35_無視できない蟲
「ああ なぁなぁ どうするだぁ このままだったら食べられちゃうじゃないだかぁ」
ミューのアラートが鳴り響く中 シュッ シュッ っと目に止まらぬ速さで同じところを何度も行ったり来たりしているナバはかなり動揺している
「よし 僕が出よう」
アルミちゃんは何かを決意したように大剣を背中に担ぐ準備をするためコックピット後部の荷物置き場に移動しようとしていた
「だめニャ 絶対勝てないにゃ」
「しかし タマ どうやってこの状態を回避する? あの巨大な蟲をやっつけるには魔王クラスの破壊力が必要だよ 仮にも僕は元魔王の四天王と呼ばれていた身だ 時間稼ぎくらいできるかもしれない」
「そうだにゃー 魔王クラスの力にゃー」
そう言ったタマちゃんは顔だけ僕の方に向ける
(いやいやいや 無理ですから 絶対 無理ですから)
僕はシャワーを出たままのパンツ一丁姿で腕を顔の前で目一杯ふるジェスチャーを見せた
「だよにゃあ ・・・・・・こまったにゃ」
タマちゃんは思案顔でモニターにコックピットに映し出されるタマカー後方の砂煙を見ている
「じょじょじょ? タマ・・・・・・ この世界の三大賢者と呼ばれている君がサンドワームの対処の仕方を知らないなんてことがあるのか? じょ?」
「?」
思案顔で腕を組んでいるタマちゃんに言葉を発したのはユグドラであった
「ん ユグドラ なんかいい方法があるにゃ?」
「本当に知らないじょ? タマ サンドワームはマタビの実の香りを嗅ぐと酔っぱらってしまうんだじょ」
「ああ あれにゃ それって伝説の実の話にゃ そんなもの見たこともないにゃ」
「じょじょじょ! 伝説の実だって?そんなことはないじょ そのへんの脇道によくはえてるじょ 確かにこの砂漠では見ないが王都の方ではあまりに繁殖力が強いんで雑草扱いされてるじょ まぁ 実をつけるのは二つある月がお互い満月になった夜のほんの数秒だけで採集する人もいないけど・・・・・・ しょうがないじょ!タマ タマカーをここで止めてユグドラをここでおろすじょ ユグドラがマタビの実を出すからそれを誰かがなるべくサンドワームの近くにおいてくるんだじょ」
皆が顔を見回すとナバが準備運動をはじめていた
「じゃあ うちの出番だなぁ チャチャッととおいてくるけぇ」
ナバは真っ赤な鉢巻とタスキを気合を入れるように締める
大きな胸が強調され僕はとっさに目線をそらすとおもわずアルミちゃんと目が合う なんだかアルミちゃんの目にひどく冷たいものを感じる
「あ あと梨花 マナのサポートたのむじょ」
「うふふ ユグドラちゃん わかった」
なぜだか頬の上気した梨花がユグドラの近くにちょっとずつ近づいていく
「それじゃあ準備はいいかにゃ? アルミ ラストはユグドラたちの後ろでナバがもしもの時サンドワームに攻撃をしかけるにゃ みんなには悪いがタマはみんなが戻
りしだいタマカーを走らせる準備をしておくにゃ それでは 始めるにゃ 成功を祈るにゃ」
タマちゃんはそう言うとタマカーを止め出入り口を開けた
「それじゃ 梨花 ナバ いくじょ」
ナバはそう言うと梨花の下半身に蔦を絡ませた 僕はもしもの時のため河原から10程とっておいた小石の一つを握りしめアルミちゃんは剣を使うため瞑想に入った
ユグドラは腕を大きく天へ掲げると地中から植物をはやし花を咲かせた その花は実をつけながら枯れていく
それと同時に梨花は恍惚とした表情へと変わっていった
(梨花 大丈夫か?)
「ナバ いまだじょ!」
「おっしゃー いってくるでー」
ナバはできた5・6個の実をもぎりとると全速力 ・・・・・・いや 消えた 僕らはナバのたてる砂煙だけを目で追っていた
ナバの立てる砂煙はこちらへ向かって来ようとしているサンドワームの正面で一度風に流され消えると 向かって右方向に砂煙を立て半円を描いてこちらへ帰ってきているようだった
「はぁ はぁ しぬぅー こえー ごっつい こえー やべー でけぇー」
ナバは血走った真っ赤な目で息を切らしている
マタビの実を目の前に置かれたサンドワームはしばらくこちらへ向かって来ていたもののしばらくして方向をマタビの実がある方へ向けたようだった
「任務完了 撤収じょ!」
僕はユグドラの横で蔦を解かれぽーっとしている梨花とミューをおぶるとみんなといっしょにタマカーの中へと退避した
「面舵いっぱい これより タマカーはサンドワームを右舷に見ながら正規ルートで航行するにゃ」
(船みたいになっちゃってますよ タマ船長)




