嵐の後の平常授業
「また、このパターンかよ。デジャブ?」
梨理は漫画をパラパラと捲りながら暇そうに呟く。
今は第7、第8の魔王型ハーベストを退いてから2日たった、平日の午後で、例によってほかのクラスの生徒達は魔王型ハーベスト討伐の報酬かなにかで特別休暇が与えられていた。
しかしZクラスはというと、いつも通りの平常授業に着手していた。
筵たちも一応、第8の魔王型ハーベストを退けたのだが、方法がただのゲームだったため、そこまで評価されず、本当はそうでも無いにも関わらず、宇宙主義は"頭がちょっと弱いハーベストだった"と言う認識で終わってしまった。
「私たちある意味で地球を救ったのにね。宇宙主義ちゃんの戦闘能力がどれくらいだったかは分からないけど」
れん子は席についた状態で頬杖を付きながら呟くと、すかさず眠りについていたカトリーナがはね起きてそれに反応する。
「そうですよ。もしかしたら姉さんたちが倒したのより、強かったかもしれないんですよ?なんで特別休暇無しなんですか?そりゃあうちだって、普段なら諦めますよ。でも今回は大手柄の筈ですよね」
「まあまあカトリーナさん。ぼくたち来てるだけで、授業してないですし、いいじゃないですか?」
湖畔は歴史の本を読みながらカトリーナをなだめる。
「家でゴロゴロしながらネトゲしたんですようちは・・・」
そう言うとカトリーナは再び机の上にある枕に顔を埋め呻き出す。
それを微笑ましそうに"苦笑い"しながら譜緒流手が眺める。譜緒流手の耳にはいつもの暇つぶしアイテムのイヤホンが片方だけ刺さっている。
「ところでさあ、愛巣とかってどうすんの?確か夏休み中で来てるんだよね?」
「それなら、期間を伸ばしたらしいよ。過去にホームステイ何てすごい時代だよね」
筵は譜緒流手の質問に答える。
それからしばしの沈黙が訪れる。数十秒たった後、淵が宇宙主義と筵の戦いについて思い出しながら語り出した。
「それにしても筵先輩のあの粘土細工は気持ち悪かったですね。精巧に作られすぎてて逆に寒気がしました」
淵は読んでいる本を閉じながら少し身体を震わせると、筵と湖畔以外の全員がそれに同意する。
「確かに怖かったねあれは」
「別に作るのはいいけど、一つだけ言うならオレはもう少し胸でかいよ」
「そんなことより単純に筵があれを作くろうと思ったことに驚きだろ?」
「そうですね。うちは絶対にもっと変なの作ると思ってましたよ」
Zクラスの女子たちは筵の普通だけれど、意外だった作品に対して中傷の言葉をぶつける。
勝負がついた後、すぐにそれぞれによって持ち去られてしまったその作品は筵の心にとって、筵自身の積み重ねていた砂山から砂を1粒取り除くようなものであったが、月並みな表現をするならそれは大きな前進であった。