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守りたい

作者: ちーのすけ

あなたは、自分が死んでも守りたい人はいますか?

6/22 ―7:07―  陽菜side 

私(上原陽菜(19))は、いつものように起き上がった。

「ピロン!」

チャットの通知が来た。

――今日、暇?俺、今日バイト休みだから、もし良かったら、一緒に出かけようか。

優からのメッセージだった。


日比野優(20)。高校の時から今でも仲良くしていたグループの一人であり、今は、もうすぐ付き合って3年目の彼氏でもある。


―良いよ。どこ行きたい??


と答えた。そして、身支度をし、ゆっくりしようと温かいコーヒーを準備し、テレビをつけた。そのテレビ画面に映っていたのは、優と同じように仲良くしていた多賀野翔だった。


「昨夜10時頃、多賀野翔(20)さんと見られる遺体が見つかりました。警察は、殺人として捜査を続けています。・・・」


私は、信じられず、コーヒーを飲むことができなくなった。

「ピロン!」

――陽菜。ニュース見たか?

優からだ。

―見た。翔が・・・。

――あぁ・・・。今日は、陽菜の家行くよ。どこも出かける気ないだろ?

―一緒にはいたいから待ってるね。ごめんね、気を遣わせて・・・。

――大丈夫だよ。そんなに気にするな。待ってな。


私は、携帯の液晶画面に落ちた涙を拭き取ろうとした時、

「ピロン」

と携帯が鳴った。

「誰から・・・?」

と画面を見ると知らないアドレスからメールが届いていた。開くと

『翔を殺したのは、おまえら3-Eの誰かだ。犯人はわかっている。』

と書かれていた。

「何これ・・?」

と思いながら、優が来るのを待った。

―8;07―

「ピンポーン」

インターホンを見ると、優の姿が映っていた。

「優。待ってたよ。」

と私が言うと、

「ごめん、待たせて。」

と優は、軽いキスをして中に入った。

そして優にメールのことを話すと、

「俺も、来てた。翔を殺すって3-Eじゃありえないだろ。あんなに仲が良いクラスだったのに」

と優は、言った。その後すぐ、二人の携帯が鳴った。

「またメール・・・。」

そう私が言うと、

「大丈夫か?」

と優が心配そうに言った。

「大丈夫。」

と私は答えて、メールを開いた。

『3-Eの皆さんへ。

翔を殺した犯人を見つけてください。あなたたちの誰かです。』

と書かれていた。優も私も謎に思った時、またメールが届いた。それは、私たち2人宛だった。

『優様、陽菜様。あなた方2人は、心当たり無いと思います。ですが、あなた方2人とは、とても親密な方が、犯人です。あなた方がいたグループの中です。彼らには、思い出のある「カラフルランド」に行くように指示しました。あなた方にも行ってもらいます。そして真実を知ってもらいます。休日にしては、「良い」デートになるのでは?

では。

管理人S』


「カラフルランドって、俺らが高校の時、初めて遊びに行った場所じゃん。」

と優は、携帯から懐かしい画像を取り出した。そうだね、と私は、懐かしい画像を見た。

「行くか。」

と優は立ち上がった。

「うん。」

と私は、震え混じりの声で答えてしまった。

「大丈夫。何があっても守るから。」

とぎゅっと私を抱きしめた。


―9:00―

「懐かしいな・・・。」

と優は、思い出に浸るかのように懐かしそうに入り口を見ていた。すると後ろから、

「あれ?ラブラブカップルがいるじゃ~ん!」

と聞こえた。振り向くと、こちらに向かって走ってくる5人組がいた。

「おぉ!!浩介!!久しぶり!!」

と優は、大きく手を振りながら言った。

「相変わらずだな。二人とも。」

と高島浩介(19)が答えた。

「久しぶり、陽菜。元気してた???」

そう言って私に抱きつく相沢未来(19)

「もう、未来はいつも陽菜にすぐ甘えるんだから~」

と言って笑っている羽原真穂(20)。

「女子は、本当に仲良いな。」

そういう、砂原拓真(19)。

「拓真、本当はうらやましいんじゃないか?」

と貝塚亮平(20)が言った。

「うるさいな。」

拓真は、そう言って、優の方に向かった。

「なあ。おまえらもきたのか?メール。」

と拓真は真剣な表情で優に聞いた。

「あぁ。だから陽菜とここに来た。」

と優は、答えた。

「なんで、ここなんだろう。」

と真穂は、言った。

「思い出の場所に何かあるとか?」

と亮平が門前を見ながら言った。

「・・・」

全員、何も言えなくなってしまった。いったい、管理人Sは何がしたいのだろうか。


そしてそのとき管理人Sからメールが届いた。

『レインボー観覧車に女子は、女子で、男子は男子で、乗れ』


―9:17―

「指定された観覧車、もうすぐじゃん。」

と浩介は言った。

「優。あたし・・・。」

そう、私は、観覧車に乗れないのだ。高所恐怖症だからと言うのもあるが、10年前、観覧車が、強風で、壊れてしまい、その一部分が自分の方に飛んできたことがあったからだ。

「悪い。俺、陽菜のそばにいる。陽菜、観覧車乗れないのは知ってるだろ?」

と優みんなに言ってくれた。だが、

「陽菜が自分一人で待ってれば良いじゃん。もう子供じゃないんだし。」

そう真穂は、つぶやいた。私は、とっさに、

「優。私、一人でも待てるから。みんなと一緒に指定の観覧車、行ってきて。ここで待ってるから。」

そういうと優は心配そうに私を見つめて、

「わかった。でも、なんかあったら電話しろよ。発作とか押さえるためとかでも。」

と言って私の頭をなでてくれた。

「ありがとう。行ってらっしゃい。」

と私は、彼らを見送り、近くのベンチに座った。すると、

「陽菜さん。一人で待っていて本当に大丈夫なの?」

と後ろから誰かに話しかけられた。

「誰!?」

と振り向こうとすると刃物を向けられていた。

「犯人さん、わかったでしょ?」

と少し加工された声に言われた。

「ごめんなさい。まだわからない。」

と私が答えると、

「人質になってもらえば、犯人はすぐわかる。」

といわれ、私の視界は暗くなった。


ー9;23- 優side

「着いた。」

と浩介が言った。

「陽菜、大丈夫かな・・・」

と未来がつぶやいた。

「チャットしても既読つかねぇんだよ・・・」

と俺は未来に言った。

「大丈夫だよ。たぶんジュースとか飲んでんでしょ。」

と真穂がそう言って、先に行った。

「本当についてなくて大丈夫なのか?」

と拓真は、心配そうにこっちを見た。

「観覧車に乗れば、きっと様子が見えるだろう。」

と俺は、拓真に答えた。拓真は、心配そうに俺を見ていたが、

「よしっ、乗るか。じゃあ、メールの通り、女子は、女子で、男子は、男子でみたいな感じで良いか?」

と言うと未来は、オッケーマークを指で作ったが、真穂は、急に俺に抱きついて、

「優、私、実は高いところ苦手だから一緒にいてくれない?」

と言った。俺は、すぐに真穂を突き放し、

「未来がついてるから大丈夫だろ?」

と言った。

「真穂。彼女持ちに手だしたらダメだろ?」

と浩介は、笑いながら言った。すると真穂は、俺にキスをした。すぐさま、俺は、真穂から離れた。

「なぁ。陽菜を置いていこうと提案したのは、こうするためか?」

と亮平が言った。そして沈黙が続いた。

「まあ・・・とりあえず乗ろう。そう指示出てるし。」

と未来がいやな雰囲気を消してくれた。


―9:28―

「真穂のやつ、どうしたって言うんだよ。」

と亮平が怒り混じりで、文句を言った。

「男に飢えてんじゃないの。女子は、恐ろしい生き物だ。」

と浩介が言った。すると拓真が急に、「あっ!」と大声を出した。

「どうした!?」

と俺が聞くと、

「陽菜・・・誘拐された・・・。」

と言った。拓真の方を見るとそこには、

『陽菜さんを誘拐した。』

と入場門の電子パネル書いてあった。

「くっそ!!」

そう言って俺は、観覧車の窓を殴った。

「でも何で陽菜が??」

と亮平が言った。

「なあ・・・。優。もしかして陽菜、発作が起こるって言ってたよな?大丈夫なのか?」

と拓真が言った。

「わからない・・・。おいていくべきじゃなかった・・・。」

と俺が後悔している時、

「陽菜さんは、まだ、無事だよ~」

と不気味なアナウンスが流れた。

「陽菜は!?!?」

と俺が聞くと

「優さん。安心してください。陽菜さんには、何もしないですよ。犯人が、ちゃんと名乗り出れば、ですけど。」

と不気味な笑い声と一緒に響いた。

「優さん。メールで行くところ、指示しますからそこにお一人で来てください。ほかのメンバーには、違うところを指示しますので。」

と言ってアナウンスが切れた。それと同時に、みんなの携帯が一斉に鳴り始めた。

「優。おまえ、陽菜のことだけ考えてろ。」

と亮平が言った。

「わかってる。」

と俺は、もうそのときからすでに陽菜が心配でならなかった。早くこの観覧車から降りたかった。


―9:32― 陽菜side

「優たちに何するの!?」

と私は、マスクの男に聞いた。

「大丈夫。心配いらないよ。」

とまた加工された声で言った。

「どうしてこんなことしてるの?どうしてあたしたちの中に翔を殺した犯人がいるって言い切れるの?」

と私が聞くと、

「優とアンタと翔は、小学校の時から一緒だったって聞いてた。翔は、あんたら二人が好きだと言ってた。そして、アンタと優が付き合うことになったことを始めに聞いたのが自分だと知ったとき、翔、泣くくらい喜んでた。『最高のカップルだ』って。『結婚式のスピーチとかしたい』ってまた馬鹿なこと言ってさ。それくらい仲の良かった三人なら真実もちゃんと見届けてほしい。翔のためにも・・・。」

と急に聞き覚えのある声を聞こえた。

「もしかして翔の・・・?」

私が聞こうとすると、

「優が目的地に着く。解放するから優に会ってこい。会ったらもう一度この1番倉庫に来い。」

と言われた。


―9:49―

「優!!」

私は、優の方へ真っ先に走った。

「陽菜!!」

優は、すぐに駆け寄って抱きしめてくれた。

「大丈夫か?けがはないか!?」

そう必死に聞いてきて、私は、泣きながら、大丈夫と言った。

「みんなのところ行くぞ。着いてこい。」

と優が行こうとするのを引き留めた。

「Sが1番倉庫に来るように指示されているの。」

と私が言うと、

「え・・・?」

と優が、小さく言った。そしてすぐに

「わかった。一緒に行こう。」

といって私の手を優しく握ってくれた。そして、指示された場所に向かった。


―10:03―

「優を迎えに行ったよ」

と私が叫ぶと

「優さん、まず真穂さんに何されたか話すべきなのでは」

とアナウンスが流れた。

「実はな、真穂のやつに、抱きしめられたり、キスされたりしてきたんだ。でも、ちゃんと突き放した。」

と優が言った。私は、真穂がしたことが許せないが、

「わかった。」

そう答えた。すると

「優さん。こんなに良い彼女で良かったなぁ。俺なら浮気を疑うけどね」

とアナウンスが流れた。

「俺が好きなのは、陽菜だけだ。」

と優は叫んだ。すると、また

「そうか。本当に『最高のカップル』だな」

とアナウンスが流れた。

「さっきも陽菜さんに話したけど、翔と仲良かったあなたたちに見届けてほしい。翔を殺した犯人が自白する瞬間を・・・。」

と言って、姿を現したのは・・・

「翔の兄貴・・・」

と優が驚いた顔した。

「そう。翔と仲良くしてくれたアンタらには感謝してる。」

と翔のお兄さんは、そういった。

「だから、ここで、犯人に自白してもらう。」

と言った。そして、急に目の前のドアが開き、あの5人がそこに立っていた。

「優。本当にここに犯人がいるの?」

と私は、優に聞いてしまった。

「・・・翔の兄貴が知ってるくらいならいるんだろ・・・」

と優は、ためらいながら言った。

「犯人さん。自白しな。」

と翔の兄貴が、言った。5人はその姿に驚いていた。

「俺じゃない」

拓真は、そういった。

「俺でもないし、浩介でもない」

と亮平が言った。

「俺ら、あの時間、居酒屋で飲んでた。未来も一緒だったよな。」

と言うと未来が必死にうなずいた。

「もしかして・・・。」

と未来が言うと、

「あたしだよ・・・」

と真穂が前に出て言った。

「なんで!?なんで翔を殺したんだよ!!」

と優が急に叫んだ。そして優が殴りかかろうとしていたところを、浩介と拓真と亮平が駆けつけて止めて、おびえてる私を未来が駆けつけて優しく背中をなでてくれた。

「全部、陽菜のせいだよ・・・。」

と私に指を指しながら言った。

「陽菜が好きって翔に言われたの。だから、つきあえないって。あたし、アンタに彼氏がいることを言ったらさ、翔が、優と陽菜を幸せにしたいって。陽菜は弱虫だから優にいろいろ甘えるだろうけど、優しいところもあるから優に頼りづらい時は、優の代わりにいつでも駆けつけられる存在でいたいとか言ってさ。おかしいよね?優、あんたの彼女と翔、つきあってるかもよ」

と言った。けど、優は、

「そんなこと知ってるよ。俺が頼んだんだ。」

と叫んだ。

「俺と翔で陽菜を守るって。陽菜は、体が弱いし、家族もあの観覧車の事故で亡くしてる。だからできる限り、そばにいてやりたいんだ。だけど、俺もバイトとかあって寂しくさせてしまうから2人で守るって決めたんだ。なのに・・・何も知らないおまえが何で翔を殺すんだよ!!」

と優が涙ながらに言った。

「翔に、陽菜さんのことを聞いたとき、正直、俺も何かしてやりたくなった。だから、陽菜さんがさみしくならないように、翔と俺で一緒に家でご飯食べたり、優を呼んで、俺ら家族と一緒に旅行行くこともあった。翔は、勉強できないやつだけど、優しい弟だったよ。」

と翔のお兄さん、多賀野颯太(25)が言った。すると、真穂が急に笑い出した。

「陽菜。この状況わかってる。みんな、アンタなんかのためにいろいろやってたんだって。迷惑者だってわかってる?」

と言った。私は、そんなことわかってた。

「ねえ、陽菜。会った時、抱きしめてあげられなかったから自首する前に最後にしていい?」

と真穂が言った。私は、その姿を見て、抱きしめることにした。そうすれば、解決すると思ってしまった。

「行くな。」

と優は、引き留めようとした。

「大丈夫だよ。仲直りしたいから」

と私は、ゆっくり優の腕を振りほどいた。

「陽菜、ダメだって。罠かもしれないよ。」

未来が私の手をそっと握った。

「罠って言わないでよ。未来。」

と真穂が未来をにらみつけた。

「未来・・・」

私は、未来が泣きそうな顔に耐えられず、抱きしめた。そして、

「未来、大丈夫。自首するって言ってるから」

と私は、未来の頭を優しくなでた。

「やめとけって、陽菜!!」

と浩介や亮平、拓真が止めようとした。

「浩介、亮平、拓真・・・」

わたしは、真穂が何かするんじゃないかって疑いたくはなかった。一番苦しんでいたのは、真穂だと思ったから。だから、

「私たち、友達でしょ?真穂もいろいろつらかったんだと思う。それで自首しようって決めたんだよ。大丈夫。翔のことは、許せないけど、それで、真穂を完璧な悪者扱いしないで。」

と私は言った。

「真穂。翔のこと、反省してるんでしょ?」

そう私が言うと

「うん。」

と真穂は、言った。

「待ってるからね」

と私は真穂を抱きしめた。そして、私は、何か温かい液体が流れていることに気がついた。そして・・・

「痛い・・・」

私は、自分のおなかが血まみれになっていた。

「はい、復讐完了。ばーか。みんなのこと信じておとなしくしてればこんなことにならなかったのにね!」

と真穂が言った。そして、目の前いったいが暗くなった。みんなが私の名前を呼んでいるのを聞きながら。


―19:06―

「・・・陽菜、陽菜」

とかすかに声が聞こえた。

「・・・陽菜。聞こえるか、陽菜!?!?」

その声は、優の声だった。

「・・優・・」

私が、そう言うと

「陽菜。ごめん!!ちゃんと止めていれば・・・」

と優が涙を流しながら言った。

「大丈夫だよ。」

と私は、優の頭をそっと触った。

「陽菜、大丈夫?」

そのとなりから、未来、拓真、亮平、浩介が出てきた。

「大丈夫。」

と私が言うとみんな一斉に安心したのか、涙を流した。

「もう、陽菜、心配かけないでよ・・・。」

と未来が言った。

「ごめん。」

と私が言うと、みんなほっとした顔をした。

「そういえば、真穂と翔のお兄さんは・・・?」

と聞くとみんな一斉に黙った。そして亮平が重い口を開けた。

「あの後、おまえを早く救急車に乗せてやらないとってなった時、真穂のやつ、どっかに逃げたんだ。俺らが追いかけようとしたら、翔の兄貴に止められてさ。その後は、何も。警察にも事情は、話したけど今のところ、連絡が来てない・・・」

と言っていた時、亮平の携帯がなった。そして病室に出てしばらくすると、青ざめた状態で帰ってきた。

「どうした!?」

と拓真が言うと、

「翔の兄貴、殺されたって。真穂、まだ捕まってないらしい。」

と言った。

「え・・・。翔のお兄さんが・・・」

そう言って、未来は、崩れ落ちた。

「なあ・・・。真穂、今どこにいるんだろうな。」

浩介は、そうつぶやいた。

「あんなやつのこと心配してんの!?!?」

と未来が泣き叫んだ。

「違う。むしろ、怖いんだよ・・・。」

と浩介が言った。

「なら、今日、みんな、ここにいよう。」

と私が提案した。

「ここなら刑事さんもいるし、大丈夫だよ。」

と私が言った。

「陽菜・・・。」

と優が心配そうに私を見た。

「大丈夫。みんなといたいから。」

と私は、優にそうほほえんだ。その姿を見た優は、安心していた。そして、みんなで眠りについた。


―21:36― 優side

「くそ・・・」

俺は、真っ暗な病院の休憩室でそうつぶやいてしまった。

「寝られないんか?」

と拓真が隣に座った。

「あのとき、ちゃんと陽菜を止めていれば・・・。真穂を捕まえとけばよかったのに・・・」

と俺が言うと拓真は俺の背中を強くたたいた。

「くよくよすんなよ!!陽菜を守りたいんだろ!?後悔したって仕方ないだろ。今は、陽菜が元気になって、真穂から守ろう。な?」

と言った。

「なんで陽菜ばかり苦しい想いしなきゃなんないんだ。代わりに俺が苦しみたいよ。陽菜だけ苦しめたくない・・・」

と俺は、泣いた。すると亮平がきいていたのか、俺の前に立って

「泣くなよ。これから先も陽菜が苦しむと思ってんのか?おまえがそばにいればいいだけの話じゃないか。大学だって近いんだろ?なんなら、このメンバーでシェアハウスだっていいんだよ。けど、陽菜は、俺らには見せなくて、おまえに見せられる弱いところがあるし、甘えもあるだろ。陽菜が一番幸せって感じられるのは、おまえがいるときなんだよ。そんなおまえが苦しんでどうする!!」

といった。

「俺らも、翔みたいにはできないけど、協力するから。」

と拓真が言った。俺は、その日、今まで一度もないくらい、泣いた。


―22:07―

拓真と亮平と俺が病院の休憩室から病室に戻ろうとすると、

「おい!!真穂からチャットが来た!!」

と浩介が駆け寄った。

「未来には、陽菜を見てもらってる。これ聞いたら、陽菜、怖がるだろうと思って」

と浩介が俺らに、チャットの内容を見せた。するとそこには、

『陽菜。アンタを許さない。私は、アンタが死ぬまで警察に自首なんてしない。覚悟しときな』

と書いてあった。

「あいつ、陽菜に何するつもりだ・・・。」

拓真は、いらだちながら言った。

「とりあえず、明日、俺、授業ないから陽菜のそばにいる。優、おまえ、明日、レポート課題の発表あるだろ?だから、明日は、俺に任せて、学校に行け。」

と亮平が言った。俺は、正直不安だったが、信用していない訳ではなかった。だから、亮平に明日、陽菜のそばにいるように、お願いすることにした。


6/23 ―6:34―

「じゃあ、陽菜。俺、学校行ってくるな。なんかあったら亮平に言ってもいいし、俺にチャット送っていいから」

と俺は陽菜に言った。

「ありがとう。レポート課題、なんだろうね。」

と陽菜は笑いながら言った。

「また難しいだろうなぁ。」

と言って俺も陽菜に笑い返した。

「行ってらっしゃい。また後でね」

と陽菜は、手を振った。俺は、みんなが寝てるのを確認して、陽菜にキスをした。そして、学校に向かった。


―7:07―

「おい、おまえの彼女、大丈夫か?」

とゼミで一緒のメンバーに聞かれた。だが、ニュースでは、名前は、非公開にされていたはずだった。

「なんで、俺の彼女に何かがあったって思うんだよ?」

と俺が言うと、

「いや。掲示板にすげぇことが書かれてて・・・見てみなよ!!」

と言われて、急いで、携帯で大学の掲示板を見た。

『法学部2年日比野優の彼女、上島陽菜は、制裁されるべき人間だ!!』

と書かれていた。

「なんだよ、これ・・・」

と俺は、掲示板のメッセージを消そうとしたができなかった。すぐに亮平に電話した。亮平は、パソコンに関しては、人より何倍も扱いなれてるからどうにか解決してくれるだろうと思った。だが、亮平から信じられないことを聞いた。

『昨日、真穂が話したこと全部、『恨み屋』って言うサイトに書かれている。』

俺は、そのサイトの恐ろしさを知っていた。なぜなら、そのサイトは、恨みのある人物を書くと確実に恨みを晴らしてくれるという噂のサイトだったからだ。


―10:32―

俺は、レポート課題の説明を聞いた後、すぐに病院に向かった。

「陽菜!!」

俺は、思わず、叫んでしまった。すると、陽菜と亮平が、驚いて俺の方を見た。

「どうしたの?優。」

優しい声で、陽菜が俺に問いかけた。

「ごめん。心配で・・・。もう授業ないから大丈夫」

と俺は、息を整えながら言った。

「おまえ、まじめだからなぁ。一年の時に、単位取り過ぎて、二年暇になるとか・・・」

と亮平があきれながら言った。

「いいだろ、別に。」

と俺は、リュックを下ろしながら言った。

「そういえば、もうすぐ未来も来ると思う。」

と亮平が言った。

「あいつ、今日、3限あるんじゃなかったっけ?」

と俺が言うと、

「なんか、あいつの学校で、爆破予告があったらしくて急遽休講になったらしい。」

と亮平が言った。

「まさか真穂が・・・」

と不安そうに亮平が言うと、しばらく沈黙が続いた。

「お待たせ!」

その声で沈黙が途切れた。

「未来!」

と陽菜がうれしそうに叫んだ。

「陽菜~!会いたかったよ~!もう心配だった!」

と未来が駆け寄った。

「みんな、おなかすいてるだろうと思って、近くの弁当屋さんでお昼買ってきた!」

と未来が、うれしそうに弁当を俺らに渡した。

「ありがとう」

そう俺が言うと

「今度、なんかおごってよね~」

と未来が俺らをにらんだ。俺らは、苦笑いしながらおいしく唐揚げ弁当をいただいた。


―13:03―

「拓真と浩介、そろそろ授業おわるはずなんだけどな」

と未来が心配そうに携帯を見ていた。

「あいつらから連絡ねぇの?」

と亮平が聞いた。

「終わったら連絡するって言ってたの。授業時間、延長してるのかな・・・」

俺も最初はそう思った。


―14;08-

まだ、二人から連絡は来ていない。

「さすがに遅いよね。呼び出しかな・・・」

と未来が言うと、

「電話してみるか」

と亮平が言って病室を後にした。それと同時に、陽菜の様態を確認に来た先生が来た。

「陽菜さん、傷の痛みどうですか?」

と先生が聞いた。

「だいぶ、痛みは弱くなった方ですが、まだ少し動くと痛くて・・・」

陽菜がそう答えると、

「まだ、無理しないでくださいね。

と陽菜にほほえんだ。そして、

「すてきな友達もついてるから大丈夫だね。」

と俺らにほほえんだ。

「ありがとうございます!」

俺と未来で軽くお辞儀した。そして、先生も軽くお辞儀して病室を後にした。

「陽菜。お茶買ってくるけどいる?」

と未来が聞くと、陽菜が軽くうなずいた。

「わかった。優、アンタもお茶でいいよね」

と聞いて、俺が返事する前に、病室を後にした。

「陽菜、少し、寝て休んでもいいんだよ」

と俺は、陽菜の頭をなでながら言った。

「ありがとう。でもみんなとこうしていられるのが楽しくて。大学の方も、友達が代わりにノートとって送ってくれてるからそれ見て勉強したりして・・・けど、あたし、本当に真穂の言うとおり迷惑・・・」

俺は、その先を言ってほしくなくて慌ててキスをした。

「迷惑じゃない。俺は、陽菜に何でもしたくなるし、みんなも俺と同じ。だからそう思わないで。たのむから。」

と俺は、必死に陽菜に説得した。すると陽菜は、涙流しながら

「ありがとう」

そういった。

「彼女泣かせたらだめでしょ~」

そう言って未来が、頬を膨らませながら言った。

「ねぇ。亮平帰ってきた?」

と未来が聞いた。確かに電話にしては、長い。俺は、陽菜を未来に任せて、亮平を探しに行くことにした。


―15:06―

「亮平、どうしたんだよ?」

と休憩室にいた亮平に声をかけると、

「・・・拓真が殺された」

と俺に言った。

「浩介からチャットがあったんだ。真穂が浩介らの前に現れて、拓真を殺した。浩介は、大学に戻って助けを呼びに戻って、安心していたら、ボコボコにされて、意識なくしてたらしい。けど、なんで浩介は、殺されなかったんだ・・・。」

と亮平は、困惑しているようだった。

「ただ、逃げ切れただけじゃないか」

とおれが言うと、

「怪しかったんだ。おまえが、別の場所指示されて行った後、浩介が真穂に何らかのメモを渡していたんだ。それから、真穂の様子がおかしくなったんだ。」

と俺に説明した。

「今の話も含めて、未来たちにも説明しよう。」

と言い、病室に戻った。

「遅いよ、二人とも。待ってたよ~」

と未来は、俺らを見て、何か察したようだった。そして、陽菜と未来に同じ話をした。

「あたしも、疑っていたんだよね。だって浩介、真穂に襲われそうになるってなったときの夜に、みんな寝てたときに、あたし、途中で起きて、トイレ行こうとしたとき、浩介が怖い顔で、誰かと電話してたんだよね。それで、そのとき、寝ぼけてたんだと思ったんだけど、確かに『真穂』って言ってたんだよね。」

亮平も陽菜もそのことに驚きを隠せなかった。そのとき、亮平の携帯のメッセージの着信がなった。

「浩介がこっち来るみたいだ。どうする。真穂とつながっている以上危ない」

と亮平は、慌てていった。そして、次第に未来も陽菜も心配した目になってきた。

「平然としてよう。普段通り。とりあえず、浩介の動きは、俺が見てるから。」

と俺がみんなに提案すると、亮平は、さっきとは、違う堂々とした態度で、

「いや。おまえは、陽菜といろ。浩介は、俺が、見てる。」

と言った。その方がありがたかった。本当は、少しでも長く陽菜のそばにいたい。ずっと手を握っていたい。陽菜が元気になったら、誰よりもそばにいてやろう。そう思った。


―15:13―

「ごめん。心配かけたよな・・・。拓真、死んだ・・・。」

浩介は、そうぽつりとつぶやいた。

「大丈夫か。おまえ、ゆっくり家で休んだ方が・・・」

と亮平が言うと、

「みんなといた方が今は、落ち着くんだ。だからここにいる。俺は、大丈夫。」

と浩介は、みんなにほほえみかけた。俺は、それが嘘だとは信じたくなかった。今まで、一緒にいた仲間だからこそ、信じてあげたい気持ちでいっぱいだった。だけど、どうしても引っかかってしまう。浩介だけ殺されなかったことや、浩介が真穂に電話していたことが。けど、今は、普段通りに接するしかない。浩介を仲間として信じるためにも。


―17:09― 陽菜side

亮平と浩介は、休憩室でお茶を飲みに、未来は、みんなの分の夕飯を買いに出かけて行った。

「んん・・・」

優は、私の手を握りながら寝ていた。座って寝ているせいか、寝心地は、あまりよくないみたい。私のせいで、みんなを苦しめている。それは、高校の時もそうだった。両親を亡くしてしまった時、みんなが励まそうとしているのに、無理にでも笑うことはできなくて、『いつまで悲しんでるんだよ』と周りに言われることもあった。未来たちもきっと思ったことに違いない。だけど、唯一、何も言わず、特別扱いもせず、普段通りに接してくれたのは、翔と優だった。優は、父親が病気で中学の時に亡くなっていたことを知ったのも、そのときだった。

『俺、親父がいないんだ。中学の時にいなくなって。そのとき、俺は、母親を助けようと思った。学校には、黙ってるけど、バイトしてる。じゃなきゃ、食ってけないから。本当は、おまえを俺の家で一緒にいてほしかった。母親もそうしたいと言ってた。けど正直、金がなくてな。それで翔に頼み込んだ。そしたらあっさり受け入れてくれた。たぶん、少しは、つらいと思う。俺も時々、子供と手をつないでいる父親の姿見ると、親父を思い出して泣いちゃうんだ。けど、そのとき、俺は、翔と陽菜のこと思い出す。二人は、いつも一緒にいてくれる最高の仲間だからな!まあ、二人以外も、亮平たちも思う出すけどな』

って笑いながら不安を取り除いてくれたこともあった。優は、本当に優しい。今握っている手のぬくもりも優しい温かさで心地がいい。

「ありがとう、優」

そう言って、私は、優の頭を優しくなでた。そのとき、温かいものが目から頬へと落ちた。

「んん・・・。陽菜、泣いてんのか?」

優が起きてしまった。

「ううん。大丈夫だよ。優、寝てな。しっかり休まないと」

と私は、慌てて涙を拭いて、優の頭をポンポンとたたいた。

「俺はもう寝た。陽菜、怖いなら、頼っていいからな。何も心配するなよ」

と優が今度は、私の頭をポンポンとたたくようになでた。

「ありがとう」

私は、彼にそう言ってほほえんだ。そして、彼の携帯の着信音が響いた。

「未来、もうすぐ着くって。今日は、病院近くにできたカフェのロコモコ弁当らしい。未来は、こういうおしゃれなの、好きだよな」

と優は、笑った。

「ロコモコ、おいしいからいいじゃん」

と言って私も笑った。

「亮平も浩介もそろそろ戻ってくるだろ。」

と優が背伸びしながら言った。私は、優に、思わず聞いてしまった。

「浩介、本当に真穂とつながってるのかな・・・」

そう言うと、優は、

「少しは、あいつ信じてみよう。仲間だし。疑ってばかりいると、老けるぞ」

と私のほっぺを優しくつねりながら笑った。私は、それだけで少し、安心できた。

「ただいま~」

と浩介と亮平が戻ってきた。

「今日、ロコモコか・・・。食堂のよりおいしいといいけどな。俺の大学の食堂のロコモコすげえまずいんだよ」

と渋い顔しながら浩介が言った。いつも通りの浩介だった。

「おまえ、ロコモコ食うんだ・・・」

と亮平が言うと、

「俺、食っちゃいけないんかよ~」

と浩介が言って、みんな笑った。浩介が真穂とつながってるわけがない。このとき、そう思った。


―18:36―

「ロコモコ、うまかった~」

と浩介が満足そうに言うと、

「ここのカフェ、すっごく人気でね。チェーン店ではあるんだけど、いつも混んでてロコモコ売り切れるのが早いの。でも、今日病院の近くにあるって知って、行ってみたら、ロコモコが売り切れ寸前だったの。もうラッキーだった!」

と未来がうれしそうに言った。そして、私の方を向いて、

「退院したら、そこのカフェ行こう。あそこ、ロコモコ以外にもケーキとかパンとかあっておいしいの。陽菜の退院祝いにでもいこう!」

と言った。私はその日が楽しみだった。そのとき、誰かの携帯のバイブ音がした。

「ごめん。ちょっと親から電話。出てくるね。」

と浩介が言って、病室を後にした。

「俺、一応着いて行く」

と亮平が後を追った。

「真穂からの電話なのかな・・・」

と未来がぽつりとつぶやいた。

「本当に親だといいな。心配してないってことはないだろうから。」

と優が言った。すると、優の携帯のメッセージの着信音が鳴った。亮平からだった。

「なんて?」

と私が聞くと、

「ボイスメッセージだ。ちょっとイヤホンつけて聞く」

と言って、優は、自分のリュックからイヤホンを取り出して、携帯につけて聞いた。直後に顔が青ざめた。

「何?どうしたの?」

と未来が聞くと、優は、何かを思いついたように立ち上がった。

「陽菜、未来。協力してほしいことがある。」

と優が、言った。私は、その内容聞いたとき、正直、恐怖を感じたけど、そうするしかなかった。でも、恐怖は一瞬で消えた。なぜなら、優が、そばにいるから。そして、亮平に優はメッセージを送った。

「亮平。警察に話をしてほしい。」

と送った。


―19:03― 優side

「未来!!病院の先生呼んでこい。看護師でもいい、早く!!」

俺は、未来にそう叫んだ。未来は、慌てて外に出た。そしてすぐに亮平が呼んでおいた警察と陽菜の担当医と看護師が駆けつけた。

「すみません。こんなことに協力していただいて」

と俺は、謝ると、

「陽菜ちゃんを守るためだ。よく体を張ってくれた」

と担当医の先生にいわれた。

「時間がないので速やかに移動させてあげてください」

と警察の方が看護師に指示した。

「陽菜。大丈夫だからな」

と俺は、心配そうに見つめる陽菜に声をかけた。陽菜は、小さくうなずいた。陽菜が移動した後、後からきた刑事さんの指示に従った。うまくいくかわからない。けど、もうこれしか作戦がなかった。


―19:06―

「大丈夫か?何かあったのか!?」

と亮平と浩介が慌てて病室に戻った。

「大丈夫みたいだ。すこし過呼吸起こしたみたいで、今寝てる。」

と俺は、冷静さを保ちながら話した。今、ここで横たわっているのは、女の刑事さんだからだ。別人と気づかれたら作戦が終わる。

「先生探したけど、どこにもいなくて・・・」

と未来が息を整えながら言った。

「未来、心配かけてごめん。過呼吸起こしただけで、今、寝てる。」

と俺は、言った。

「よかった・・・。はぁ・・・。あたしもなんだか疲れたから寝ようかな。」

と未来はそう言って、ベッドの近くにあったいすをベッドに近づかせて寝た。

「俺らは、休憩室にでも、いるか。起こしたら悪いし。」

と亮平が小声で言った。

「そうだな。レディーたちには、ゆっくり寝てもらおう」

と浩介が言った。俺も、立ち上がり、亮平と浩介と一緒に休憩室に向かった。


―19:09―

「しかし、過呼吸起こすとはなぁ・・・」

と浩介が小さくつぶやいた。

「あいつもいろいろストレスあるんだろ。」

と俺が答えると、

「彼氏だからわかるってか?」

と浩介が俺をにらみながら言った。

「別にそういうわけでは・・・」

と俺が言うと、

「まぁまぁ。大丈夫だったんだからいいじゃないか」

と亮平が言った。

「なぁ。俺らもうどんだけ一緒にいるんだ?」

と浩介が言った。

「もう4年近くいるんじゃないか?優と俺と翔と陽菜は、中学からだからそれ以上だけど。」と亮平が言うと、浩介が鼻で笑って、

「気持ち悪いくらい長くいるんだな。俺ら。」

と言った。そして、

「陽菜が退院したら、三人で飲みにでもいかない?懐かしい高校生活のことでも話しながらさ。大学入ってからばらばらになってあんまりあってなかっただろ?だから行こう。」

と浩介が言った。

「いいね。」

と亮平が言った。

「三人でいるのってもしかして初めてじゃねぇか?いつも、拓真も翔もいたからさ。男子だけでも」

と俺が言うと

「人数多い方が盛り上がるんだけどなあ・・・。あっそういえば、クラスのマドンナいたじゃん?・・・」

と浩介が懐かしい高校生活の話を始めた。そして、しばらくその高校生活の話で盛り上がっていた。


―22:06―

「酒ないのに、こんな時間まで話してたのかよ」

と浩介が笑いながら言った。

「ある意味、すごい」

と俺が言うと、

「そろそろ寝るか」

と亮平が言った。

「先、戻ってて。俺、トイレ行ってくる」

と浩介が言った。

「わかった」

と俺は、返事をし、亮平と病室に戻ることにした。そして、直後に、浩介が誰かと話す声がした。亮平も俺も、足を止めて、耳を澄ました。

「30分後来い。真穂。今度は失敗すんなよ?」

と浩介が話しているのが聞こえた。ここで、俺も亮平も確信が持てた。浩介は、真穂とつながっていたことに。


―22:08― 陽菜side

「陽菜。大丈夫?」

未来が優しい声で私に声をかけてくれた。

「大丈夫だよ。でも、なんだか寝られなくて。未来、優と亮平、殺されないか心配で・・・。」

と私は、涙をこらえながら言うと、

「大丈夫だよ。刑事さんもついてるし・・・。」

そう言って、未来は私の手を握った。でもその手はどこか震えていた。

「あたし、亮平のことが好きなんだ。今でもそう。けど、亮平、きっと彼女いるじゃないかなって思ってたの。高校二年の文化祭の時、亮平に告白している子を見てしまってね。きっとモテるんだろうなって思ってあきらめたの。でも、今、こうやって一緒にいる内にどんどん好きになっていてね。今、想いを伝えずにいたのを後悔してるの。でも、きっと伝える日が来るって信じたいの。でも、怖いんだ・・・。陽菜が、優を心配しているように、あたしも亮平が心配・・・」

と涙を流しながら言った。

「大丈夫だよ。きっと。大丈夫」

私はそう言って、未来の手を強く握り返した。今、未来と私にできるのは、二人の無事を祈るだけ。それしかできないのが悔しい。どうか無事でいてほしい。


―22:39― 優side

俺は、寝るふりをするのに限界が来ていた。いつ頃、真穂が来るのか心配だった。幸い、病室の電気を消すと、真っ暗になるため、刑事だらけなことに、浩介は、気づかなかった。本当は、ここで、寝るよりも今すぐ陽菜のそばについていたい。陽菜の手を握って、一緒に寝ていたい気持ちでいっぱいだった。そんなことを考えていると、静かにドアが開く音がした。真穂が来た。真穂は、静かに、ベッドの方に近づいているのがわかった。そして、

「陽菜。これでアンタも終わりよ。これがあたしの痛みよ。思い知りなさい!!」

と言って、真穂がベッドにナイフを突き刺そうとした瞬間、明かりがつき、

「警察だ!!ナイフを下ろしなさい!!」

という声がした。すぐさま、俺は、起き上がった。亮平も浩介も起き上がっていた。そして、俺の目に、真穂が映っていた。

「あの女が悪いのよ!!あの女が私をめちゃくちゃにしたの!!!」

と真穂は、刑事さんに押さえられながらも叫んでいた。俺は、ふと浩介の顔をみた。その顔は、まるで「使えない」と言っているような顔だった。そして、陽菜は、浩介の顔を見た時、

「陽菜いないじゃない!!あたしをはめたの??一緒に協力してたじゃん!」

と真穂が言って次に何か言おうとした瞬間、

「何言ってんの?真穂。」

と冷たい声で、浩介は、真穂に言った。真穂は、裏切られたことを知って、驚きが隠せなかったのか、何も言えなくなっていた。そして、真穂は、刑事さんに連れて行かれた。

「浩介。おまえにも話がある。」

と亮平が言うと、

「おまえらの考えてる通りだよ。俺が真穂に指示してたんだよ。」

と浩介が言った。

「どういうことだよ・・・・」

と俺が言うと、浩介が俺に歩みより、服を思いっきり両手で握り、

「全部おまえのせいだよ!!優!!おまえのせいだ!!」

と浩介は、今までにないくらい俺に向かって叫んだ。そして、俺を床にたたきつけた。

「おまえが、陽菜とつきあうからだろ。おまえ、金ないくせに、毎日幸せそうに生きててさ。マジで腹が立ったんだよ。それで、おまえに思い知らせようと想って、陽菜に告白したんだよ。でも、陽菜は、俺を選ばず、おまえみたいなくそ野郎を選んだ。だからおまえから全部奪ってやろうと想って、まず、親友の翔をめちゃくちゃにしてやろうと思った。それで、いい駒になったのが、真穂だよ。あいつ、翔に惚れ込んでたからな。降られてたのも知ってた。んで、真穂にこういった。『降られたのは、陽菜がそうしろって言ったからだよ』って。そしたらあいつ、信じてさ~。それでもういっちょ吹き込んだんだよ。『あの女めちゃくちゃにしたければ翔を殺して、陽菜が殺したようにすればいい』って。そしたら本当に殺しちゃってさ。あのときは、笑ったなあ。けど証拠残すのに、必要な陽菜の指紋とかとれなくて未解決になってたわけ。」

笑いながら浩介は、淡々と話していった。その後、翔のお兄さんも殺したのも真穂に指示していたこともすべて。

「ふざけんな!!」

と俺が殴りかかろうとすると

「俺に殴らない方がいいよ。痛い目にあうのは、陽菜だから!!!!」

と俺に目を大きく見開いて言った。すると、上から未来と陽菜の叫び声がした。

「どういうことだ!二人に何するつもりだ!」

と亮平が浩介に言うと、浩介はまた笑って、

「おまえらの作戦は、知ってるよ。盗聴してたし。」

と言った。そして、

「優と陽菜の愛のある会話も全部聞いてたよ。気持ち悪いな、おまえら!」

と言った時、車いすに座ってぐったりしている陽菜とおびえながら車いすを押してる未来がいた。そして、その後ろにナイフを突きつけている拓真がいた。

「拓真、おまえ死んだんじゃないのか!?」

と亮平が驚いた声で言った。

「ばーか。生きてるよ。じゃなきゃ、おまえにも苦しい想いさせられないじゃないか!」

と拓真が言った。

「俺、ずっと、未来が好きだった。けど、未来は、おまえが好きだった。けど、俺は、やっと未来と付き合えるってなったとき、おまえ、未来に誕生日プレゼント渡しただろ。あれで、俺ら別れたんだよ。未来自身があきらめられないからって。おまえがあのとき、誕生日プレゼントなんか渡さなければこんなことには、なってなかったんだ。」

と拓真は亮平に向かって叫んだ。亮平は、今まで見たことない目つきで、拓真を見た。

「俺も、その頃未来が好きだった。つきあってるとは、知らなかった。けど、俺も必死に未来に振り向いてほしくてたまらなかった。今でも好きなんだ。未来が大好きなんだ。だから傷つけないでくれ。」

と言い、頭を下げた。

「じゃあ、お前ら、死んでくれる?苦しみながら死んでくれるか?」

と浩介が言った。俺も、もう決まっていた。亮平も同じだと想う。

「陽菜を傷つけないでくれ。俺は、どうなってもいいから、陽菜だけは傷つけんな!」

と俺は、浩介をにらんだ。すると、浩介は、俺の腹を蹴った。

「未来を傷つけるな!!」

と亮平は、拓真の方へ、向かった。拓真は、思いっきり、亮平の腕をナイフで切った。

「お願い!!やめて!!」

未来がそう叫ぶのが聞こえた。俺は、何も抵抗せずにいたせいか、意識が遠くなっていく。けど、陽菜は、俺を見て、なにか言いたいように見えた。俺は、陽菜を守りたかった。だから俺は、傷ついても、陽菜のことは守る、そう決めていた。そして、もう限界が近づいた頃に刑事さんたちが駆け寄り、拓真と浩介を押さえつけた。俺は、ぼろぼろになった体を無理矢理動かして、陽菜の方に向かった。そして陽菜に抱きついて、

「ごめん。怖かったよな。」

というと、陽菜は、弱々しい声で、

「バカ・・・。」

と言って涙を流した。俺は、精一杯、陽菜に抱きついた。陽菜を傷つけていたのは、俺だった。俺が、陽菜を苦しめていた。


6/24 ―10:08―

俺は、いつの間にか病室のベッドに寝ていた。

「いてっ」

昨日の傷がまだ痛む。だけど、俺は、すぐに向かいたい場所があった。陽菜の元だ。俺は、痛む傷を我慢し、陽菜の病室に向かった。そこには、未来もいた。

「また後でね。亮平のところ行ってくるね。」

と未来が陽菜に言った。そして未来は小さい声で、

「傷、無理しないでよ。」

と言った。ありがとう、と未来に伝えるとほっとした顔で病室を後にした。

「大丈夫か」

俺は、陽菜に近づいて言うと、

「大丈夫。」

と素っ気ない声で答えた。やはり、心配させないためにも抵抗はすべきだったのかと思った。そう考えていると、急に陽菜が優しく俺の頭を陽菜の胸元に寄せてきた。

「もうあんなことしないで。怖かった。優まで死んじゃうのかと心配したんだから!」

と耳元で陽菜が泣きながら言った。俺は、陽菜を抱き寄せた。

「陽菜。ごめんな。俺が傷つけてばかりいたな。守るって言いながら傷つけてたな。本当にごめん」

と俺は、陽菜に泣きついた。

「そんなことないよ!優は、あたしのこと、ちゃんと守ってくれた。だからそばにいて。これからも。」

と陽菜は優しく言った。俺は、我慢できず、陽菜にキスをした。そしてお互いほほえみ合った。


その後、俺も、陽菜も、亮平も無事に退院した。その後は、取り調べも入ったけど、すぐに終わった。未来が、退院祝いに行きたがっていたカフェにも行った。そこで、未来と亮平が付き合うことを聞き、祝った。そして、大学も順調に単位が取れて、四人とも晴れて卒業。そして、陽菜と俺、未来と亮平で同居生活が始まった。卒業した後は、ばたばたしていたが、やっと、陽菜と結婚式が挙げられそうだ。そして、その次に亮平たちも挙げる予定だ。

拓真と浩介と真穂は、その事件以来、連絡はとっていない。今どこで何をしているのかわからない。恨みは持っていたかもしれないが、高校生活を過ごした時間に嘘は、ないと信じている。



「ねぇ、優!奈菜のおむつ替えてあげて」

陽菜が、キッチンからそう言った。俺は、返事をして、奈菜のおむつを替え、かわいい奈菜の顔を見つめた。

「守る人、一人増えたなあ。」

そう俺は言って、ほほえんだ。奈菜もほほえんだ。するとチャイム音がした。

「未来と亮平がきたよ~」

陽菜がうれしそうに玄関に向かった。この幸せを守る。これが今の俺が陽菜にできることだ。

翔、お前も空で見守っててくれよ。


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