やっぱり出来たてが食べたい
今回は少し短めです。
今回もお楽しみいただけますように。
「柚斗さん!今日は私がなにか作りましょうか?」
その夜、莉亜さんは唐突にそう言った。
「へっ?」
「今日の夜ごはんですよ! 私が作ってもいいですか?」
莉亜さんが作ってくれる....だと...!?
確かに俺と莉亜さんが出会ってからここまで2週間ほど、というか俺はずっとそうだが、朝も夜も白米と味噌汁以外はほとんどコンビニ頼りだ。
第一莉亜さんにとっても今の食生活はよろしくないだろう(相変わらずいろんなコンビニ飯を珍しがってはいるが)。
そんなわけで願ってもない申し出ではあるが••••••
「莉亜さん、料理したことあるんすか?」
「ありませんけど?」
「じゃあなんで言ったんすか!?」
そうだよなお嬢様だもんな••••••
「自分でやったことはないですけど、基本的なことはできるつもりですよ? 私の家でいろいろ見ましたし」
やっぱり莉亜さんの家では、別に雇った料理人とかがいたってことか•••••• しかし本当に大丈夫だろうか??
しかし莉亜さんはやる気になっているし、うちにも食材が全くないわけではない。何より俺自身ほぼ料理ができないことを考えると....
「じゃあ... お願いしていいですか?」
「はい!! 柚斗さんは何が食べたいですか〜?」
「ん〜 じゃあ.... コレ、作れそうっすか?」
俺はスマホで適当なレシピを探し、莉亜さんに見せる。
そこに映るのは「豚の生姜焼き」 のレシピだ。
あれはいい。 白米との相性が良すぎる。 最近は実家にも帰ってないこともあって、かなり長いこと食べていない好物だ。
それを見て、莉亜さんが目を輝かせて言う。
「あ、おいしそうじゃないですか! 生姜焼きっていうんですね..! 私も食べたことないですし、頑張ってやってみますね!」
(自分が食べたことないもん作るってやべーな...)
正直内心不安が増すばかりだったが、調理を開始した莉亜さんの様子を見てそれは少しずつ消えていった。
速い。手際が良い。とても料理に関して素人とは思えない。
「あの、莉亜さん? これ...初めて作るんすよね?」
「作るのも食べるのも初めてですよー! もうちょっと待っててくださいね!」
「とてもそうは思えないんすけど....」
俺はしばらく信じられないものを見る目で調理する莉亜さんを見ていたが、 じゅう、という音とともにいい匂いがしてきた。
「こ... これは....!」
正直この匂いだけでいくらでもご飯が進むやつだ...
そして完成した生姜焼きを、莉亜さんがテーブルに運んでくれた。
「完成です! どうですか柚斗さん!初めてにしては美味しそうでしょう??」
どこか誇らしげに言う莉亜さん。
「食べる前から旨いってわかりますよこれ...!」
『いただきます!』
2人ほぼ同時に言い、一気に食べ進めていく。
••••••旨い。 旨すぎるなこれ。
こんなに旨かったか?生姜焼きって••••••
好物の旨さを疑うという衝撃の経験をしつつ、俺と莉亜さんが口を開いたのは、二人してきれいに完食した後だった。
「こんなに美味しいものだとは...我ながらちょっとびっくりです」
「ホントに旨かったです。初めて作ったのがこれって凄いっすよ」
「作り方がしっかりしてましたし、柚斗さんもできると思いますよ?」
莉亜さんはごく当然のことのように言うが、自分の凄さに気づいていない感じか...?
そういえばあの買い物の日も、一瞬でウチの住所を覚えてたし.... なんというか、いろいろできる人なのか... ?
箱入り娘の御令嬢の凄さに、少しだけビビった夜だった。
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