3_消える世界と始まる世界
「羅磨都 この際だから話しておくわ」
母はそういって入れてあったお茶を一口飲んだ
「かんたんに説明すると貴方のお爺さんは向こうの世界では勇者だったの お婆さんは魔王してたの」
(ふむふむ)
「そしてお爺さんとお婆さんは恋に落ちこちらで生まれたのが私」
(魔王と勇者が恋に落ちた?)
「私は異世界に召喚されそこで封印されていた魔王 貴方のお父さんと出会い いまこうしてあなた達がいる」
(ファンタジィー あはは 母さんなんの冗談)
僕と横でフンフンとうなずく妹の梨花はまるでおとぎ話でも聞いているかのようだ
「それで正直な話 こちらの世界でのお父さんはただのポンコツで生活もままならないから異世界に行きたいと思っているの」
父はひどいなぁらみといいながらえへへと頭をかきながら笑っている
「羅磨都 あなたはどう?」
僕は学校ではいわゆるぼっちだ なぜだかわからないが同級生からお前は人を寄せ付けない異様な気が出ているんだよ
なんて言われたことがある いなくなったところであまり気にされることもないだろう
「ああ 母さん 僕もいいよ いっしょにいく」
よくよく考えてみればこんな非日常な会話が成り立っている時点で自分の家族はおかしいのだろう
しかしそんな驚愕に値する出来事がそれが昔からあるかのように受け入れることができたのは小さな頃から祖父に魔王だの勇者だのという話を
聞いていたからかもしれない その頃は祖父の作っているゲームの中の話だろうと思っていたが今聞いた父母の話や祖父祖母の話を総合するとそれはうちの
一族の話だったに違いないとおもうようになっていた
「ふーん こんなことを聞いて顔色ひとつかえないなんてさすがは魔王の息子ね わかったわ お父さん 学校に突然だけど家を引っ越すって電話しといて」
(びっくりで信じるしかない状況ですよそして青ざめているのがわかりませんか?お母さん)
「ういー」
父は後ろ向きに手を降ると居間から出ていった
「さっそくだが始めよう 向こうに行くならなにもなくてもいいな ラミスたのむ」
「うむ」
父が帰って来ると祖父は祖母の手に例の石と魔法陣のようなものが書かれた見たことのない文字の並んだ紙を置く
「さあみんな 手をつないで」
祖母の隣に祖父、その隣に母さん、僕と妹を挟んで父さんが手をつないだ
「おお リストよこれはすごい力じゃな これで異界の門を開くよう念じればよいのだな 皆のものいくぞよ」
祖母が目を閉じると皆の体がひかりだす そして粒子となり気がつくと草原の中に手をつないだまま皆立っていた
......
「ふははは 我は再びこの地に降り立った みなぎるぞ 力が のうアスモディウスよ」
あろうことかばあちゃんのその見た目はまるで妹梨花と同い年くらい 顔立ちもそっくりの美少女になっていた
「ふははは ラミスよ 俺も力がみなぎっちゃってるもんねぇ」
父まで若返っている そして異様な覇気を天に放出させながら高笑った
「リストどうじゃ 若返った我はどうじゃ いひひ」
この世界に同時に2人もの魔王レベルを降臨させてしまった母と祖父は頭をかかえている
「おじいちゃん 元いた世界はどうなっちゃうの?」
梨花が心配そうに祖父に聞いた
「梨花ちゃん そうだね私たちがいた元の世界はきっと無数にある世界の1ページでそこが書き換えられて私達が最初からいなかった世界として存在することに
なるんだとおもう そしてこちらの世界では私達がここに降り立った事実が書き加えられてスタートするってかんじだろうね」
「ふーん」
梨花はよくわからないといった感じで返事をした
「とりあえず屋根のあるところをつくっておくか ラスト おじいちゃんのやることをちょっと見ておいてくれ 術式!スキルプログラミング 土魔法水魔法錬金構築」
祖父がそういって地面に魔法陣を描きながら詠唱を始めると地面から土壁がせり出し箱のようなものがみるみる家の形になっていく
(ぎゃー じいさんそれなに )
「リストよ お主もまだまだ現役じゃの ほれなおしたのじゃ ほっほっほ」
空を浮遊している祖母はなんだかうっとりとして爺さんをながめている
「ラスト じじいにだけいいかっこさせないぜ みとけよ ッセイ」
父は地面に手をつくと何やら知らない言葉で魔法の詠唱をはじめると広大な草原の四方から城壁のようなものがせりだした
「ふははは どうだ ラスト梨花 父ちゃんすげーだろ な なっ」
(どうなってるんだ?うちの家族 しかしこんなもん勝手に作っていいのかよ?)
「空からの攻撃も大丈夫じゃ とりゃ」
幼女のラミス婆さんが叫ぶと空中にドーム状の結界がはられた
(おばあちゃん・・・)
そして僕らは一家転移の初日をリストじいちゃんの作った家で過ごすことになった