96_情報
「いえ すみません 僕たちお金持ってないんでここでいいです」
すぐにミカエルちゃんに連絡をとろうかとも思ったがひとまず僕たちはお店のドアを半開きのままマスターにお客ではないことを伝える
「あら いいのよ 突き出しは出さないわ とにかく座って座って」
店内にはお客さんはなく薄暗い感じの割に安穏とした雰囲気だった為マスターは若く見える僕たちをさくらとしていてほしかったのが容易に想像できた
「あの・・・・・・ すみません 人を探しているんです この人知りませんか?」
僕たちは言われたとおりに恐る恐るカウンターへ座るとさっそくミカエルちゃんに借りている端末の写真をマスターに見せる
「あら その端末・・・・・・ やっぱり ミカエルちゃんのところの子だったのね そうねぇ・・・・・・」
どうやらマスター?は最初から僕たちがここを訪れるのを知っていたようだ マスターは顎を人差し指でトントンたたきながら話を続けた
「今頃なら イシューはこの先の雑居ビルの地下で毎週行われている格闘技に行ってるはずね この前私に話してくれたんだけどすごく面白いっていってたから・・・・・・でも君たちが行くにはちょっと危険なところかもしれないわよ」
(雑居ビルの地下で格闘技・・・・・・あやしいなぁ できればいきたくない)
「ラスト 行ってみよう マスターどうもありがとう」
マスターから話をきいたアルミちゃんはその勢いでカウンターをたち僕の手を引いた
「あら もう行っちゃうの もう少しゆっくりしていけばいいじゃない」
カランカラン
マスターがそういった瞬間ドアが開く どうやら最初のお客さんがやってきたようだ 2,3人のお客さんが喋りながらなだれ込んでくる
「いらっしゃーい」
お客さんが奥のボックス席へ入るとマスターはアルミちゃんにもういいわよというようにウインクをしながら手をふった
「どうもありがとう また来てね ふふふ」
僕たちはマスターににこやかに送り出されこのお店の先にあるという雑居ビルへと急いだ
「ここだね」
アルミちゃんがそう言った先の雑居ビル入口では何人かのいかつい男たちがにこやかに当日券を売っていた
僕はミカエルちゃんにお金を持っていないことを伝えるために端末に手をかけた
・・・・・・
「あ ごめんごめん ラスト 言ってなかったね その端末にお金?はいってるから好きに使っていいよ ラストの元いた世界の技術だって 暗証番号いっとくね きゃはは」
端末の向こう側のやっちゃったと頭をこつんと叩きながら舌を出すミカエルちゃんがみえるようだ
なるほど いわゆる電子キャッシュってやつだ 僕は即座に残高を確認するためミカエルちゃんから聞いたパスワードを入力してみる
(・・・・・・! ∞ おお 無限のマークだ いくらでも使っていいってことか この端末 異世界転移前にほしかったな・・・・・・)
「アルミちゃん 行こう」
お金がある男は余裕ができるものだ そんな事を考えている僕は苦笑いを浮かべながらアルミちゃんの手を引く
「どうした? ラスト}
「いや なんでもないよ 行こう」
「当日券っす もう少しだけありますよっす えへへ」
雑居ビル手前まで来ると屈強な男たちが体に似合わない作り笑いを浮かべてお客様を威嚇しないよう小さく小さくなりながらチケットの販売をしている
「すみません 端末のお金つかえますか?」
「あ い いらっしゃいませっす だ だ大丈夫っすよ ちょ ちょっと待っててもらってもいいっすか」
チケット販売の一人の屈強な男がおどろいたように僕に対応する どうやら自分にお客さんが来るとはおもってもいなかったようだ
男は近くにいた大会の名前の入った帽子をかぶった大学生くらいの女の子をひっぱってくると僕たちの対応をさせた
「いらっしゃいませ チケット2枚ですね はいどうぞ こちらの端末にお客様の端末をかざしていただけますか?」
女の子は慣れた感じで僕にチケット2枚と今日の対戦カードの入ったチラシを2枚渡すと腰にぶらさげた端末を手に取り僕に差し出した
ピロン
端末をかざすと それっぽい音がする どうやら決済されたようだ
「ありがとうございます ゆっくりご観覧ください」
女の子はきびしい顔をして屈強な男の脇腹のあたりをポンとさわる
「あ ありがとうっす ございますっす」
「どうも ありがとうございました」
男は焦ったように僕らにお礼をいうとペコリと頭を下げた
女の子はそれに合わせもう一度僕らにお礼を言うともう一度屈強な男にポンとさわりどこかに行ってしまった 僕たちはチケットを持って入口にむかった
雑居ビルの入口でチケットの半券をスタッフにわたし地下へと急ぐ扉を開くとそこには思っても見なかった広さのフロアがあり中は人の熱気が溢れていた
「お おい ラスト こ これから何がはじまるんだ?」
アルミちゃんはあちらこちらをキョロキョロと眺めながら不安そうに僕に聞く
「ここは闘技場だよ アルミちゃん これから戦いが始まるんだ もちろん 見せもの 出し物の類だから勝敗はもう決まってるんだろうけどね」
「ん ラスト そんな八百長みておもしろいのか?」
アルミちゃんは不思議そうな顔をして僕の顔を見る
「はは 面白いんだよ アルミちゃん ショーとはいえその計算され尽くされたその技の一つ一つは本物の格闘技のものだからね・・・・・・それと」
「ああ なるほど あれだけの鍛えられた人が本気で急所を狙いあったら一瞬で決着がつくだろうってことか」
「さすがはアルミちゃん・・・・・・そういうことだね」
アルミちゃんは3眼がないにも関わらず僕の言わんとすることを先読みした そういった話をしながらも僕らは観客のなかにイシューの姿をさがしていたが試合の時間が近づいたため会場の照明が落とされリングにスポットがあたった
「ああ 暗くなっちゃった ラスト しばらくは探索は無理だな」
アルミちゃんの言葉を聞きながら黙ってうなずいた僕の視線はすでにリングに釘付けになっていた
会場ではリングアナウンサーが本日の大会の趣旨 ルールなどを説明し第一試合が始まろうとしていた
「本日の第一試合 赤コーナー 鋼鉄の暴走とうちゃん ミズリー カーン」
第一試合の選手のコールが独特な口調で発表されると僕らが入ってきた反対側のドアのあたりが赤色のスポットによって照らされる
大きな声援が飛び交い会場のボルテージは一気に上昇する
「あー 対する 青コーナー 天を統べる閃光の藍髪 イシュー・トラーーーーーーースロッド」
(え?)
「お おい ラスト」
僕らの隣に放たれた青色のスポットに照らされ出したのは僕らが探していた神 イシュー その人であった




