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23.保健室の誘惑

鉄先生にお姫様抱っこされたまま保健室に向かう。目の前には意外と筋肉質な胸板が、第2ボタンまで開けられたYシャツから覗いている、運動後で上気した先生の体温で頭がクラクラする。

はっ! 私、汗臭く無いかな、それより重くないかな? 170cmと身長がある上に、部活で筋肉付いちゃってるから、結構体重あるのよ私。まずい、こんな事があるなら朝ご飯抜いておくんだったーーーっ!!

先程までの敗戦ムードなんか完全に頭から消し飛び、なんとも言えないもぞもぞとした感情が体中を駆け巡る。


「あ、あの鉄先生、私重くないですか?」


「え、桐生さん細いし軽いですよ。おっ、着きました」


はぅ~、鉄先生。こんな体重5×キロの筋肉女(体脂肪率は低いのよ)を、軽いとおっしゃってくれますか、貴方は神ですか。


ガラ「あれ、芦屋先生いないのかな?」


室内を見渡しても保健医の芦屋先生がいなかったので、勝手にベットに寝かされてしまった。降ろされた時に寂しさを感じるくらい幸せな一時だった、私は今日と言う日を一生忘れないだろう。

頭がぽやぽやして思考能力が奪われる、ぽぉーっとしていると、鉄先生は棚から湿布薬を取り出してきて、私の腕に優しく貼ってくれた、ふぁ~冷たくて気持ちいいです。


「はいっ、蒸しタオル、目が赤くなっちゃてますよ」


ごそごそと何をやってるかと思ったら蒸しタオルですか、なんと言う気配り。先生に渡された蒸しタオルを目に当てながら顔を埋める、恥ずかしくって火照った顔に気持ちいい。


「そういえば、芦屋先生はともかく、他の部員さん達来ませんね。どうしたんだろう、呼んできますね」


「あ、鉄先生、あの私、その、…………ありがとうございます」


体育館に戻ろうとする、先生を呼び止めてしまった。思わず、好きです。と言いそうになるが、途中で試合に負けた事を思い出してしまって、お礼を言うだけになってしまった。


「どういたしまして、それに久しぶりに身体動かせて僕も楽しかったですよ」


「そうそう、桐生さん。とっておきのダージリンが有るんです。また今度、飲みにいらして下さいね」ニコッ


あぅ~、鉄先生。なぜ貴方は、私をこれほど悩ませるのですか、行きたいと思う気持ちと、もう行ってはいけないと思う気持ちが頭の中でせめぎ合って、あ~もぉ~~、どうにでもなれ、開き直るしかないわ!!

鉄先生から誘われたんですもの、問題ありませんわよね。


「喜んで、伺いますわ!!」


「はい、お待ちしてますね」


ガラッ。


「うわっ! ちょっと押さないで!」


鉄先生がドアを開けると雪崩のように転がり込んでくる部員達、どうやら廊下で聞き耳を立てていたらしい。


「貴女達~っ!」


「や、やぁ、美鈴大丈夫。いや~心配で来たんだけど邪魔しちゃいけないかなぁ~と思って」

「わ、私は、先輩達に連れられて。決して、中で何やってるのかなぁなんて思って覗いてないです!」

「先生、私達も怪我したらお姫様抱っこで運んでくれますか!」




「はは、部員さん達も来たことですし、僕はもう戻りますね」



去っていく鉄先生を未練がましく目で追っていると、部員達がニヤニヤとした視線を向けてくる。

な、なによ、その生暖かい視線は。


副部長の住之江が近づいてきて、私の耳元で囁く。


「さぁ~て、美鈴。あの先生とどういう関係か、洗いざらい吐いてもらおうか!」


うぐっ、こ、これは逃げられないかも…………。








その頃、国道18号線を凄まじい速度で走行する、タンデム走行のバイクが居た。


「竜ちゃん、急げ!! 今日中に明日菜ちゃんの動画を編集してアップするのだ!」


「ちょっと今日子さん、後ろで暴れないで。コケちゃう、コケちゃう!」


「へへへ、バレーやってる明日菜ちゃん、かっこ可愛いかったね、さすが私の娘だね~」


「でも、世界配信なんてしたら、また、明日菜ちゃんに怒られますよ」


「何言ってるんだ竜ちゃん、8Kのスーパーハイビジョンカメラも超小型ドローンも全ては我が子を撮るために存在しているんだ、それを全世界に自慢して何が悪い!」


「う~ん、じゃあ、しょうがないか、急ぐよ、しっかり捕まってて」グイッ


さらにアクセルを開けたそのバイクは、時速200kmで松代方面に消えていく。

ライダーは黒埼明日菜の両親だった、親バカ全開である。

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