4_生活の基盤
外は昼間で天気も良かったが土で囲まれた窓の少ない小さな家の中は暗かった
「生活火魔法 ライトオン」
祖父が即興で作ったと思われるランタンに母が一つずつ魔法で火をいれてゆく
(ええ 母さん魔法つかえるの?)
「ああラストびっくりした?」
僕がキョトンとした顔をしていると母は手を止めることなく話し続けた
「梨花 ラスト この世界では電気なんかないけど魔法が使えるのよ ああ梨花は一度来たんだったねなにか魔法使える?」
母は梨花にそう訪ねたが梨花はだまって首を横にふった
「うーんラストも梨花もこの世界で魔法が使えないのは不便ねぇ ちょっと待ってて」
そう言うと母は一度作業の手を休め外に出て空に向かってなにか叫んでいる
「おかあぁさん ちょっと降りてきてぇ」
母の母は祖母だ
「なんじゃ らみ」
黒色の羽をばっさっばっさと羽ばたかせながら幼女の祖母が空から降りてきた
母は祖母に僕たちが魔法を使えないことを話しているようだ
「うむ そうじゃの魔法のスキルの付与ができるものは妾の知り合いではカンナだけじゃの
うーむ しかしあやつが今どこにおるのか見当がつかんのう とりあえずキッチン王国にある元我が臣下ナベちゃんの家まで行ってみたいのぅ
ラスト 梨花 ばあちゃんについてくるか?」
「あ ちょっと母さん だいじょうぶ?」
母は祖母を心配そうな眼差しでみた
「らみ このわしを誰だと思うとるこの世界の覇者 お前の母最強の元魔王ラミスであるぞ ふははは」
「違うぞ ラミス 最強はこのオレサマだ」
横から割って入ったのは父であった
「フフ ようやく思い出したかのアスモディウスよ 妾と戦うというのか?」
(ああ 祖母と父がなにか危うい感じです)
「お母さん!」
「アスモ アスモディウスクローズ」
「ああ そんなぁ らみぃ〜」
(!えー)
母が叫ぶと父はちょっと情けない声を出しながら光を発しパタリと倒れた後小さな子どもに変化した
「あなたは少しだけその格好でいてくださいね」
母はその子に小さく話しかけるとおでこにキスをした
「おお さすがは我が娘よ らみよ魔王封印を覚えておったのじゃな ふははは」
祖母は小さくなった父に近づきぽんぽんと頭をなでた
「探査魔法を使って我々が今どこにいるのかがわかった 今我々はキッチン王国の西方に位置するラフイ高原にいる まあキッチン王国までは歩いて3日というところだろう」
夕食に集まった皆に祖父が説明した ちなみに夕食は父が母に封印されるまでに触鬼というこの世界の獣を狩ってドロップさせてきたということだった
「ラスト 梨花 旅に出るのじゃよ しっかり準備をしておくのじゃ」
心配そうな母を横目に楽しそうにしている祖母は僕たちに準備をするようにいったが物資諸々はすべて祖父が用意してくれるそうだ
父の変化は少し驚いたが母といる小さな男の子が父であることは間違いなさそうだ
「あなた達 気をつけていってらっしゃい お母さんよろしくおねがいします」
「ラスト 梨花 これを持っていきなさい」
出発の日母が胸元から取り出したのは小さな猫のような形をした羽の生えたかわいい人形だった
「みゅー よろしくみゅー」
(人形?妖精?しゃべるの)
母にみゅーと呼ばれた人形は母から離れ梨花の頭にとりついた
「ラスト 梨花 みゅーはじいちゃんがスキルプログラミングした優秀なサポーターだぞ
ホントはついていきたいんだけどじいちゃんもこれからちょっと行かなくちゃならんところがあるからな
この世界のことでわからないことや困ったことがあったらこの子に聞けばいいぞ」
おくれて見送りに来た祖父がそういって梨花の頭にとりついたミューを撫ぜた
「さて それじゃあ いってくるのじゃ らみ アスモと2人になるが留守番をたのんだぞ まぁたまには夫婦水入らずもよいじゃろう ニヒヒ」
「おかぁさん!」
母は少しだけ嬉しさと心配を半々にしたような複雑な表情で僕らを見送った