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不死の彼女の望むもの(7)

 そう。確認するまでもなく、死んでいた。

 肉の魔女を打倒することに、成功した。


 だというのに。

 どうしてこうも、胸が騒ぐのか。


「しかし、何だ……?『私の子供に手出しするな』、とは」

「焼失! 死体だ! 焼け!」


 魔女の死体が僅かに蠢いたのを見て、標識が声を上げる。

 ほとんど同時に、焼失が炎を放つ。

 存在していた事実ごと、この世から焼失させる、虚空蔵追放ダムナディオ・メモリアエの炎。

 全てを焼き払い、決して逃れることのできないはずの炎の内から現れたのは。


「だめだよ。お母様が言ったでしょう。『私の子供に手出しするな』って」


 年嵩は七つに満たない程の少女。

 黒天鵞絨のように深い黒髪に虹の光沢を備え、切れ長の瞳は夜空のように黒く輝き。

 濃桜色の唇からは艶かしいというよりは、愛らしい色気が漂っている。

 身体には一糸まとわず、女性的な膨らみこそ見られないものの、幼児らしい、柔らかい輪郭が露わになっている。

 その肌は吸い込まれるほどに白く、きめ細かい。

 艶然と微笑んで見せるその表情は、彼女の『母』とまるで同一のものだった。


「ああ、お母様。生まれた瞬間生き別れてしまうなんて。けれど、私がこうしてここにいるもの。無駄ではなかったわ」


 よよと泣き崩れるような素振りで、そんなことを言ってのける少女。


「どうして、お前が生きている。肉の魔女……!」

「いいえ。私はお母様の娘ですわ」


 泣いていたのはどうしたのか、そう言って微笑みかける少女。


「母の腹から出てきた私が、お母様の娘でなくてなんだというのですか」

「生まれたばかりで、流暢に言葉を交わす赤子がいるか…!」

「それでも『世界』を騙すことはできた」


 少女は笑う。

 思惑通りに踊った魔法使いたちを。

 次の瞬間、全員が魔法を使っていた。

 顕が結界の斬撃を放ち、月彦と神一が、幻惑を試み、標識は白棒で殴りかかり、焼失が炎を放っていた。


 そのどれもが、少女に届かない。


 少女の薄い笑みを、止めることさえできなかった。


「次の夏。来たる最大の争奪戦。これで私が負ける未来は、大幅に減じた」

「争奪戦だと」


 絞り出すようにして、月彦が問いを投げかける。


「そう。古部の大霊脈。『井戸』を巡る争奪戦。その行方が揺蕩っているから、未来視たちはその先を視ることができない」


 くるくると回り、ステップを踏みながら、少女は続ける。


「かの大霊脈を抑えるということ……それは文字通り、世界の全てを手に入れるということに等しいわ。私が私として、永遠に在り続けるためには、絶対に負けられない」


 そして、ぴたりと止まって、指をさした。


「でもあなた達は、もうそこで私と戦うことさえできないの」


 上機嫌で、鼻歌さえ歌いながら、少女は微笑んだ。


「もう用はないから帰っていいよ。ばいばい」

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