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武能祭、2日目にて・・・ 1

 武能祭の日程は、1日目に1回戦、2日目に2、3回戦、3日目に4回戦と準決勝、そして最終日に決勝というスケジュールになっている。


 最終日は決勝のみのため、模擬店を開くのは、1、2、3日目の3日間の予定だったのだが、初日の思わぬ盛況により、用意した食材もほぼ底をついてしまって、今日の午前中で急遽営業終了となりそうな感じであった。


 「筵先輩はそろそろ戦ってますね。応援はいいんですか?」


 「いらんいらん、一応、れん子が行っているし、あいつの戦い見てても、つまんねーだけだろ?、それよりもあたしらはさっさと完売しちまおうぜ。・・・それにしてもよー、まさかこんなに利益が出るとはなあ」


 (ふち)と梨理はZクラスの屋台にて、安住(アンジュ)のレシピを元にハンバーガーを作って客に提供していた。


 「梨理先輩、うちはでっかいテレビをZクラスに設置したいです。できればスピーカーも」


 2人の会話を聞いていたカトリーナはポテトを揚げながらキラキラした目を梨理に向け、さらに話し続ける。


 「筵先輩が優勝したらその賞金もありますし、いけますよね」


 カトリーナはZクラスにそれらを設置する未来を想像して嬉しそうに言ったが、それを聞いた、レジ担当の譜緒流手(フォルテ)が苦笑を浮かべる。


 「あ〜、それは多分無理だね。筵が"嫌な予感がするから早めに売り切っておいて"って言ってたから」


 「でもそれって予感ですよね?」


 譜緒流手の言葉に対して、カトリーナは再び疑問を投げかける。


 「いや、それは違うぞカトリーナ。アイツの嫌な予感は、もはや嫌な予言なんだよ。・・・はあ、これは本格的に早めに売った方がいいな。ちょっと客寄せを湖畔君と代わって、またサブリミってくるわ」


 譜緒流手に代わり、事の重大さをカトリーナに伝えた梨理は、一旦、淵にその場を任せて、昨日と同様に客寄せに向かうため模擬店を出ていく。


 「程々にしてくださいよ」


 「おうよ、まあ任せておきな」


 淵の忠告を流し気味に聞いた梨理は、鋭く輝く歯を見せながら少し含みのある満面の笑みを浮かべた。それから店の少し離れた所で客寄せをしている湖畔に持ち場を代わってもらう交渉をした後、男らしい背中を向けながら歩き去っていった。

 

 




 2回戦目を終えた筵はリングから退場する通路を、途中で待っていたれん子と共に歩いていた。


 「いや〜、それにしても敵さんも中々頑張ったねー、筵の、死技、"死が2人を切り裂くまで"が決まっても立ち上がってきたからね〜」


 「ああ、僕もあれには焦ったね。だから仕方なく、"死より辛い苦しみを"を使わざる負えなかったよ」


 「でもまあ、"揺り籠から墓場へ"は使わなかったね。あれはよく自重したね」


 「おいおい、それを使ったら流石に人間として終わっちゃうよ。冗談キツイな〜、・・・でもまあ、これで無事に3回戦へ進出だね。もしも優勝賞金を手に入れたらどうする?皆で旅行にでも行こうか?」


 筵はいつもの半笑いを浮かべ、れん子と楽しそうに会話をしながら一旦、Zクラスの模擬店に向かっていた。


 すると前方から次の試合の出場者と思われる人影が歩いてくるのが見えた。


 その顔は何か違うことで頭がいっぱいと言った感じで、どこか遠い目をしていた。


 「本田(ほんだ)君、大丈夫かい?なにか思い詰めているような顔だけど」


 「ああ、本田(ほんでん)家の、・・・いや特に何なんでもない。ただ、理由は言えないが君に先に謝っておく、すまない」


 筵は一星の雰囲気から、ただならぬ様子を感じとった。筵は初日の夜にあの変身能力者の少女から、淵たちを誘拐しようとした理由を聞き出していたからである。


 それはZクラスの生徒を誘拐し、筵を不戦敗にさせることであった。そして当初、変身能力者は一星の姿をとっていた。


 筵にもその意味のすべては分からなかったが、変身能力者は一星に罪を擦り付けようとしたと考えるのが自然で、そいつが一星の味方である可能性は低くかった。


 そして、一星に対しても同様の脅しをしていることは十分に想像がついた。つまり筵と一星、両方に恨みのある者のが黒幕という事になる。


 「理由は詳しくは知らないけど、謝る必要なんてないよ。肝心な時に手段を選んでいるような人こそ、僕は軽蔑するからね。・・・ただ、だからって僕もそう簡単に負けてあげる気は無いからそのつもりでいて欲しいかな」


 筵の曇の無い曇りきった目を見た、一星は緊張感を失い、小さく笑った。


 「ああ、肝に銘じておくよ。・・・まあ、俺の仲間も動いてくれているから直に解決すると思う。・・・あと違う理由でも謝罪させて欲しい。俺は君の事をねじ曲がった奴だと誤解していた。君はただ俺たちとは見ている方向が違っただけだったんだな」


 一星はそう言うと筵たちの横を通ってリングの方へと向かって歩き出した。


 そして筵たちから数m、離れた所で再び立ち止まる。


 「やはり流石は根城さんの息子だ。君と真剣勝負で戦いたいと心底、思ったよ。だから少しだけ待っていてくれ・・・」


 「ああ、ジャンクフードでも食べながら高みの見物をさせてもらうよ」

 

 一星の問に筵が答えると、一星は先程よりも少しだけ堂々と試合会場に向かっていった。


 そして、多少の苦戦はあったものの無事に2回戦を突破した一星は午後の試合にて筵と戦うことになった。

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