旅行は下調べが命
三度目の日間ランキング掲載、ありがとうございます。
今回もお楽しみいただけますように。
「 温泉って本当にいっぱいあるんですね••••••」
「一つ一つ見てたらそれだけで夏休み終わるっすねこれ」
ーー今年の夏休みの目玉行事は温泉旅行ということに決定し、
さてじゃあどこの温泉にしようかと、意気揚々とスマホで
「温泉 おすすめ」
と検索し、その結果を見て二人して途方に暮れているというのが今の状況だ。
『検索結果 約6万件』
••••••いや、 そりゃあこんなアバウトな検索をするほうにも問題があるのはわかるが、それにしてもとんでもない情報量だ。
こんなところでインターネットのすごさを再確認することになろうとは••••••
「これじゃラチがあかないっすよ。とりあえず、東北とか関東とか、大ざっぱなとこから絞りこんで行きません?」
◇
今回莉亜さんとの旅行を敢行するにあたって、まずは
『2人分の旅費食費その他諸々はどう捻出するか』
という問題が当然出てくるが、 そこはすでに話し合い済みの解決済み。
ここは俺の奥の手ーー これまで大きな買い物をすることもなく貯まり続けた『お年玉貯金』
高1の頃から今日まで三年間、毎月稼いだ額を少しずつ貯め続けた『バイト貯金』
この二つを融合素材とし、『旅行費』を融合召喚ッ!!
というわけだ。
ーー なんか我ながらおかしなテンションになってきてる気がする。落ち着け俺。
ともかく、旅費に関しては特に心配はしていない。
塵も積もれば山となるとはほんと良く言ったもので、 久方ぶりに通帳を確認してみると 50万円ほど貯まっていた。 思ったより0が多くてちょっとビビった••••••
ーーちなみに50万円って、莉亜さんがうちに来る前に身につけていたという『安物』のネックレスを売った時と同じ金額だ。
そして当の莉亜さんは、 俺が貯金を使うと言った時めちゃくちゃうろたえていた。
ーー 俺と初めて買い物に行くことになったとき、 件のネックレスを売って得た50万円を はした金 とか言ってた時と同一人物とは思えないくらいあたふたしてたけど、 最終的には納得してもらった。
◇
そんなわけで旅費のことは心配ないからと、日本全国から温泉を探し始めたのがまずかった。 このままだと温泉探しだけで夏休みが終わる。 やっぱり絞り込みは必須だ。
「まずは関東東北その他。大ざっぱでもいいのでどの辺にするか決めたほうがいいっすね。 旅費にも関わってきますんで、ここはすぐ決めましょう」
「はーい!!」
相変わらず浮かれた様子の莉亜さん。 テンションは普段の三割増しって感じ。
「私は関東がいいです!!」
お。関東ときた。
「以外にも近場っすね。 なんか理由あるんすか?」
「ええ。 最近のこの時期は北海道とか軽井沢とか、そっちのほうの別荘にばかり行ってたので、 関東で過ごした経験があんまりなくって!」
「そりゃまた豪勢なことで••••••」
どうだ.... もはや俺も『北海道と軽井沢に別荘』 くらいでは驚かなくなったぞ......!!!
莉亜さんの口ぶりから察するに、もう何ヶ所か持ってそうだけどな、別荘地。
リアクションもそこそこにスマホに目を移し、ここ茨城県も含めた関東圏の温泉情報を漁っていく。
「関東なら、俺でもいくらか探しやすそうっす」
意外と茨城県内にも良さそうなとこがあるな。他には栃木埼玉とか••••••
って....これは••••••! マジか••••••!!
「莉亜さん莉亜さん、知ってました? 関東には『日本一』の名湯があるみたいっすよ」
「に、日本一••••••!?」
驚きに目を見開く莉亜さん。その様子を見るに、『ここ』のことを知ってて関東を希望したわけじゃないらしい。
「ちょ、ちょっと見せてください...!」
莉亜さんが俺の後ろからスマホをのぞき込む。
「ち、近いっすよ莉亜さん••••••!」
「えー、 私も見たいですよ〜!!」
胸....! 胸当たってるから......!!
一瞬息が止まりそうになる。
なんで自分の家でスマホ見ながら窒息の危険に見舞われてるんだろう 俺。
このままでは非常に良くない。 莉亜さんのほうを向いて、真正面にスマホの画面を置く。 そこに映るのは•••
「へえ••••••! 群馬県ですか! なるほどなるほど」
「近場の割に、俺も知らなかったっす」
『群馬県 草津温泉』
見たところによると、草津温泉は日本一の温泉湧出量を誇り、『にっぽんの温泉100選』なる番付でも 一位二位の常連らしい。
近くの県にこんな有名な温泉があったとは知らなかった。
しかも付近に宿泊施設やいろんな店舗なんかもあって、観光するにも困らなさそうだ。
「いいじゃないですか!! ここにしません?」
「これ見ちゃったらここ行くしかないって感じっすね。そうしますか!!」
ーーそして10日後。 俺と莉亜さんは群馬県草津町へ向けて出発する。
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