お出かけは計画してるときのほうが楽しかったりする
「電器屋さん...あんまりたくさん来たことがあるわけじゃありませんけど、入る度になんだかワクワクしますよね〜 ...うふふふ....」
「り、莉亜さん...? 大丈夫すか...?」
昨日の莉亜さんの、「お買い物行きませんか?」発言を経て翌日、俺と莉亜さんは2人で茨城県内某所•ショッピングモール内の電器店にやってきていた。
のだが...莉亜さんの様子が変だ。
足取りはふらついているし、目の下にクマあるし、ついでにどことなく虚ろな瞳をしているではないか。
「やっぱり昨日の夜は眠れませんでしたか。申し訳ないっす...」
「いえいえ、そんなことは.. あうっ」
と、何もないところで転びそうになる莉亜さん。
やっぱりまずかったか••••••
と、ここで話は一度昨夜に遡る。
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「買い物? 俺と莉亜さんとで??」
「はい!是非!!」
コンビニ弁当を食べる手を止め固まる俺と、いつも通りのニコニコ笑顔で言う莉亜さん。
「そのお誘いは俺も興味ありますし嬉しいですけど...
何か欲しいものでも見つかったんすか?」
「ええと...私の個人的な買い物と言うよりは、私と柚斗さんの...この家に必要なもの、いろいろ買えたらなと思いまして。 い、今の私でも50万円くらいはありますから! はした金かもですけど、色々買えるかもしれませんよ?」
「莉亜さん...」
そんなことを考えてくれていたのか。
もちろん俺としてはこんなありがたい申し出はないし、素直に嬉しい。というか今ちょっと泣きそうだ。
「ありがとうございます莉亜さん。買い物、行きましょうか!」
「は、はい!行きましょう行きましょう!! 最初はどこ行きますかー?」
「えっとですね、今回の買い物の目的はですね」
「..? はい」
「莉亜さんの部屋に必要なもの揃えることにしません?」
その言葉を聞いた瞬間
「い、いえそんな! 私個人のものは別に..!! それに部屋って..?」
と、反発と疑問を同時にぶつけてくる莉亜さん。
「今は物置と化してて使ってないですけど、もうひとつ空いてる場所があるんすよ。 だいたい今のままじゃ莉亜さんの寝る場所も確保できないですし、莉亜さんだってそれは困るでしょ?」
「そ...それはそうですけどぉ...」
「なら決まりっすね。
莉亜さんの持ってる50万は紛れもなく莉亜さんのもの。俺は使い方に極力口出ししないですけど、 全然はした金じゃないですし、少しは自分のために使うほうがいいと思いますよ?」
「わ..わかりました... ありがとうございますっ」
納得してくれた様子の莉亜さんを見つつ、食べ終わった弁当を片付ける。
「じゃー明日は 電器屋とか家具屋とか、色々見ることになりそうっすね。歩いて行ける距離に総合ショッピングモールありますし、そこ行けばだいたい揃うはずです」
それはこのボロアパートに住む上で明確なメリットの一つだ。莉亜さんがここにくる前から、週に一回は必ず行っていた。
「楽しみです..!」
と、心底ワクワクした様子でいう莉亜さんに、俺は非情な事実を告げなくてはならない。
「ところで莉亜さん、ひとつだけ...」
「何でしょう??」
「俺言いましたよね?『今のままじゃ莉亜さんの寝る場所も確保できない』って... だからその.. 明日は絶対物揃えて、片付けも俺がバッチリやるんで今日はここに••••••」
俺はとあるビジネスホテルまでの地図をスマホ上に表示
し、宿泊料を手渡した。
翌日、うちに戻ってきた莉亜さんの様子を見て、俺はかつてないほどの申し訳なさを覚え、それでも目的地へ向け歩き始めたのだった。
ここまで読んでくれたあなたに最大の感謝を。次回から「初めてのお出かけ」編になります。
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