閑話 •学校にて
新キャラ二人登場します。
莉亜さんとの初めてのショッピングから一夜明け、俺は自転車を駆り学校へ向かっていた。
「行ってらっしゃいとか言われんのずいぶん久しぶりだな」 とか呑気なことを考えつつ、学校に到着し教室に入った俺を待っていたのは
「よう柚斗ぉ!お前昨日デートしたらしいなよかったじゃねーか!!」
と、怒涛の勢いで俺に詰め寄る一人の男だった。
牧島 信也。 俺の数少ない友人であり、野球部のエース。
運動は無論できるし、頭も良い。あいつの周りは常に人が多く、女にも男にもモテる男である。
俺とは完全に別の人種であるように思われるかもしれないが、中学時代からのつきあいだ。
が...なんだそれ。
「おいマッキー、誰ががデートしたって?」
「お前だろ?」
こいつは一体なにを....
「ついに幻覚が見えちまったか... 野球のやりすぎなんじゃないの?」
「いやいや、俺は雅から聞いたんだぜ? 昨日、俺たちがよく行くあのショッピングモールで、知らない女の人と歩いてたお前を見たって 」
「ぶはっ! けほっ けほっ」
その言葉を聞いた瞬間、口に含んだ麦茶を吹き出しそうになったが、どうにかこらえる。
「お、おい柚斗、大丈夫かよ?」
な....なんでこいつが...というより雅がそれを...
とにかく雅を問い詰めなきゃならないな....
「マッキー、今日雅は一緒じゃないのか?」
「ああ、今日は朝練もあったしな。 でもそろそろ...」
「今わたしのこと呼んだー??」
噂をすれば、か。
元気に教室に飛び込んできたこいつは 綾乃 雅
こいつも中学時代からの友人であり、今はマッキーの彼女でもある。
「おはよ。二人とも」
と、にこやかに言う雅。
こうして見ると、やっぱかわいいな...などと思わなくもないが、今はそれどころではない。
「雅お前、またマッキーに変なこと吹き込んだろ」
「柚くんがデートしてたって話?」
「そうそう。....いや違うよ!? デートではない!!」
「わたしっていう目撃者がいるんだから、もう諦めな? もうかなり噂になってたりして♪」
「お前... お前なんつーことを....」
女ってなんて怖い生き物なんだろう。今日ほどそれを感じたことはない....
雅はクラスの女子の中心的存在といってもいい。マッキーに負けず劣らず友達も多いみたいだし、こいつが一度噂なんぞ流そうものならあっという間に...
「ねー、もう隠せないことだし説明してよ〜 」
「お断りします」
「ちょっと見えた程度だけど、この学校の子じゃないよね? 先輩だったとしてもわたしは大体わかるし」
「何も話すことはございません」
というかそもそも学生じゃないしな...
「一緒にお洋服見てたんでしょ? 」
「つぎつぎ暴露しないでくれる!?」
俺がだんまり決め込んだ意味ないだろこれ....
ヤバい。ヤバすぎる。
このままの流れで噂が流れるのも当然まずいが、万一莉亜さんのことが広まったりしたら一巻の終わりだ。
絶対に言うわけにはいかない。
なんせ買い物どころか現在進行形で一緒に住んでるからな... しかも莉亜さんは大富豪の御令嬢なわけで...
••••••事態の深刻さがようやく理解できた気がする。
しかしここまで追求された以上は... よし。
「もらえるものもあるし... その、放ってはおけなかったんだよ」
「え?」
本音を言うことにした。
「恋愛とかじゃなくて、偶然会っただけ。それでも...
まあ、あんな美人を野宿させるわけにはいかないだろ」
細かい説明を一切省いて話す俺に、あっけにとられた様子の二人。 当然だ。訳がわからないだろう。
「さっぱりわかんないと思うけど、今はこれで納得してほしい。.. 無理か?」
「ん〜〜 確かにわけわかんないけど... でもまあ、柚くんはその人が大事なんだってことはわかったから、それでいいや」
「柚斗がそんな風に言うの初めてだもんな!!」
こんな風に言ってくれる二人だからこそ、長いこと仲良くやれているのだと思う。
「やばっ! そろそろ授業始まるよ!」
「じゃー柚斗、また後でな!」
と、足早に俺の席を離れていく二人。
俺はそんな二人に感謝して、その日の授業を受け始めた。
••••••ちなみに放課後は莉亜さんに関する質問こそなかったが、「四人でどこか遊びに行こう」となり、延々話し続けることになった(主に雅)
ここまで読んでくださった貴方に最大の感謝を。
「莉亜さん出てこないのかよ...」 とショックを受けたかた! 次回からはまた出てきますからどうか立ち直ってください..!!
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