6_野宿
「ラスト 梨花 そろそろ野宿の準備をしようかの ピカピカのきれいな部屋とはいかんがのう とりあえず雨と風の対策ができればよかろう」
祖母は歩いている道の横の方をしきりに眺めている
「おばあちゃん どうしたの?」
「ああ 梨花 ばあちゃんは今家を建てるのにちょうどいい地形を探しているんじゃ 梨花も平坦でちょっと広いところがあったらおしえて
おくれ 木が生えてたり大きな石があっても構わんぞよ」
話を聞いた僕も一応そんなところがないか探しながら歩く
しばらくして梨花が嬉しそうに声を上げた
「おばあちゃん あそこはどう?」
「おお いいではないか梨花でかしたのじゃ ラスト 梨花ここに決めたのじゃ」
そう言うと祖母は背中の翼をバッサと開いて上空へ飛び出した
「ラスト 梨花 もう少しばあちゃんからはなれるのじゃ」
僕らは祖母の言うとおりに祖母から距離をとっていく
「よーし ラストー もういいじゃろー よいこらせっと 闇の斧刃 森の木を伐採せよ!」
祖母が叫ぶとそこを中心に円形に木々がなぎ倒されていく
「これを こうするのじゃ」
倒された木は祖母の魔法により空中に浮かされた後カットされ切り株と数本の木を内部に残したままピラミッド型に積み上げられる
「やはり 爺さんのようなきれいなものはできぬな カッカッカ」
切ったままの木をそのまま積み上げただけの家だが雨風を避けるには十分だろう
祖母はピラミッドの入口を切り取った後中に残った木を切り株の上に置きテーブルとベッドを作った
「すこし部屋を掃除しておこうかの 深淵魔法 重力魔法 」
祖母は部屋に残った落ち葉や枝を重力魔法でまとめ深淵魔法でできた穴に放り込んでいる
「ククク まだ覚えておるのう 妾の魔法も捨てたものではないのじゃ」
祖母はきれいになった部屋を照らすために光の玉を打ち上げた
「ラスト 梨花 はいって良いぞよ」
祖母に言われ僕たちがその部屋に入ろうとしたとき唐突に空が暗くなったかと思うと雲の隙間から数本の光が降り注いだ
「そろそろ来るであろうと思っておったが...... これまた派手な演出じゃのう」
祖母が外の異変に気づき部屋から出てくる
「ばあちゃん なにかおこる?」
「うむ 神の降臨じゃな」
(神)
光の階段から羽衣をひらひらさせながら一人の女性が降りてくるのが見える
「!」
光の階段の中程頬を上気させながらこちらをちらちらみている少女は唐突に自分の羽衣の裾をふみ盛大に階段からころげおちた
(こけたー)
「おにいちゃん」
妹が心配そうにこちらに叫びながらながめるが僕もどうしていいかわからない
「いたたた」
「おい ミカエルちゃん 大丈夫かの」
祖母は痛そうに尻をさすっているその少女にかけよると声をかける
「ラ ラミスちゃん ごめん もう一回 ね もう一回」
少女はなにかを祖母にこんがんしているようだ
「別にかまわんのじゃ すきにするがいい」
少女は尻をさすりながらながら逃げるように天空へと飛び去った
「ばあちゃん 今のは?」
「神じゃ」
祖母は梨花の問に天空を心配そうに眺めながら即答した
しばらくしてまた空が暗くなり数本の光が降り注いだ
「ラスト みよ 神じゃ」
(え さっきのは?)
何故か僕に目を合わせようとしないばあちゃん
今度はラッパのような音がなり階段ではなく降り注ぐ光をバックにゆっくりと少女が浮遊しながら降りてきた
「魔王 古の魔王ラミスよー なにゆえ この地に再びまいもどったのじゃあ」
その少女は両手を広げ全身をかがやかせながら声に壮大なエコーをかけて僕らのところへ降りてくる
「妾がどこへゆこうとも誰も止められはせん それが神であろうともな かっかっか」
その場に不穏な空気が流れる一触即発とはこういった空気のことだろう
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「も もういいかの ミカエルちゃん お茶でもいれるから早く降りてくるのじゃ」
「ねえ どう 少年 今の神様らしかった?」
(えーそれを僕に聞いちゃうの神様)
どうやらこのミカエルちゃんと呼ばれる神様とうちのばあちゃんは知り合いのようだ
でへへと笑いながら浮遊を解き僕らのところへ降り立った