7月:それはとある戦争の季節②
2日ほど間が空いてしまいました。久しぶりの更新となります。
今回もお楽しみいただけますように。
「なるほどテストですか•••••• 私も学校に通ってた時期もありますから、その辛さ非常によく分かりますよ••••••!」
「そういえば莉亜さんて、俺と会った頃にはもう学校とか通ってなかったらしいすけど、なんでですか?」
「飽きました!!」
「理由らしい理由もなかった!」
そんな理由で学校やめちまったのかよ。むしろすげーな!
◇
「まあそれはそれとして、柚斗さんは随分と気合を入れてテストに臨まれるんですねえ•••」
「ええ。なにせ今回からは俺一人の問題じゃなくなっちまったんで」
「どういうことですか??」
莉亜さんが小鳥のように首を傾げている。その表情は確かに可愛いが、俺は硬い表情を崩せない。
「具体的に言うと、テストの順位•合計点数のランキングっすね。 そこで学年上位10%以上取らなきゃ、強制送還の未来が待ってます」
俺のその言葉を聞いた瞬間、莉亜さんの顔が少し青ざめたのが見えた。
察しのいい莉亜さんならもう気づいただろう。
「きょ、強制送還って....もしかして••••••」
「そうっす。ここを引き払うことになるっすね••••••」
自分で言っていて頭が痛くなる。
そう。中間•期末•その他毎回のテストには「ここで暮らし続けられるか否か」が懸かっているのだ。
もともとうちはそこまで厳しい家庭でもないし家族仲も良いと思ってるが、 母さんと父さん揃って
「一人暮らしはまだ早い」
という意見を崩さなかった。
それを説得する中で付けられた条件だが、この条件は俺にとってかなり厳しい。
俺の学年は全部で320人。 上位10%をもぎ取るには「32位以上」が必要になるわけだ。
ちなみに一人暮らしを始める前、つまり高2までの俺の平均順位はせいぜい100位前後。 それなりに勉強してこの順位だ。 もう一度言う。 かなり厳しい。
ちなみに前回の中間テストは25位で切り抜けたが、 あの時は今までの人生で一•二を争うくらい勉強したと言いきれる。
しかも今回からは•••••••
「そうなると、私の住む場所、無くなっちゃいます••••••?」
自体の深刻さを完全に理解した様子の莉亜さんの細い声。
そう。今や俺は一人暮らしではない。
俺がここで暮らせなくなる=莉亜さんが行き場を失う ということになるわけだ。
ここを出た場合、俺は実家に帰ることになるが、家を追い出されてここに行き着いた莉亜さんはそうもいかないかもしれない。
冗談抜きで露頭に迷う可能性だってあるんだ。
ついでに言うと3億の約束も無かったことに••••••
ん? ついでかこれ? いや、それはまあいい。
とにかく、俺達二人の生活がかかった今回、万が一にも•億が一にもしくじるわけにはいかん...!!
◇
「じゃあ、今日からは昨日話した通りっす。 行ってきます」
「はい! お勉強頑張ってください....!」
翌日• 莉亜さんの激励を胸に刻み込んだ俺は、その日から猛然と勉強した。
今日で期末テストまで残り2週間。
朝もいつもより早く出て、クラスメイトがほとんどいないうちから勉強を始めると決めた。
俺が教室に着いたとき教室には二人だけ。マッキーと雅の姿が見えた。
「よー柚斗!早いな!」
「おはよ。柚くん」
「お前らも気合入ってんな」
ちなみにこの二人も前回上位10%に食い込んでいる。
そんな二人が俺より早く来てるのはちょっと焦るが....
「今回は奢り回避させてもらうぞ!!」
「言ってろ」
「私も今回はちょっと頑張らないとだな〜」
俺含めた三人の間には、中学の頃からテストの結果に関して一つルールというか、決めたことがある。
『3人のうち合計点数最下位のやつがテスト後、打ち上げの代金を3人分払う』
高級料理店に行くわけでもないが、3人分の代金となるとそれなりのものになる。 それを避けるため二人も必死になっているわけだ。
ちなみに前回払ったのはマッキー• その前の中学最後のテストの時払ったのが俺だ。 ちなみに雅は、中一の時から今までで一度しか払ったことがない。
「言っとくけど俺は今回必死だぞ! 前回と違って二人の生活がかかってんだからな」
「二人? 」
「あっ そっか! 莉亜ちゃんのことがあるもんね...!」
二人とも俺の家のテストに関するルールは知っている。
マッキーは一瞬ぽかんとしていたが、雅は理解が追いついた様子。
「柚斗が一人暮らしできなくなると、莉亜さんはどうなるんだ?」
「それが想像できないから必死なんだよ」
◇
授業を終え、放課後は毎日完全下校時間まで図書館を利用して勉強。
基本的にテスト期間はバイトを入れていないので、時間には余裕がある。
それでも家に着くのは夜の8時すぎ。部活にも入らず放課後すぐに帰宅しているいつもと比べるとかなり遅い。
「ただいま...」
「あ、柚斗さんお帰りなさい! ご飯できてますよ!!」
「あ、ありがたすぎる...!!!」
「え? いやそんな、最近は毎日私が作ったの食べてくれるじゃないですか」
「それはそうなんですけどね?」
疲れて帰ってきた後に食べるのが、コンビニ弁当と手料理とでは天地ほどの違いがある。
正直今日ほど莉亜さんに感謝した日はなかった...!!
◇
「旨すぎる••••••. ちょっと泣いていいすか?」
「そんなにですか!?」
その夜出てきたのは、初めて食べた手料理である豚の生姜焼きだった。 これで作るのは二度目のはずだが、相変わらず信じがたい旨さだよほんと...
「柚斗さん最近毎日頑張ってるんですから。私もこのくらいしますよ」
その言葉と手料理の味を噛み締め、俺は気合いを入れ直す。
ーーやっぱり俺は莉亜さんと離れるのは嫌だ。
それを今日、初めて実感してしまった。
•期末テスト開始まで 残り7日
ここまで読んでくださったあなたに最大の感謝を。
自分の母校のテストも上位入れたら図書カードとかもらえてみんな気合い入ってたの思い出しました。懐かしい。
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