邂逅•田山家と竜胆家③
「え?」
「え?」
「はい?」
「交際•••••• してないの••••••?」
「いや、してないですよ••••••?」
「••••••どうして?」
「どうしてって!?」
絶句するご両親と、それを見て同じようにぽかんとする俺と莉亜さん。
ちなみに親父と母さんはといえば、いつの間にか座っていたはずのソファから少し距離を取り、俺たちの様子を眺めていた。
もちろん二人は俺たちはそんな関係にないことを知っている。
が••••• なにニヤニヤしてんだあの二人。
ちくしょう俺と莉亜さんがあたふたしてるところがそんなに見たいか•••••!
我が親ながらタチの悪いことこの上ない。
今後はああいう大人にならないことを人生の目標にする。今そう決めたからな。
「じゃあ二人は付き合ってないの••••••?」
「母様、『お付き合い』と『交際』はこの場合は同じ意味なんですよ?」
「わ、分かってるわよそのくらい! 二度聞きするくらい驚いたの!」
「そんなに驚きますか?」
「それは驚くでしょう。 だって二人は一緒に住んでるって」
「あ、そこは間違いないです」
どうやらあたふたすることになったのはご両親のほうだったみたいだ。 とりあえず俺は事実を事実として伝えておく。
「間違いないんでしょう? じゃあ付き合ってるってことじゃない」
「母様それは飛躍しすぎでは!?」
「えっ」
途端に顔を見合わせる香奈さんと幸輝さん。
と、とりあえずそのへんを説明しよう。 どんどん状況がややこしくなってく気がする••••••
◇
「••••••じゃあ、二人で暮らし始めた時はほぼ初対面の状態だったと?」
「ほぼというか完全な初対面ですね。 初めて会ったその日から二人暮らしなので」
ここで(あれ? こう言っちゃうと俺ってただのゲスなやつなのでは?)
という思いが内心を駆け巡ったが、あくまで落ち着いて話してみる。
そして、なんとか莉亜さんと初めて会った日のことを話し終えた。 よく頑張った俺!!
「すごい••••••」
「柚斗くん。あなた見かけによらず、その•••••• 思い切りがいいのね」
そして開口一番、ご両親のそんな言葉。
「えっと、壮大なる誤解があるような気がするんですが」
何に対する「すごい」なんだそれは。 そして一ミリも褒められてる気がしない••••••!!
「莉亜も柚斗くんもまだまだ若いんだから、あんまり無茶は良くないと思うわよ? ••••••子供はまだ早いわ」
「そういう目的じゃないってことを説明したつもりだったんだけどなー!?」
ここまで来るともはや冤罪である。 誰か弁護士を呼んでくれ••••••!!
「ふふっ。 冗談よ」
絶賛超動揺中の俺と、俺の隣でひたすら首を横にぶんぶん振り続ける莉亜さんを交互に見て、 香奈さんは悪戯っぽく笑った。
「知ってますか母様。 世の中には言っていい冗談と悪い冗談っていうのがあるんですよ?」
「今のは言っていい冗談でしょう?」
「怒りますよ••••••?」
「もう。今のも冗談だってば」
「なおさら怒りますよ••••••?」
「いや、だから冗談••••••」
「あの、話進めてもいいですかね!?」
なんとなく、このままだと今のやりとりが無限に続くような気がしたが、多分正解だろう。
ーーこう言うと失礼かもしれないけど、意外とウチの両親と似てるところあるなあ••••••
俺が声をかけた時、そこで初めて俺に気づいたとばかりに勢いよく振り返った二人。 そのやりとりを見て、どことなくそう思った。
「母様がバカなこと言ってすみません••••••」
「いやいや謝らなくても。 それより、お母さんなんかへこんでますよ••••••?」
「う•••••• 娘にバカって言われた••••••」
「うーん、今のは香奈が悪いと思うよ?」
「うう••••••」
さっきまでの大人びた(実際大人だが)様子は何処へやら、香奈さんは急に縮こまってしゅんとしている。
ずいぶん様子が違うなおい••••••!?
「あ、母様は私がちょっと言うとすぐああなので気にしないでくださいね?」
「••••••意外とご両親に容赦ないっすね。莉亜さん」
「柚斗さんがそれ言いますか〜?」
「まあ、たしかに」
俺は苦笑した。
やっぱり田山家と竜胆家は、どこか似ているように思う。
ここまで読んでくださった貴方に最大の感謝を。
またしても『一話かけても話が全然進んでない』という作者の(悪)癖が出た今回ですが、実を言うと『田山家と竜胆家』編が終わりますとその先2〜4話くらいで完結する予定です。
なので普段よりさらにじっくりゆったり進めているというのも事実なのです。
そんなわけで『田山家と竜胆家』編は次回終了予定。
もうしばらくお付き合いいただければ幸いです。




