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驚異の異血者 驚異の病

その時、近くからガラスが割られたような音と共に、まるで死体でも見たかのような生徒達の大きな悲鳴が、陸達2人の耳に入ってくる。


「逃げろ! 異血者(いけつしゃ)だ!」


陸達の前を、まるで化け物でも見たかのように顔色が真っ青で、パニック状態で走り去る生徒達5、6人。


しばらくすると、近くから重くずっしりした足音が聞こえてくる。


陸達は咄嗟に、足音がする方向を振り向く。すると、二人はあまりの衝撃を受け、一瞬で顔色が真っ青になり、恐怖で叫ぶのを抑えるために口を片手で強く押さえる。


「カイト、なんだ! あの気持ち悪い異血者は?」


陸達が目にしたのは、全身緑で塩酸でもかけられたかのように皮膚がドロドロで緑の汁をぼとぼと垂らしていて、この世の物とはとても思えない異臭を放っている化け物。


その化け物がゆっくりとこちらに近づいてくる。


「ヤバい、陸逃げるぞ」


その時、陸は突然ある人の言葉を思い出す。


(陸、お前のその能力は、人を守るためと自分が大切な物を守るためにある)


そう思い出すと、陸は一瞬で恐怖が消え、眼光を鋭くし、両手からサファイアのように青く輝いている長い鎖を出す。


「おい、陸、何やってるんだ? 早く逃げるぞ!」


「俺は血者だ! こんな異血者一人や二人倒せる。逃げたいならお前一人で逃げろ」


それを聞いたカイトは急に眼光を鋭くして、体勢を低くする。すると、カイトは空手の型のようなポーズを取り、虎のような威圧のオーラを出す。


「なめてもらっては困る。俺は空手10段だぞ。こんな弱そうな異血者なんて、俺が簡単に倒してやる」


その時、異血者の口元から、スライムのようにねちゃねちゃした緑の液体をカイトに向かって勢いよく吐き出す。


カイトは数秒の間に、まるでサバンナで生き、狩りをしているチーターのような素早さと威圧で、異血者の後ろに回る。


「お前どこ見てる? 俺はお前の後ろだぞ」


異血者は後ろから聞こえくる声に気づき、後ろを振り向く。次の瞬間、カイトは目で追えないぐらい素早い強烈なパンチを異血者の腹に5発入れ込む。そのあまりの衝撃で、近くにある窓ガラスがガタガタと揺れ出す。


異血者はあまりの激痛で聞き苦しい大きな断末魔を上げながら、バケツ一杯分の液体を吐き出す。


異血者は頭に血が上り、咄嗟に両手の手のひらから銀の輝きを放つ長い刀のような鋭い刃を成形する。


すると、異血者は目線の先にいるカイトに向かって、薬物に狂った殺人鬼のように手の刃を振り回す。


異血者はふらつきながら殺意をむき出して、見る見る間にカイトに近づいてくる。


カイトは今の死の状況を十分理解しているはずだが、まるで何も起こっていないかのように、その場に突っ立て、大きく息を吐く。


「フー、特別に俺のとっておきを見せてやるよ」


そう言うと、カイトは大きく股を開き、片手を前に出し、手をパーして、攻撃に備えて、構える。


カイトは身と心を集中されるために目を閉じる。


しばらくすると、突然カイトは目を見開き、声を張り上げる。


「武の構え・二重ひら撃」


カイトはそう言うと、まるで殺人鬼のように、こちらに向かってくる異血者に向かって構えていた手のひらを勢いよく押し当てる。そのあまりのカイトの技の衝撃で、一斉に近くの窓ガラスが次々にべきへぎに割れてしまう。



異血者はそのあまりの衝撃を受け、まるで水風船が割れるように、体内から大量の緑の液体が溢れ、噴水のように辺りに飛び散る。


異血者は鼓膜が破れそうになるぐらいの大きな断末魔を上げる。異血者はまるでプロの野球選手が大きく振りかぶって投げたボールのように猛スピードで吹き飛ばされ、壁に激突する。 その衝撃で壁に深く大きな亀裂が次々に入る。


異血者は声も上げずにゆっくりとその場に倒れ、気を失ったようでびくとも動かなくなってしまう。


カイトはまるで戦場で何年も生き残っているベテランの兵士のような逞しい表情を浮かべている。


「これは、俺の武の構え・二重ひら撃の力だ!」


陸は異血者のそばに行き、心配そうに異血者を見つめる。


「こいつ死んでないよな? こんな醜い化け物でも元はヴァンパイアだったから」


「お前は相変わらず優しいな。そんな簡単に異血者が死ぬはずないだろ」


その時、ガッチリ体型で黒の迷彩服姿のアサルトライフル(M4A1)を装備している軍人達10人程度が突然駆け足で現れる。すると、軍人達は一斎に銃口を異血者に向ける。


「大西中佐、この異血者は気を失っています。この場で処分しますか?」


軍人の中から、胸にたくさんの金の輝きを放つ勲章を身に付け、シルバーの髪色で、40代ぐらいの一人の将校がタバコの嫌な匂いがするまるで霧のような煙を大きく吐きながら、異血者に近寄る。


「当たり前だ。異血者になる奴は動物の血を飲みすぎて中毒になり、体があまりの血の量に耐えきれず、突然変異が起き、理性を失い、人を襲うだけの醜い化け物になる。早く撃ち殺せ。こんな化け物に情けをかける必要はない」


大西中佐は陸達の方を振り向いて、ニヤリとまるで心霊のように不気味な笑みを浮かべる。


「もしかしてお前ら二人が、この異血者を気絶させたのか? なかなかやるじゃないか。でも、80点だ。あと20点はちゃんととどめを刺さなかった事だ。蜂の巣にしろ」


軍人達は迷う事なく、一斎に至近距離から、まるで線香花火のようにオレンジに輝いていて、光のように高速で飛ぶ弾丸を異血者に向かって30発、40発と撃ち込む。


(ババババババン!)


陸達はまるで我が家が自分の目の前で燃えているかのように、ただ呆然と突っ立て、この光景をじっと見る事しかできない。


そして、時間が経ち、深夜の3時半。


館内アナウンスが僅かに聞こえてくる静まった病室。


満月の光が丁度当たる所で、カイトは椅子に腰をかけている。


カイトは目線の先にいるベッドで横になっていて、まるでプロボクサーに殴れたかようにまぶたが青白くなっている40代ぐらいの病弱な女性に、今日の出来事を語っている。


「それで軍隊が来て、何のためらいもなく撃ち殺されたんだ。異血者は危険だからと言う理由で。母さん、俺が言ってる事間違えているかな?」


母さんはまるで天使のような優しい笑みを浮かべながら答える。


「カイトは何も間違ってない。異血者だって元はヴァンパイアだったから。もっと言うなら人間だったから。私はヴァンパイアよりも人間の方がずっと良いと思うの。確かにヴァンパイアは人間よりもずっと身体能力が高いし、一部のヴァンパイアは血者で特別な能力が使えるけど、そのせいで犯罪や暴力が増えたでしょ? 何よりもお日様の光を浴びたらいけないから夜しか外に出られないし。だから人間の方がずっと良かったの」


カイトは何か心配事でもあるようで、急に顔色が雨雲のように暗くなる。


「そうだよね。そう言えば、母さん、体の具合はどう?」


「私はいつも通り元気よ。まだカイトは高校生だから、血爆症なんかに負けずに、早く退院して、頑張って仕事しないといけないから」


一方、その頃。


診察室では。


50代ぐらいで白衣姿の男性がパソコンの前の椅子に腰をかけ、手にしている書類をまるで針に糸を通す時のように目を細めて確認している。


そこに、30代ぐらいの看護師が、香ばしい苦味と香りが絶妙にマッチしていて、霧のような湯気が立っているホットコーヒーをお盆にのせて、男性の前に現れる。


「後藤先生、ホットコーヒーをお持ちしました。何の書類を見てるんですか?」


そう言うと、看護師はホットコーヒーをお盆ごとパコソンの前にそっと置く。


「明日には血爆症患者のオペがありますから、その患者の情報を見てるんですよ。血爆症は全ヴァンパイアの3パーセントの人がなっている病で、発症すると体の免疫が下がり、まぶたが青白くなり、だんだんと血液が熱くなり、最終的にあまりの熱さで血液が爆発して死亡する病です。今の医学では、残念ながらまともな治療法はありません」


そこに、まるで殺人犯に追われているかのように顔色が真っ青で、ついさっきまで全力疾走をしていたようで息が荒い、もう一人の30代ぐらいの看護師が現れる。


「後藤先生、大変です。血爆症患者の伊藤さんが突然体から黒い煙が上がって苦しんでます。今すぐ来てください」


後藤先生はもちろんこんな状況になるとは思ってなかったが何一つも表情を変えず、冷静さを保っている。その後藤先生の姿はまるで武士のようだ。


「分かりました。今すぐ行きます」


一方その頃。


個別の病室。


ベットに横になっている40代ぐらいの男性がまるで火炙りにされているかのように断末魔をあげている。その男性の体の至る所から焦げ臭い煙が上がっていて、とても苦しそうだ。


男性の周りには、あまりの暑さでバケツいっぱいに入った水をかけられたかのように全身が汗だくになりながら、懸命に氷で伊藤の体を冷やしたり、点滴を変えたりしている年齢がバレバレの看護師達5人。


看護師らはまるで自分の実の家族のように、必死になって伊藤に声をかけ続けている。


「伊藤さん、頑張ってください。お子さんが二人もいるんですよね?だから頑張ってください」


伊藤は想像もつかないような苦しみに耐えながら必死に声を出す。


「もう俺はダメみたいだ。体が燃えるように熱いし、変な煙が出てるから。だから俺はもうすぐで爆発するから、この部屋から早く出ろ。爆発に巻き込まれたくないだろ?」


周りにいる看護師達は伊藤の発言に感動し、大粒の涙を流して、悲しみで我を失う。


「伊藤さん、何言ってるんですか! 私達は看護師です。患者さんを見捨てる事なんてできません」


「そうですよ、私達は最後...」


伊藤は自分の死が迫っているのに、まるで夢の国にいるような笑顔を浮かべ始める。


「ダメだよ、こんな42歳の男のために死ぬなんて。そんな事よりももっとやるべき事があるだろ? 俺みたいな血爆症で苦しんでいる人を手当てする事だ。だから俺が爆発する前に、早く部屋から出て行ってくれ。家族には「ずっと一緒にいられなくてごめんな」と伝えてくれ」


看護師達は助けられなかった悔しさで流れてくる涙を拭いて、病室を後にする。


一人になった伊藤はしばらくすると、全身がマグマのように真っ赤になる。


ベッドがあまりの熱さに耐えきれずアイスクリームのように見る見る間に溶け出す。


「春人、ミナ、友子、ずっと一緒にいられなくてごめんな」


伊藤は今までの思い出を思い出し、自然とずっと我慢していた涙が一気に溢れてくる。


次の瞬間、伊藤の体が一瞬、蛍光灯のようにピカッと光り、爆音が離れているはずのカイト達がいる病室まで聞こえてくる。


カイトは突然の事に驚き、目を見開き、辺りを見渡す。


「母さん、今の音って、もしかして?」


母さんはまるで自分の大切な物を失ったかのように悲しみの表情を浮かべて、こう答える。


「また血爆症の人が亡くなったみたいだね」


そして、時間が経ち、朝の5時過半過ぎ。


人の気配が全くなく、静まっている住宅街のやっと車が一台通れるぐらいの細い道。


40代ぐらいで、スーツがまるで折り紙を強く握ったようにぐしゃぐしゃで乱れていて、体から酒のような異臭が漂い、顔色が夕焼けのように真っ赤になっている男性。その男性はあっちこっちにふらつきながら歩いている。


「やっぱり飲まないとやっていてないぜ。井村のクソ上司は俺だけ仕事が雑とか遅いとか文句をガミガミ言いやがる。自分は対して仕事できないくせに。井村のクソ上司は日の光を浴びて、くたばって欲しいぜ」


その時、卵の黄身のようなオレンジの朝日が、まだ薄暗い空へとゆっくりと上がり始める。


朝日の光が男性に当たった瞬間、体から炭を燃やしているような白い煙が上がり、一気に酒の酔いが覚める。


「なんだ? 体から煙?」


男性は疑問を待ちながら、ふっと空を見上げる。


男性は朝日が出ている事に気づき、まるで自分の目の前で、人がめった刺しで殺されているかのように目を見開く。男性の表情が一瞬で青ざめ、頭の中が絶望感でいっぱいになってしまう。


次の瞬間、男性は体に火炎瓶を投げつけられたように火だるまになってしまう。


男性はあまりの苦しさで断末魔を上げながら、潰されても生きている蝿のように地面に転がり苦しむ。


そして、その日の朝の7時。


陸の家からずっと離れた、日の光があまり届かないぐらい山奥に位置する亜・27研究所。


薄暗く様々な薬品や機械等などがあり、白一色に統一された研究室。


大西中佐と30代ぐらいで、白衣姿の研究員達2人が立ち話をしている。


「お前ら、人間の少女の人体実験はどうなっている?」


一人の男性がまるでサイコパスのように笑みを浮かべながら平然と残忍な事を口にする。


「はい、実験は順調です。まだ若いので簡単には死にませんから、電気ショックをして変化を観察したり、恐怖を与えてアドレナリンを採取したりしています。他にも様々な実験をしました。ちなみに、実験に耐えきれず、死亡した他の3人はバラバラにして、一階の保管室で大事に保管しています」


大西中佐は表情を一つも変えず、平然とライターでタバコに火をつける。


「そうか。くれぐれもやり過ぎて簡単に死なせるなよ。大事な資源だからな」




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