邂逅•田山家と竜胆家②
やっと更新できました••••••!
今回もお楽しみいただけますように。
「申し遅れました。 私、この家で使用人として働かせていただいております。 三上と申します」
厳かな雰囲気漂う正門の前、 突然の展開に呆気にとられていた俺たち家族の方へと向き直り、 三上さんーー 莉亜さんに『玲ちゃん』と呼ばれていたことから察するに『三上 玲』さんで間違いないだろうーー は、
優雅にお辞儀をした。
濃紺のワンピースに、フリル付きの白いエプロンとカチューシャ。
そして、 スカートの裾を持って丁寧に頭を下げるその一連の動作。
どこからどう見ても、メイドさんである。
「薄々勘づいてはいたけど、メイドさんとかいるレベルだったんだ••••••」
「完全に別世界だなこりゃ••••••」
「だな••••••」
もちろん俺も本物のメイドさんを見るのは初めてだ。 というか実際、大部分の人は目にする機会ないよな••••••?
「田山家の皆様、莉亜様も。ご案内いたしますのでどうぞついてきてくださいませ」
さっきまでの莉亜さんとの会話の様子とはまた違う、物腰の柔らかい態度で先導してくれる三上さんに、莉亜さん以外の全員が戸惑いを隠せないまま続いた。
◇
「••••••広いな」
「きれいだ••••••」
「二人して感想の語彙力無さすぎだろ」
三上さんの案内に従って玄関を上がり、五人で廊下を歩いていく。
その道中もまた、この家(もはや屋敷と呼ぶべきかも)の天井の高さやら、見たこともないような絵画やらにいちいち目移りしてしまう。
(そういや、俺といる時は莉亜さんもこんな感じだな)
俺の一歩先で、ちらとこっちを振り返っては小さく笑う莉亜さんを見て、 なんとなくそう思ったりした。
「こちらです。応接間になります」
ドアの前に立つ三上さん。
莉亜さんは慣れたものみたいだけど、俺たち家族の緊張は今や結構なものだ。
さてどうなることやら••••••
「旦那様、奥様。 莉亜様と田山家の皆様がお見えです」
「どうぞ。 入ってもらって」
三上さんが開けてくれたドアの向こうには、割とフラットな服装の俺たち四人とは違い、いかにも正装といった感じの服装に身を包んだ男女の2人組の姿。
「この度はご足労いただき有難うございます。 本来ならこちらが出向くべきだったんですが、 なにぶん身軽とはいかないもので••••••」
「へ? い、いえそんな、お気になさらず••••••!!」
おお。 柄にもなく狼狽えてるよ。あの親父が!
(なんでこの人俺に敬語なんだ!? 圧倒的上司なのに!)
とか考えてるな、たぶん••••••
『旦那様』と呼ばれる、莉亜さんの父親。
複数の企業を束ねる『竜胆グループ』のトップ。
その第一印象をこの上なく簡単に表すと『好青年』だった。
••••••いや、俺の親父とそんなに歳変わらないはずなんだけど!? 見た目若すぎない!?
◇
応接間のソファ(これまた信じられないくらい座り心地がいい)に、田山家三人+莉亜さんの四人と莉亜さんのご両親が
それぞれ向い合う形で座り、 まずは、とばかりに全員が頭を下げた。
「改めてご挨拶を。
初めまして田山家の皆様。 娘に目をかけて頂いたことは感謝してもしきれません」
「い、いえ! 自分は本当に何もしていませんので••••••」
「こちらこそ、息子が大変お世話になったみたいで。ねえ?」
「ホントにそうです。 お世話になりっぱなしというかお世話にしかなってないというか••••••」
「いやいや、ご厄介になってる身としてはあれくらい当然であってですね••••••」
ーーなぜか隣の莉亜さんだけ俺に向かって頭下げてるのが気になる。 なんなんだこの状況。
「うんうん。 ご子息への感謝は忘れてないようで何よりだ。 久しぶりだね。莉亜」
視線を莉亜さんの方へ移して言う。
っていうかご子息って俺のこと!? 慣れないなそれ!
「ええ。 二人ともお久しぶりですっ」
「久しぶりね莉亜。 少しは無駄使いしなくなったかしら?」
「そこはもうばっちりです!」
「そう。 先方にご迷惑かけてない?」
「もちろんかけて••••••! ないといいんですけど••••••」
途端に不安そうに、ちらっと俺を見る莉亜さん。
いや金銭感覚よりそっちに自信持って欲しかったなー!?
「いえ、その辺り心配する必要は全くないですので」
とひとつフォローしておいた。
あと『ご子息』も『先方』も永遠に慣れる気がしなかったのでご両親に名前を伝えておいた。
◇
「うん。 とりあえずうまくやれているようで何よりだ。なあ、香奈?」
「ええ。私も安心したわ。 柚斗くん、莉亜が一緒に暮らす相手があなたで良かった。 いい子ね、あなた」
「あ、ありがとうございます••••••?」
しばらくーーと言っても1時間くらいだけどーーもろもろ話しているうちにご両親の俺に対する評価は固まったらしい。
そして莉亜さんのお母さんーー香奈さんに唐突に褒められた。
俺のどこを見てそんな台詞を言ってくれたんだろうか。これがわからない••••••!
そこから少し間を開けて、口を開いたのは莉亜さんのお父さんーー幸輝さんだった。
「ところで莉亜、柚斗くん」
「はい?」
「何でしょう」
「君達は••••••交際してどのくらいになるのかな?」
『はい???』
唐突であまりに飛躍しすぎた質問に、俺と莉亜さんは声を揃えた。
ここまで読んでくださった貴方に最大の感謝を。
今回の話書きながらメイドの三上さんの出番があまりに少ないなと思いまして(今後もあるにはありますが)
本編完結したら莉亜さんと三上さんの竜胆邸でのエピソード書きたいなとか考えてました。 というかたぶん書きます。
どこまでいってもメイドは正義。
執筆中BGM 雨とネオン(beco)