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23_思い出と別れと抱擁と 

 ゆっくりと翼をはためかせながら降りてきた魔獣は足首につけられた手紙をタマちゃんに差し出すようなしぐさをした

 タマちゃんはそれを手にした瞬間に崩れ落ちた


「うそにゃ なんでにゃああああ」


 今まで聞いたこともないような悲痛な叫びをタマちゃんは嗚咽と共に吐き出した

 そしてタマちゃんは涙を流しながら僕と梨花に静かに語った


「ラスト 梨花 リストが・・・死んだにゃ」


 僕と梨花は何が起きたのかわからなかった 

 あまりのショックに一瞬ですべての色が失われたようだった


「タマ どういうことだ?」


 言葉を失っている僕と梨花の代わりにアルミちゃんがタマちゃんに手紙の内容を聞いた

 アルミちゃんの額の目はしっかりと見開いてタマちゃんを見据えた


「リストは勇者として魔獣へと変異した触鬼を討伐しようとしていたらしいにゃ その際新しい魔王と戦闘となり呪いをかけられ数日後に絶命したと書いてあるにゃ・・・・・・リストの死は特別・・・この世界では回らない命はそれ自体が凶事にゃ」


「じいちゃん・・・・・・」


 僕と梨花に不意に優しかった祖父の面影がよぎった瞬間 僕等は抱き合いながら涙していた


「帰ろう」


「うん 帰るで らみも たぶん泣いとるけー うち いっしょにおってあげたいっちゃ」


 アルミちゃんの言葉に呼応したかのようにナバは王国に帰ることを希望した


「ラスト 梨花 今日はもう遅いにゃ 明日の朝一番で王国方面へ出発することにするにゃ」


 僕等は一度旅館の部屋に戻り沈黙の時間をすごす


「アルミ ナバ ちょっと散歩してくるにゃ」


 タマちゃんはそう行って部屋を力なく出ていった

 僕は出会ってから一度も見せたことのない元気のないタマちゃんの様子が気になった


「アルミちゃん ちょっとトイレにいってくるね」


「うん・・・・・・たのんだよ」


(あれ 僕はアルミちゃんにトイレに行くと行っただけなのになにか頼まれたようだな まぁ聞き間違いかもしれないな)


 僕はタマちゃんのあとをこっそりつけた


 タマちゃんは温泉入口の噴水のところで自分たちの銅像をじっと動かず眺めていた


「リスト 楽しかったよにゃ・・・・・・」


 ボソリとタマちゃんはなにか言ったかと思うと噴水の縁に顔を伏せ大声で泣いた


「タマちゃ・・・・」


「おにい だめだよ」


 僕がタマちゃんに駆け寄ろうとしたその時僕の後ろから梨花が手をひいた


「おにい 帰ろ」


「ああ」


 僕は梨花と静かに旅館の部屋へと帰った


 次の日僕等は早朝から森の温泉を離れることとなった

 みんな眠れていなかったのか疲れが見てとれる とくにタマちゃんは泣きはらした目のままだ


「さあ みんな 帰るにゃよ くれぐれも気をつけるにゃよ」


 あえて明るく振る舞っているタマちゃんの姿がみょうに痛々しかった

 道中僕等は終始黙ったままだった為か予定より早く王国へと帰還することができた


「ばあちゃん」


「おお 帰ってきてくれたのか? 梨花 ラスト こっちにくるのじゃ」


 祖母は小さな体で僕等を受け止めた


「すまんの 梨花 ラスト じいちゃんの亡骸はここにはもうないのじゃ きいておると思うがこの世界で輪廻の法則に従うことのない屍は行き場もない ゆえに朽ち果てる前に妾が妾の中にある特別なテリトリーへと転送した まぁ 生き返ることもなければ朽ちることもない空間だがの じいさんはばあさんとずっと一緒じゃ かっかっか」


 祖母は笑ってみせたがその笑い声にいつもの元気はなかった




















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