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武能祭、2日目にて・・・ 2

 すべての2回戦が終了して、昼休憩的なものを挟さんだ後、3回戦目が始まった。


 戦いは順調に行われて、4回戦に進出したものは今の所は、Bブロックは海堂、Aブロックは、かぐやのみで、あとは3回戦がまだ行われていない刀牙と筵が残っている感じであった。


 ちなみにスチュワートは刀牙の次の対戦相手に、聖は海道に負けて敗退している状態である。


 そして同時に、筵というイレギュラーな出場者に対する不満は着々と増えていて、今までは理事長の嫌々の努力と、栖の無言の圧力により抑えられていたが、関東支部以外の全支部の理事長の合意による抗議がそろそろ起きるのではないかと予測された。


 そんな状況の中でも時間は過ぎていき、筵と一星の試合となった。


 本田(ほんでん)家と本田(ほんだ)家の戦いということもあり、それなりに注目されていて観客もそれなりに入っていたが、それでも同時刻に行われている日室刀牙と謎の白髪で赤い目の少女の戦いに注目が集まっているようで空席がかなり目立っていた。


 そして、最前列には恒例のようにZクラス全員が大して興味無さそうに試合を観戦していたのだが、何処を探しても一星側の応援は見つける事が出来なかった。


 そんな中リングでは、黒髪黒目の同じような体型をした2人の男性がレフェリーを挟んで向かい合って立っていた。


 しかしよく似ている2人の印象は大きく違っていて、例えるなら、1人は草原のような爽やかな印象でもう1人は沼地のような印象であった。


 「胸のつっかえは取れたかい?」


 筵が一星に向かって問いかける。


 「いやまだ取れていない。いざとなったら俺は君を塵一つ残さず消し去るしかなくなる。出来ればそうなる前に降参してくれ」


 「怖いことを言うね?塵一つ残らずか〜、そんな事をされた事が無いから復活できるかは微妙だね。それが比喩でないのなら少し危なそうだ」


 筵は一星に向かってあの半笑いを向けると、サバイバルナイフを構える。


 それを見た一星も、自身の日本刀のような形の剣を構えた。


 「いざ、尋常に・・・はじめ!!」


 2人の様子を交互に見たレフェリーがコールをして色々な思惑が逆巻く3回戦が開始された。



 



 開始直後、お互いが一歩づつバックステップで下がって、お互いの出方を伺う形になった。

 

 「なんだか全く隙がない気がするね?君の構え」


 「そういう君は、隙だらけ過ぎて逆に怖いよ。まるで一般人を相手しているみたいだ」


 「へえ、でもその認識は間違いではないよ。僕は殆ど剣の鍛錬なんてした事がないからね。でも安易に斬り掛かるのが、ダメなのは今までの試合を見て分かる通りだよ?」


 「まあ、それでもこちらは行くしかないからね・・・」


 そう言うと一星は能力を発動させ、オーラの様なものを纏う。


 「戦士の変速機構(ソルジャーズハイ)、"壱ノ太刀"」


 すると一星は能力により加速して、一瞬により間合いを詰め、筵に斬り掛かる。


 しかし、筵はその一撃をサバイバルナイフでギリギリ受け止める。


 「・・・・っ!!」


 「死に対する恐怖を克服したら、素人でも、思いの外、冷静に対応できるんだよ?これが名付けて、死技、死に(もの)の物狂い」

 

 筵はそう言うと、受け止めた日本刀をサバイバルナイフで押し退けて、斬り掛かるがその攻撃は簡単にかわされて、先程までではないが少し距離を置いた状態になる。


 「なるほど"壱ノ太刀"では互角以上に立ち回られてしまうという事か、なら・・・」


 一星は目を瞑り集中力を高める。


 「戦士の変速機構(ソルジャーズハイ)、"弐ノ太刀"」


 一星が再度、能力を発動させると、日本刀を持った腕の手から肩にかけてオーラが集まり、腕の部分のみに鎧の様なものを具現化させた。


 壱ノ太刀で全体的な肉体強化、弐ノ太刀で腕のみに鎧を纏った。筵はこの事実により、一星の能力が大体どういうモノなのか理解した。


 「いきなり本気を出さないのは、時間稼ぎをしているのか、そういう手順なのかどっちだい?」


 「まあどっちもかな」


 一星は、刀を構えて呼吸を整えると、先程よりも早い速度で斬撃を繰り出す。


 先程の攻撃は何とか受けることが出来たが、遥かに速度が上がっている一星の斬撃の全てに対応することが出来ずに、何回は攻撃を受けてしまう。


 さらに一星も筵の能力を研究しているようで、筵が捨て身の攻撃に移っても対応できる様な間合いを守っている。


 埒が明かないまま、数分そのような攻防が続く、その時の一星の表情がだんだん暗くなっているのが分かった。


 その攻防が終わると少しの間が空いた。筵は時々受けてしまった切り傷程度の怪我を一度死んだ後、復活する事によって回復する。


 「それが君の能力か、やはり強力だな。・・・しかし、すまない、そろそろ時間だ。俺は俺の守るものの為に君を本気で消しに行く。出来れば、ここで負けを認めてくれ」 


 「・・・悪いけどそれは出来ない。そして自分の大切な人の為なら他人を犠牲にしてもいい、という君の狂った思想に敬意を評して、君にこの言葉を贈るよ"殺れるものなら殺ってみやがれ"とね」

 

 筵は自分を棚に上げ、しかし、自分に類似する思想を持つ一星をたてる為に、悪役が殺される直前に言うような、言うなれば死亡フラグの様な言葉を贈った。


 2人は友情とは少し違うが、それに近い感情で向かい合っていると、その瞬間、すこし離れたAグループの会場から爆音が響き、大量の煙が立ち込めていて、緊急事態を知らせる放送が、少し離れた所から聞こえてきた。


 筵たちのBグループの会場の客たちもそちら側に意識が向いていたが筵と一星はあまり気にしている様子は無かった。


 「きっと向こうの会場では、誰かが世界を美少女のおまけ付きで救っている真っ最中何だろうね。でもそんな事は関係ない。あんなのは無視して、僕達はとても利己的で個人的な戦いを続けようじゃないか」


 筵の満面の半笑いに対して、一星も笑って返して見せた。

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