3.桐生美鈴
先生が扉を開けると、そこにはサラサラの長い黒髪をした美少女が立っていた。
この学院でもかなり目立つ娘なので、すぐに誰だか分かった、というかクラスメイトだった。
「失礼。こちらに黒崎生徒会長がいると聞いてきたのですが」
「ん、君は確かバレー部の」
「はい。2年A組、桐生美鈴。女子バレー部のキャプテンをしています」
先生に部屋に通されて、桐生美鈴が私の方にやって来る。相変わらず無駄に大きな胸だな、バレーやる時邪魔だろうに、親切な私がもいで軽くしてやろうか。ガルル
170cmの長身に長いサラッサラの黒い髪、女子バレー部のキャプテンをしていて成績も学年トップ3(1位は不動の存在がいるので私と彼女で2位と3位を取り合っている)。
運動系部活の女子の纏め役、文科系の江戸川まゆと並んで九星学院の女王様の一人。(噂では私も入れて3女王などと呼ばれるらしい)
そのうえ銀行の頭取の娘でお嬢様。って何なのそのチートスペックは!!(おまえが言うな! by赤城春)
ふんだ。私だって、お母さんは外資系の研究施設の所長で高給取りだし、お父さんだって格好いいし、成績だって負けてないやい。
……胸はちょっと、ほんのちょっとだけ負けてるけど。
駄目だ。ちょっと落ち込みそう。気をしっかり持て、私は生徒会長なんだから。
「あら、美鈴さん。こんな場所まで、私に何かご用ですか?」
早くどっか行け。私と先生の甘~い一時を邪魔するな。彼女を見る目が自然と鋭くなる。
「冬の文化祭での、バレー部の計画書を持って来たんですわ」
「ああ、それでしたら生徒会室に副会長達が居ませんでしたか?」
「生徒会室に行ったら、白井さんが、まだこちらに居るはずとおっしゃってらしたから。
会長に直接渡した方がいいかと思いまして」
「秋のやつ~っ。何勝手にこの場所教えてんのよ。明日ちゃんとお話し合いしなきゃ!」
私が怒りに震えていると、桐生美鈴がキョロキョロと部屋の中を見ている。
「それにしても、生徒会の顧問は美術の先生でしたのね。初めて知りましたわ。
それにしてもこの部屋って……」
「どうも。生徒会顧問で美術教師の青桐です。ようこそ、美術準備室へ」ニコッ
ちょ、ちょっとー。先生駄目! お願いだから、そんな女に笑顔向けないで。握手なんかしないで。
くぅ~っ。美鈴の奴も、何顔赤くしてんのよ~!! 絶対に先生はあげないわよ!!
「は、はい。改めまして桐生美鈴ですわ」
「桐生さん。折角ここまで来たんだ。お茶でも一杯飲んでいきませんか?」
「せ、先生! 美鈴さんは大変お忙しい方ですから。引き止めては迷惑だと思いますよ!!」
冗談ではない。先生と私の大切な時間を邪魔されてなるものか。早く帰れ!
「いえ。今日は部活も終わってますから、全然問題ありませんわ」
いや、こっちが問題有りまくりだっての。
「珈琲に紅茶。日本茶も有りますけど。どうします?」
「あら、では紅茶をいただけますか。」
その瞬間、私は目の前の胸のでかい女と、この場所を教えた白井秋に静かに殺気を送りつけた。ぐぬぬ……
「って、黒崎会長。なにおっかない顔されてますの?」
生徒会室~白井秋~
「ねぇ、春ちゃん。さっきから寒気がするんだけど、風邪かな?」
「それはたぶん、会長の殺気よ。秋ちゃんが桐生さんに会長の居場所ほいほい教えちゃうから」
「ブルッ、私、明日休んでいいかな?」
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