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武能祭、初日にて・・・ 4

 「なんと言うか、あれじゃの〜、試合に勝って勝負に負けるという言葉の典型じゃのう?」


 「ええ、子供のころのことは覚えていませんが、ここ数年は・・・具体的にはこの能力に目覚めてから、完全勝利などしたことが無いですよ?おかげさまで(いさか)いに完全勝利など無いという涅槃(ねはん)を得ることができました」


 戦いに勝利した筵は自分への歓声ではない歓声を聴きながらリングを去り、外へ向かう通路を歩いていると、空中で上下逆転した状態で待っていた古巣が声をかけてくる。


 「彼女に僕の能力についてもう少し教えてあげても良かったのではないですか?」


 「筵や、わっちは子孫には平等に接するつもりじゃ、そんな事はせんよ。・・・常に"どっちも負けるな!"と言う心境でおるぞ。出来れば2人共に一等賞を上げたい気分じゃの〜」


 楽しそうに空中を漂いながら筵の質問に答え、更に言葉を続ける。


 「しかし一星のあの行動は頂けないの〜、少々無粋というものじゃな」


 古巣は先程の試合の事を思い出しながら語った。


 「いや、僕としては彼にとても感謝していますよ。危うく妹さんを撃ち殺してしまう所でしたからね」


 「おうそうか?筵が良いならわっちは気にせんがな。・・・まあ順調に行けばあと2回で一星と当たることになるからのう、たのしみじゃな〜」


 「ええ、色々と・・・確かめなくてはならない事もありますしね」


 半笑いから少し真面目な表情に変わった筵はまだ上下逆転した状態で浮いている古巣の横を通り過ぎると出口の方へと歩いていき、真の目的である模擬店の手伝いに向かった。


 


 

 「全然売れねーな、あたし能力使うか?」


 梨理はZクラスの模擬店であるハンバーガー屋のレジの様なところに寄っかかりながら呟く。


 今、この時間には梨理、れん子、カトリーナと筵が店番をしていて他は、呼び込みに出ていた。


 「ダメでしょ、それは。なんか倫理的に」


 梨理の犯罪になりかねない行動をれん子が阻止する。しかし、梨理が焦るのも無理はなく、2時間位販売を行っているが売れたのは1桁程であった。


 (あらかじ)めこのようなことになるのは見込んで食材を少なめに用意していたのたが、流石に売れなさ過ぎでこのままではまあまあの赤字であった。


 「そうだよ、梨理ちゃん無理やり買わせるのは最後の手段だよ」


 「最後もダメでしょ!?」


 筵の発言にれん子が再びツッコミを入れる。


 「でも実際どうします?なにか対策あるんですか?」


 カトリーナが模擬店の中の椅子に腰掛けながら質問をする。


 「ふふふ、この学園の影のフィクサー、筵先輩に考えがあるよ」


 筵は不敵な笑みを浮かべると一旦全員を模擬店に集めた。





 「取り敢えず適材適所で行こう、まず接客や料理はちびっ子枠がいいと思ったので、急遽来てもらった安住(アンジュ)ちゃん、アジト、愛巣ちゃん、あとはまあ、譜緒流手(フォルテ)ちゃんとかに任せます」


 筵はZクラスプラス未来の子供たちの合計9人に向けて言った。担当を言われた子供たちは元気よく返事をしたが、もう1人のちびっ子からは返事が無い。


 「オレ、こっそりとちびっ子枠に振り分けられた!?」

 

 「いや結構しっかり目に包み隠さず振り分けたよ。それに監督は必要だろ?火は危ないからね。僕も裏方で料理の仕込みとかをするけど、僕が見える所に居ると売上下がると思うから基本は譜緒流手ちゃんに任せるよ」


 筵は軽く抗議してくる譜緒流手を適当な理由をつけ、子供店長に任命する。


 「そして、湖畔(こはん)にはマスコット枠として店の前でメインの客引きをお願いするよ」


 「・・・は、はい」


 湖畔は筵の頼みを少し恥ずかしそうな顔で承諾する。


 「あとはれん子ちゃん、(ふち)ちゃんチームと梨理ちゃんカトちゃんチームで少し遠くまで行って宣伝をお願いするよ。こんな感じかな?」


 役割を振り分けられた皆は、それを承知してそれぞれの持ち場に移る、そんな中、筵は梨理とカトリーナを呼び止め暗躍枠に任命する為に耳打ちをする。


 「れん子先輩、今、筵先輩が何か耳打ちしてました」


 「筵まさか、さっきの実行する気?」


 しかしその行為は淵とれん子にバレてしまう。


 「し、しまった、隔離枠にバレてしまった!!」


 「か、隔離枠!?ひどい!!」


 れん子は筵の振り分けに本気で落ち込む様子を見せる。そして、筵の暗躍は白日の元に晒されたのだが、その内容は"ハンバーガーを食べないと死ぬ"的な脅しではなく、ハンバーガーが無性に食べたくなるような、いわゆるサブリミナル効果の様なものを狙った暗示をかけるもので、その位ならぎりぎりセーフと言う判断がれん子の独断と偏見下されたのだった。

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