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1日目

「お...お邪魔します••••••」


「ただいま〜 っと」


「....?」


横で竜胆さんがちょっと不思議そうにしている。誰に対しての「ただいま」なのか、とかそういう疑問だろうか。


一人暮らしを始めてからも、誰かが待ってるわけじゃなくても、帰ってきたら「ただいま」っていうのがもう体に染み付いてる。

うちの家族はそういうのを大事にしてた。


「竜胆さんも一応今日からはここで暮らすわけですから、『ただいま』でいいんじゃないすか?」


「あ..... はい! た、ただいま...!!」


「はーい、おかえりなさい」


「え? 今一緒に入った....」


「気にしなくていいすよ。勝手に決められた田山家のルールってやつですから」


「ただいま」が聞こえたら 「おかえり」で応える。

そういうものなのだ。


(しっかしこの異常な状況、案外受け入れられてるのはなんでだろなあ••••••)


会ったばかりの、しかも大富豪のご令嬢と急に一緒に暮らすことになって、それを思いのほかすんなり受け入れてる自分に驚いている。


(やっぱ俺には、一人は合わなかったのかね)

これまでの一人暮らしの中で寂しいとか思ったことはあまりなかったが、それでも俺には誰かと一緒にいるのが合っていたのだろうか。

と、ひとり物思いにふけっていると


「ただいまとかおかえりとか、そういうの言ったり言われたりするのは...いいものですね」


と、微笑みながら竜胆さんは言った。

「竜胆さんの家はそういうの、無かったんですか?」

こういうのを遠慮なしに質問してしまうのは、俺の悪いところなんだろう。


俺が聞くと、竜胆さんはどこか物悲しい顔で


「ええ。うちはみんな、たとえそれが家族であっても他の人に構ってる暇なんて....なかったですから」


「...すみません」


「あ、いえ!柚斗さんは何も悪くないですから。

それより私のことは莉亜って呼んでいいんですよ! って言いましたっけ?」


すっかり元の調子に戻ってニコニコしながら言う竜胆さん。


「じゃあ...莉亜さんってことにします。それで莉亜さんに、いくつか聞きたいことがあるんすけど」


「!! はい! なんでもどうぞー!」


莉亜さんって呼ばれるの、気に入ったんだろうか。すごい嬉しそうだな。


「まず、なんでこんなボロアパートに住んでる俺に声かけたんすか? 他にも、もうちょっといい家に住んでる人はこの辺りにもいっぱいいるでしょうに」


そう。これは莉亜さんと会って話を聞いてる最中からずっと気になっていた。なぜ俺の家に住むことを望んだのか。何か深い訳が...!?


「理由は単純です! 柚斗さんの言う通りいろんな家のかた達にお願いしましたけど、柚斗さんのこの家が最後の一件だったんです!!」


深い理由なんてなかった........そりゃ普通ビビるよな俺もビビってたし。


「だから柚斗さんに断られてたら私、野宿だったかもなんですよ..!!」


そりゃずいぶん危ういな...


「とりあえず莉亜さんの置かれてた状況は分かりました。 で、もう一つ。....今いくら持ってます??」


そう。所持金の話だ。

莉亜さん本人は「ほとんどないですので...」とか言っていたが、この人は親に黙って2億使う人だ。この人の金銭感覚はまだ信用しちゃダメなのだ。


「今は50万とかそれっぽっちです.....」


「それはほとんどないって言わないんですよ莉亜さん!?」


やっぱり俺は正しかった.... というかそもそも


「なんで家追い出されて資産も取り上げられてる人が手元に50万なんて持ってんですか••••••」


「え?少しでもお金になればいいなと思って、たまたまつけてたネックレスを売ったんです。 安物のわりにはお気に入りだったんですよ? あれ」


「とんでもないもん身につけてますね••••••」


ネックレス一つ50万でも安物判定かよ...... 10億越えのお金持ち怖すぎるわ。


「でもでも、もう無駄遣いしませんから!柚斗さんに許可とってから使いますから!」


「いや許可出すの俺!?」


こうなってしまった以上早く莉亜さんの金銭感覚をなんとかしなくては••••••!


「まあ、大体わかりました。それじゃ時間も時間ですし...」


ちらっと時計を見ると、時刻は午後6時を回っていた。頃合いだろう。



「そろそろ晩御飯にします?今日はこんなものしかありませんけど」


目の前で、莉亜さんはなぜかコンビニ弁当に目を輝かせていた。



ここまで読んでくださったあなたに最大の感謝を。

よろしければ今回もブックマーク、上のほうから評価感想等頂ければ 嬉しい限りです。

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