62_策士
インキアス目線でのお話です
魔王城に帰った私は魔王の間の更に奥にある隠し部屋でソレの意見を聞いている
ソレがいなければ今の私はいなかったであろう
いかに今私が魔王であろうともこの者を消し去ることはできないだろう
ソレの忠告を無視し元魔王アガレスを拘束し我が物にしようとした私は片腕という大きな代償を支払わなければならなかった
「所詮 下賤 遺憾 私は傀儡にすぎんということか・・・・・・」
私はそのグロテスクな生き物を見つめボソリとつぶやく
「インキアスよ どうだ 今回の件で いかに貴様が浅はかであったか痛感したであろう ブロロロロ」
表情のないソレは私に勝ち誇ったようにそういうと息をするたび出る醜悪な音を部屋に響かせた
私がソレに出会ったのは私が魔気暴走により生死の境をさまよいながら毒霧の森をさまよっているときであった
「若いの・・・・・・苦しかろう・・・・・・ブロロロロ」
「・・・・・・誰だ」
私は力なくまわりを見渡す
「ここだ この穴の中だ・・・・・・ブロロロ」
その声は毒霧の森中央に位置するひときわ大きな木に空いた穴の中から聞こえた
すでに夕刻 毒霧の森の毒は日が落ちればそこに生息する植物より発せられ森中に充満するだろう
私の命はそこまでだ 普段であればその手の誘いには絶対に乗ることはない しかし気力も体力も残り少なく魔気の暴走も止められない今の私にはその声に抗うことはできまい
私はふらつく足でその木に近づき穴の中を覗き込んだ
(なんだ この生き物は・・・・・・)
「ふふふふ 驚いたか ブロロロロ この腐敗し呪われた触鬼の体は何千年もの間わしをここに縛り付ける呪縛でもある 若いの もしよければ私を魔王城へ連れて行ってはもらえぬだろうか 代わりにわしはお前を魔気暴走から開放し魔王の座を与えようではないか・・・・・・ブロロロロ」
「い いったい なにが目的だ・・・・・・」
私には選択肢など残されていないというのにそんなことを聞いてどうしようというのか・・・・・・
私は少し後悔を感じたがそんなことはもうどうでも良くなった
早くこの苦しみから開放されたい すでに私はこの生き物に自分の運命を託すことをきめていたのだ
「なあに簡単なことよ 若いの ブロロロロ わしの輪廻を取り戻すため魔気の根源の真上に位置する魔王城にてその力を使い儀式をおこないたいだけよ ブロロロ」
そうかこの生き物は輪廻の法則から逸脱した存在ということか しかしそんなものが存在するとは・・・・・・
「わ わかった お前を魔王城へ連れて行こう・・・・・・」
「若いの名をなんと言う」
「そうか インキアス なぜゆえ魔気の暴走がそのように苦しくときに死すら引き起こすのかわかっておるのか?」
「・・・・・・いやわからない 私には魔王因子が備わっていないからではないのか?」
「よく聞けインキアスよ 魔気は自分の気づかぬ小さな罪の呵責により体と精神内部を破壊していく わからぬか? お前がいままで是としてやってきた行為 本当にそれは是であったのか ブロロロロ お前が慣習の中で身につけた善と悪それは本当に善と悪なのか 気づかないのだよ インキアス いや 気づいている・・・・・・ブロロロロ 人間は知らないうちに自分が悪であると認識していることを積み重ねている 故に魔気はその呵責を増大させその罪を気づかせようとしている・・・・・・当然体と精神のバランスはくずれ次第に体は拒否反応を示すということになる 魔王因子はそれを気づいたまま体と精神のバランスを処理する能力といってもよい ブロロロ まあ 常人にはそんなことはできぬ ブロロロロ」
「い いったい 私はどうすれば助かる?」
「ブロロロロ なあに 簡単なことよ・・・・・・ ブロロロロ 善か悪 どちらか忘れれば良い さあ こちらへ来い そして私の目を見るのだ」
私は恐る恐る幹の中の生き物を覗き込む
その瞬間
その生き物は飛びつき私の顔を覆った
「ムグ グググググ」
「忘れよ すべての善行を・・・・・・」
目が冷めたとき私の魔気暴走は止まっていた なにか大事なものをなくしてしまったようだがどうでもいい ただひどく腹立たしくなにかを傷つけたいそんな欲望だけが私の中に渦巻いていた




