシューの力がミズリーを上回り力比べはイシューが制しそうな感じだ
ミズリーは即座に片方の手を振りほどいてイシューの腹部に正拳をいれねじ伏せられる事を否定する
「ホウッ」
たまらず声をあげ2,3歩後ずさりするイシュー・・・・・・だが顔はまだつくり笑顔のままだ
「うらぁっ」
「ぐはっ」
お返しとばかりに正拳をミズリーの腹部にお見舞いするイシュー
「はうっ」
「うらぁっ」
「おいっ」
「そりゃぁ」
それからは互いに我慢比べのように笑顔で正拳を入れていく・・・・・・ 次第に2人の笑顔は苦悶の表情へ変わり最初に音をあげたのはイシューであった
イシューの動きは緩慢になる
すかさず腕をとりゆっくりと後ろ手にねじあげるミズリー イシューはミズリーのなすがままねじられた腕の反対方向へとのがれようとマットの上を歩く
その瞬間
ねじ挙げられていた腕と反対方向に宙返りを見せこれを振りほどき すかさずミズリーの延髄に蹴りを入れるイシュー
会場はその鮮やかな技に驚愕の声をあげる
延髄に蹴りをいれられたミズリーはしばらく立ったまま天を仰いでいたかとおもうとスローモーションのように正面からマットへと倒れ込んだ
イシューはそれを見たあと片手をあげお客様へアピールだ
「ウオー」
湧き上がる歓声 それを聞いたイシューはこともあろうかミズリーに背を向けコーナーポストのトップロープにあがり両手を上げ歓声に答えそのままの状態で大技をだすであろうジェスチャーを見せる
更に盛り上がる観衆たち
そしてイシューはそのままの体勢から伸身の宙返りをしながらミズリーへとボディープレスで着地しダメージを与えるはずであった
それを気づいていたミズリーはイシューがトップロープから飛び出した瞬間に横へと転がりこれを回避する
目標を失ったイシューはそのままマットに叩きつけられるかと思われたが即座に伸身の足を折り曲げ回るスピードを早め惰性を変えマットにうまく着地した
「ウオー」
神業ともおもえるその身体能力にまたもや観衆は驚きの声をあげる
・・・・・・
その後試合は一進一退の攻防を繰り返しながら進んだが最後はミズリーがイシューの背後を取りジャーマンスープレックスを決めそのままのホールドの体勢でカウントスリーをとり幕を引くこととなった
「ミズリー よくきけよ コノヤロー 今日は2日酔いで調子がでなかったんだ 次は必ずこの借りを返すからな」
イシューは客席に据えてある実況用のマイクを奪い取りリング上のミズリーに向けて捨て台詞をはきながら逃げるように退場した
僕らは次の試合もそっちのけで裏口のスタッフに面会のアポイントをとろうと走った
「あー たぶん 駄目っすね 一応聞いてみるっすが・・・・・・」
裏口で警備を担当していたのは興行前にビルの入口でチケットを売っていたガタイのいい若いスタッフだ
そのスタッフは一度裏口から控室のある方へ入っていったが数分後体の前でバツ印を出しながら出てきて僕らに言った
「あー やっぱり駄目っすね 駄目っす 面会はできないっす」
確かになんの用事もない僕たちがただ会いたいと言っても面会はかなわないだろう ここは一度引いて作戦を練り直す必要があるだろう
今回はイシューの存在を確認できただけでも大きな収穫だ
「アルミちゃん」
「ああ 行こう」
僕らはその場を立ち去りミカエルちゃんに指定されていた集合場所へと帰ることとなった
「クァー ったく イシューの野郎どこにいるってんだ てやんでぃ」
「ちぇ うちらぁ いっしょうけんめい さがしとるのに じぇんじぇん 情報が出てこんわぁ あああ 板さん こりゃ いけんで くたびれたでー」
集合場所になっているホテルの一室では早々に探索をきりあげてきたと思われる2人がぐちをこぼしあっていた
「あ リスト アルミ どうだった? 収穫あったかぁ うちらぁはいけんで」
ナバはソファーに腰掛け足をのばしてそれを開いたり閉じたりしながら僕たちに話しかける
「ナバ 僕たちはイシューの居場所までは見つけることができたが出会うことはできなかったよ」
アルミちゃんは羽織ったパーカーを部屋のポールハンガーにかけるとナバの隣に座った
「おお みつかっただかぁ すげえな おい なぁなぁ どこにおったぁ? なにしとったぁ?」
ナバは興味津々といった感じでアルミちゃんの顔の前に自分の顔を近づける
「ナ ナバ ち 近い ちょっと離れてくれ」
アルミちゃんは近づきすぎたナバをおしのけながら今日あった出来事を話す
「ほう・・・・・・なるほどな ってこたぁ どういうことだ?アルミちゃんよ やっぱり男なら拳でってことかぁ?」
イシューを見つけながら話すらできなかった僕たちに板さんは不思議そうにそう言う
「そうだね しかし僕たちはミカエルちゃんに武器を没収されてしまったからまずは武器をさがしてそれを武装しなければならないだろう」
(おいおい なにか物騒な話になってきたな これはいけない)
「いやいや そんな事をしたらこの世界ではすぐ衛兵に捕まって牢屋に入れられてしまうよ」
このまま3人で話を進めるとこの世界で危険な存在になりかねないと思った僕はとっさに声をあげる ちなみにアルミちゃんやナバに分かりやすいよう警察や刑務所という言葉はあえて使わなかった
「そっかぁ そういやぁ ミカエルちゃん武器や魔法は使ったらいけんっていっとたわぁ ラスト そうしたらどうすっだぁ?」
アルミちゃんと交戦中のナバが顔だけこちらを向き声をあげると3人の視線が僕に集まる
「ひとまず僕らは会社をたちあげる」
「・・・・・・? どういうことだぁ?」
僕はこの世界で通じるであろう方法を3人に説明することとなった




