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不死の彼女の望むもの(5)

 羽原アイリの大立ち回りが始まるや否や、月彦は即座に焼失と標識に言霊を飛ばした。


『心配ない。傷が開いただけだ。すぐ止まる』

『脂汗まみれの奴のいう台詞じゃねえな。寝てろ。後は俺が焼くから』

『随分と自信があるようだね。そんなに君の炎の魔法は強力なのかい』

『火が回れば焼き消してやる。後は足止めだけだ』

『それなら私が請け負う』


 顕が懐から碁石を取り出した。


『結界操作は任せてくれ。火が届いた瞬間、結界を解除すればいいんだろう?』

『必要ない。奴の動きを止めてくれりゃあ、結界ごと焼いてやる』


 焼失の言葉に、顕が言い淀んだ。

 月彦が、代わりに言葉を継ぐ。


『…それは。君の魔法は、天仙道の結界使い、曲輪木顕の結界を、力押しで破れる、ということかい』

虚空蔵追放ダムナディオ・メモリアエ。俺の火はそれだ』


 天仙道の三人は絶句する。


『あ、あり得ないだろう! 虚空蔵追放ダムナディオ・メモリアエだと? アカシック・レコード干渉! そんなもの、おとぎ話の中の大魔法だ!』

『神一。無駄口を叩くな。炎使い。その言葉、嘘偽りはないな』

『ない』


 焼失の言葉に嘘がないことは、言霊使いの二人には確かに感じられた。

 しかしその言葉は、それでも、信じられるようなものではなかった。


『確認したのだろう? ならばそれを前提にして、動く』


 押し黙る朽網の二人を焚き付けるように、顕が言葉を継いだ。


『魔女の動きを止めるのは私がやろう。だが、どうやって接近する?』

『炎を、飛ばせばいい。俺の魔法で』


 青白い顔の標識が、そう提案する。


『いけるのか?』

『できる』

『じゃあそれで行こうや』


 話を纏めて、焼失は立ち上がった。

 羽原アイリの、悲哀の絶叫と共に。

 そして、『糸電話』に意識を向ける。


『郵便屋。今のはお前のミスだぞ』

『…あの子、魔法を打ち消してた。『解呪』の羽原だよ。僕の索敵も、効かなかったんだ』

『言い訳は聞かねえ。ミスは取り戻せ』


 標識にさえ届かない、二人だけの会話を一方的に終えて。

 標識と共に、無言で奇襲の準備を始めた。

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