002 忘れていたこと
冒険者。ギルドに所属し、ダンジョンに入って魔物を討伐したり依頼さえあれば掃除などもするいわゆる『なんでも屋』だ。
「やっと着いたー」
とクロード。
3人は村から数時間かけて近くの街に来ていた。
「まずはやっぱりギルドに行かなくちゃね!」
サナがわくわくした様子で言ってくる。
「ほら、見えて来たわよ」
ギルドの中はとても賑わっていた。依頼を受けている者、魔物を換金している者、酒場も併設されているようで昼間から酒を飲んでいる者など様々だ。
3人はカウンターに行った。
「見ない方ですね?依頼ですか?それとも冒険者登録ですか?」
受付のお姉さんが可愛らしい笑顔で聞いて来る
。
「と、登録で…」
クロードが少し赤くなっていると、背後から悪寒が!
「ふーん、何顔赤くしてるの?」「あたし達がいるのにねぇ?」
クロードは聞かないフリをして話を変える。
「ぼ、冒険者登録について説明してもらっていいですか?」
「は、はい…」
お姉さんは軽く咳払いをし、説明を始めた。
「では始めさせて頂きます。まず冒険者について、冒険者とは掲示板に張り出された依頼を受注し、完遂して報酬を受け取ることを生業とする職業です。冒険者にはランクがありFからSSまであります。登録したばかりのあなた方はFランクからのスタートとなります。他ですと、ダンジョンに入って魔物を討伐し、それを換金することも出来ます。…そういえば皆さんの天職と熟練度はいくつですか?」
「私は剣士よ。熟練度は26だったかしら?」「あたしは魔法使い!熟練度は25よ!」「僕は魔法剣士です。熟練度は28です」
「魔法剣士って凄いじゃないですか!とても稀で私も会ったことが無いのに!それに皆さんその歳で熟練度が20を超えているなんて!」
お姉さんが少し興奮した様子で言ってくる。
「……すいません少し取り乱しました…それでは皆さんお分かり頂けているみたいですが、一応説明しておきますね。天職とは、人類が生まれて5年程経った際に現れる技能のことです。人類のほとんどがこれによって将来の仕事が決まります。天職には熟練度と言われるものがあり、熟練度に応じて天職によって様々な技能が行使出来るようになります。」
「これで説明は以上となります。何かご不明な点はございますか?」
「特にないわ」
「それにしてもダンジョンかぁ…」
「楽しそうよね!」
ダンジョンとは魔王が消息不明になった後に出来た白亜の塔である。これは魔王の妻達が作ったとされ、ダンジョンの最上階には魔王が使っていた武具があると言われている。しかし最上階までたどり着いたのは、帝国の皇帝のみでまだ攻略までには至っていないらしい。
「それでは適性を記録させて頂きたいので、こちらへどうぞ」
3人は拳大の水晶が置いてある部屋に通された。
「こちらの水晶に手を当てて下さい。光った色によって適性が変わります。赤は「火」、青は「水」、緑は「風」、黄は「雷」、茶は「土」、白は「聖」、紫は「闇」となっています。それと、本当に存在するかは分かりませんが世の理に作用する魔法…『摂理魔法』の適性があると「黒」に変わるようですよ?」
「じゃああたしから!」
初めはサナがするようだ。
「行くわよ…」
サナが手を当てると、水晶が赤と青に強く、白に淡く輝いた。
「すごい!貴方は火と水にとても強い適性があるみたいです!それに聖属性にも適性があるなんて....」
「やったー!」
「次は、私ね」
ミサキが手を当てると、水晶が淡く緑色に輝いた。
「貴方は風属性の適性があるようです。ですが、適性がそこまで高くないようですので中級魔法までになると思います」
「中級までなのね....でも十分だわ」
「最後は僕かな?」
クロードが水晶に触れると8色に強く輝いた。
「う、嘘でしょ?8色!?しかもどれもすごい適性!あなたいったいどうなって.......えっ?」
突然水晶からの輝きが黒1色になった。
「この色って....」「クロードっ今すぐその水晶から離れて!」
ミサキの忠告も時すでに遅し。
バリンッ
「う、うわああああ」
水晶が砕け散り、クロードは壁まで吹き飛ばされた。ミサキとサナはクロードに駆け寄る。
「ま、またなの....」「クロードしっかりして!」
するとクロードが何か話そうとしている。幸いまだクロードには意識があったようだった。
2人が顔を近づけると
「僕....思い出したんだ。自分がだれか....僕は....いや俺は....あの『義肢の魔王』だったんだ....」
ここまで読んでいただきありがとうございます。次に向けて頑張ります!