84_竜車場の従業員
「姉さん どうぞ」
カタカタとなれない手でお茶を差し出す従業員の男の一人は僕の方をちらりとみてこれまたなれない笑顔を作ろうとする
ここのボスらしい男は僕たちが事務所に来てから自分の様子をどこかで見てきたのか降りたズボンのチャックやネクタイの乱れがいつのまにか整っていた
「あ えっと それで今日はどんな御用でこちらへよられたのでございやすか?」
「あ らぁ ふぅ 自分の 会社なのに 用がないと はぁ よっちゃいけないの? ねぇ」
その顔は獲って食われそうな妖艶だが少しだが厳しい表情を浮かべているように見える
そしてサキさんは太腿まで切れ上がったスリットの入ったドレスで駐竜車場の事務所の応接室にあるフカフカのソファーに座りながらその足をゆっくりと組み替えた
「それでぇ あなたぁ あはぁん 最近の駐竜車場のお客様の利用状況は どうなってるの ねぇ」
サキさんはここの売上が落ちていることやその原因が毒霧によるものだと言うことはすでに承知しているはずだ ここでこの発言がでるのは眼の前のこの男の技量を図るためだろう
「えっ ああ まぁ まぁ でございやす」
たじろぎながら取り繕うこの男の反応は完全にアウトな反応だ
「あらぁ そう うまく イってるのねぇ ふぅ ねぇ」
サキさんはなんの反応も見せず出されたお茶をゆっくりと飲み舌なめずりをする
後日談だがこの男はサキさんが本社に戻ったあと降格させられたらしい
「てやんでえ 離しやがれったんだ」
唐突に部屋の外が騒がしくなる
「親分・・・・・・ もとい 社長 不審者が駐竜車場をうろついてたんで捕まえてきやした」
ドアを開けて入ってきた男は不審者だという男を後ろ手でつかまえて乱暴に社長の前に突き出した
「馬鹿野郎! てめぇ いま 姉さんと話してんだろうが あとにしろ! くそがぁ」
「すいやせん」
「ど どうも 姉さん すいやせん 無粋なやつが多くて なはは」
「あらぁ バカは あ な た すぐに その人を 離して あげて・・・・ ねぇ」
サキさんは従業員が不審者といって連れてきた男に手を上げて中指と人差し指をすり合わせニコリと笑った
「え こいつぁ 許可もなく竜車場をうろついてたやろうですぜ 離しても大丈夫なんでやんすか?」
従業員は社長とサキさんとの間で目を泳がせながら聞いた
「っか野郎 姉さんの知り合いだろうが 早く離しやがれ」
「へ っへい」
社長の怒声で急いでその不審者を離す従業員
「板さん おひさぁ こっちにきて すわって ねぇ」
「ったく 乱暴っつったら ありゃしねえぜ」
板さんと呼ばれる男は離された腕をパンパンとはらうとサキさんの隣へどかっと座った
「ラストちゃん 紹介して おくわぁ あはん こちらは マナボードの精霊 板さん」
ユグドラと違い板さんはどこから見ても人間にしか見えない
僕はその人に向かって軽く会釈するタマちゃんアルミちゃんも知り合いらしくニコニコしながら会釈した
「社長 だ め よ うふん 自分のご飯の種の管理者 くらい しっておかなきゃ ねぇ」
「サキ 無理だにゃ 板さん 下界に姿を見せることなんかほとんどないからにゃあ 板さんに会えるのは基本的に伝説の勇者だけだにゃ それでそのレアな板さんが下界にどうしているにゃ」
タマちゃんは不思議そうに板さんを眺める
「おお よくぞ聞いてくれた ってか あんただれでい いや まて もしかしたらタマかい?」
「正解にゃ わけあって 転生してしまったにゃ 板さん久しぶりにゃ」
「やっぱりか サキにアルミにタマ 久しぶりだってんだ 元気にしてたか?」
板さんは景気のいい声を張り上げ言葉を続けた
「いやね 今回ここに来たのはさぁ マナボードの近くに見たこともないような強い気をもった2人が近づいているのを感じたからなんだけどさぁ」
そういって板さんは僕の方をちらりと見る
「その一人はここにいる もう一人は駐竜車場にいるのを感じてるんだがな・・・・・・一人はおそらくラミスの系譜だとおもうんだがアルミやサキがここにいるならこの少年がそうなんだろ?」
「ふぅ さすがは板さんだわぁ あたりよ こっちが ラミとアスモディウスの子で ラ ス ト ちゃん って言うの ねぇ」
サキさんは板さんの問に対して僕を紹介し僕はもう一度板さんと目があったとき深々と頭を下げた
「にゃ 板さん タマたちの車に来るにゃ 中にユグドラもいるしちょっと聞きたいこともあるにゃよ」
タマちゃんは板さんとサキさんに目線を送っている
「あはぁん それじゃあ 私達はもう 帰ることに するわ ねぇ 社長 おじゃましたわぁ ふぅ」
「え もうお帰りでやんすか・・・・・・ てめえら なにぼーっとしてんだ お見送り お見送り 」
社長はなにがなんだかわからないといったふうだったがサキさんが帰ると聞いてそそくさと部屋を従業員にかたずけさせる
(うわぁ なんてわかりやすい人だ)
僕らが事務所の外にでるとき従業員はずらりとならんでいてその最後に社長がいてニコニコと作り笑いをしている
「えっと 姉さん 今度はいつ来られるんですか? 近くに来たら必ず寄ってくださいね」
(とってつけたような社交辞令だ)
「あらぁ 美味しい お 茶 あ り が とう またよるわぁ ねぇ」
サキさんは従業員と社長にそういうと振り向かず手をふった 帰りに従業員の一人が舌打ちしたような音がしたがサキさんには聞こえなかったのだろう
・・・・・・
「おう ユグ坊 元気にしてたか? 」
タマカーについた僕たちはひとまずコックピットに集まり板さんと話をすることとなった
「師匠 久しぶりだじょ ユグは元気だじょ 師匠も元気そうでなによりだじょ」
ユグドラはそういって板さんに挨拶していたが梨花もグレモも知らない男のひとに怯えているようでユグドラの影に隠れようとしていた
・・・・・・
「なんてっこったい じゃあこのお嬢ちゃんが現魔王を食っちまったってのかい?・・・・・・なるほど それでこの気ってかぁ」
タマちゃんの説明を聞いた板さんは納得しているのか腕組みをしながらうんうん頷いている
「にゃ 板さん 今回タマたちが来たのは毒霧の森の毒霧がこちらのほうまでやってくるということの調査に来たんだけどにゃ にゃにか知ってることがあるのかにゃ?」
「ああ そのことかい まぁ 天界ではちょっと厄介な話になってるようでな・・・・・・」
板さんはそういうとふぅとため息をついて話はじめた




