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武能祭、初日にて・・・ 3

 「貴方はなぜこの大会に出場したのですか?目的は何ですか?賞金ですか?名誉ですか?」


 「どっちも違うなー、僕はただ大好きな子達に格好良いところを見せてアピールしたいだけだよ?」


 お互いの武器をぶつけ合いながら、庵が訪ねると筵は恥ずかしいセリフを臆面も無く言い放った。


 「そんなくだらないことのために・・・」


 「おっと、それは聞き捨てならないな・・・、1つだけ男心が何も分かっていない君にいい事を教えてあげるよ。男がこんな大舞台で頑張って戦う理由なんて、好きな子によく思われたいということ以外に無いんだよ?君のお兄ちゃんだって本当は異国から来た留学生のお姫様のために戦っているのかもしれないよ?」


 喋りながら何回か攻防を繰り返した両者はお互いに距離を取った。


 「兄さんはそんな低俗な人じゃない!!」


 「低俗ときたか、全ての動物が形を変えて行う重要な行動を君は低俗といったのかい?ある種は羽根の美しさを競い、またある種は首をぶつけ合う、そんな動物の神聖なる儀式を。・・・では高尚な君の高尚で高貴で高次元な目的を聞かせて欲しいな〜、まさか自分たちの存在を認めさせるとか言う、子供のワガママのような事では無いだろうからね」


 「・・・貴方はどこまで人の事をおちょくれば気が済むんですか?」


 庵は怒りを帯びた表情で筵を睨むと、冷気ような冷たい空気がその場を包んだ。因みにこれは比喩表現などでは無く紛れもない事実でその場の温度が確実に数度下がっていた。


 「いやいやゴメンよ。君が余りにもおごり高ぶるもんだから、ついからかってしまったよ」


 筵は庵に対して気持ちのこもっていない謝罪をした後、少し真面目な顔に変わる。


 「さあそろそろ本気を出したらどうだい?確か君には月下氷人っていう二つ名があるんじゃなかったっけ?」

 

 「そんな二つ名は無い、本当に適当な人ね。・・・ただそれでも私が氷を操る能力者と言う事だけは調べて来たようだけど」


 「まあね、そんな君も僕の能力について研究して来たのかな?自分で言うのもなんだけど一筋縄ではいかない、かなり面倒臭い能力だよ?」


 「ええ、ご心配なく、永久凍土に沈めてあげる」

 

 庵はそう言うとその場の気温が更に下がり。庵の周りに大き目の氷柱(つらら)のようなものが現れ、筵に向って射出された。


 



 「相手さんのあの感じは、筵先輩を氷の中に閉じ込めれば何とかなると考えていそうですね」


 淵は観客席から試合を見ながら呟く。

 

 「まあ、筵先輩の能力は学園のデータベースにも詳しい所まで載っていないですからね」


 続いて湖畔が淵の呟きに答えた。


 「そうなんだよね、残念ながら、筵先輩の安定死考は密閉された空間に閉じ込めた位で、攻略できようなものでは無いんだよね〜。あれはもっとウザくて手のつけようが無い、まるで、この世界で筵先輩が()まない為に作られたような能力だからね」


 最後にもう1人の1年生であるカトリーナが筵の能力について説明をして、少しのドヤ顔を浮かべた。




 

 「なっ・・・」


 氷柱での攻撃を初めてから数分、庵は焦っていた。


 リングの至るところに相手を氷漬けにする類のトラップを仕掛けいた庵は、氷柱の攻撃により誘導して筵にそれを踏ませようとしているのだが、筵は何故かそこだけを的確に踏まなかったからである。


 いや正確に言うなら、"しっかりと踏まない"であり、完全に標的を捉えていない状態で発動するトラップは筵を完全に氷漬けにするには至らず、一部を凍らせるものの直ぐに復活されてしまう。


 庵はただいたずらに体力が消耗されていた。それに引きかえ、走り回って庵の攻撃を避けているはずの筵は疲れた様子を一切見せていない。


 「ちょこまかと・・・」


 「ちょこまかとって、女の子がいう言葉じゃないな〜」


 すると筵はおもむろに懐から何かを取り出した。それは拳銃であった。


 筵はその銃を庵に向けて数発、発砲する。


 恐らく銃など撃ち慣れていない筵の銃弾はなにもしなくてもの庵に当たることはなかったのだろうが庵は巨大な氷柱を地面から出現させてそれを防御する。


 「拳銃?やる気あるんですか?」


 「あるよ。そして、もうそろそろこの戦いも君の負けで終わるんじゃないかな?」


 


 「・・・分かりました。そろそろ決めましょう。私の本気を見せます」


 庵はそう言うと武器をしまって、何やら集中している様子で目を瞑る。するとリング上の地面から氷柱が大量に出現する。


 「・・・ほらね。これで決まりそうだよ」


 筵は全く避ける様子もなく、ただその本気の技が完成するまで立ち尽くした。


 



 「はあ・・・はあ・・」


 大量の氷柱で氷の城の様になったリングの上で膝に手を置き、肩で息をしている庵の姿があった。


 「私の勝ちですね・・・審判さんコールを」


 庵はリング外に避けていた審判に向って言った。


 庵の本気に一瞬唖然としていた審判だったが、すぐにハッとして勝者のコールをしようとする。




 しかしその時、大量の氷柱の奥の方から"あの光"が現れて庵の立っている場所よりも少し高い所に留り、ふわふわと浮いた状態になった。


 そして、その光はやがて人の形に変わり、発光が治まると例の如くあの男が姿を表した。


 「さあ、そろそろ降参する事を進めるよ」


 筵はその場で再び拳銃を構え、いつもの半笑いを庵に向けた。

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