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宇宙主義と平常授業 4

 「私の負けです。完敗だよ」


 れん子と宇宙主義(コスモポリタン)のファッションセンス対決は先程とは打って変わって悪い意味でかなり高次元の戦いとなっていて、常人にはどちらが良いのか分からなかったが当事者のれん子が負けを認めているため、どうやらこちら側の敗北なのだと思われた。


 「勝負内容はともかく着眼点は悪くないね。でもあの方法ではやはり知識量の勝る、敵が有利になってしまう」


 (むしろ)はれん子と宇宙主義の戦いを分析しながら呟く。


 「筵先輩、冷静に分析している暇ですか?どうするんです、あと3人ですよ!?」


 (ふち)が慌てた様子で筵に話しかける。


 そう淵の言う通り、残りの挑戦権のある者は譜緒流手(フォルテ)、淵、筵の3人になってしまった。


 「よし、じゃあ次はオレがいくわ。お題はコインの裏表を当てるゲームにしよう。ただし裏表の宣言はコイントスする前に行う」 


 譜緒流手は財布から500円玉を取り出してつつ言った。


 宇宙主義に勝てそうな条件が思い浮かばなかった譜緒流手は二択の運に身をまかせる事にしたようだ。


 そして宇宙主義にコイントスの回転から裏表がバレないように最初に答えを出しておく方式を選んだ。


 「いいでしょう。しかし不正が無いように我々の答えを伏せて、そうですね・・・ではあなたがコイントスして下さい」


 宇宙主義はゲームの内容に同意しつつ、コイントス係として湖畔を指名した。


 指名を受けた湖畔は慌てて敗者席から立ち上がって譜緒流手から500円玉を受け取った。


 続いて譜緒流手と宇宙主義は紙に裏か表という言葉を書き裏向きで机の上にセットする。


 「では行きますよ、はい!!」


 湖畔は可愛らしい掛け声と共にコインを指で弾いた。コインはわりかし高い所まで上昇している上、結構な回転をしていてこの段階では到底、裏表の判断などつかなかった。

 

 しかし宇宙主義が手を前方に向けると、その手がサイコガンのように変化してそのまま、湖畔の頭上、コインから少し離れた所に向けてレーザーを発射した。


 




 「油断してたよ。どう言うつもりかな戦闘はしない筈だよね」


 普段の半笑いが消えた筵はサバイバルナイフを取り出し、一瞬で宇宙主義の元に近づき、宇宙主義の首元にナイフをあてがった。


 「勘違いしないでほしいですね。床のコインを見てください」


 宇宙主義の発砲に驚いた湖畔はコインをキャッチするのを忘れ、コインは床に落ちていて、向きは表を示していた。


 そして宇宙主義は自分の紙を反転させると、そこには表という文字が書かれていた。


 「ただ、自分の書いた方にするためにコインの動きを微調整して、同時に彼を驚かせてコインに触れさせない様にしただけですよ?反則では無いですよね。そちらも能力を使ってましたし。・・・そして、ついでに言うならこの勝負は私の勝ちです。何故ならそちらのチームの方が選んだ方とは逆を選びましたから」


 宇宙主義はペンで紙に文字を書く時の小さい音を聞きとり、譜緒流手が裏と書いた事を判断したようだった。


 「そういう事かごめんね。早とちりしちゃったよ」


 筵は宇宙主義の首元からゆっくりとナイフを下ろすといつもの半笑いを取り戻す。


 「その殺意、普通の戦いでも良かったのでは無いですか?」


 「いやいや僕はただ、大切な後輩を傷つけられそうになってマジギレしただけのただの一般人だよ」


 筵はナイフをしまいながら言った。


 筵がナイフをしまった事でZクラスの全員の緊張がほぐれた。


 「くそー、ダメだったか。じゃあ湖畔くん敗者席に戻ろうか」


 譜緒流手は先程、宇宙主義が言ったとおり裏と書かれた紙を一旦みんなに見せたあとクシャクシャにして湖畔と共に窓際の席に向かっていった。


 ついに挑戦者は淵と筵の2人になってしまった。


 「・・・・・・もしかしたら、よしわたしが行きます」

 

 少し考えていた淵はなにかに気づいたような表情になり宇宙主義に勝負を仕掛ける。


 「わたしからのお題は質問です。よく考えて答えてください。ある親がワニに子供を誘拐されてしまいました。するとワニはその親に"俺が今からこの子にすることが分かれば生きてこの子を帰してやる。分からなければ食べてしまう"と言いました。その時、親が"子供を食べてしまうつもりなのでしょう"と言うとワニは食べる事も返すことも出来なくなってしまいます。さてこの状況をどう解決する?」


 淵が使ったのは人喰いワニのパラドックスという有名な矛盾の話であった。人工知能である宇宙主義はこのパラドックスを抜けられないと考えたのだろう。


 「確かにいい判断です。我々でなければ思考のループから抜け出せなくなる所です。そうでなくても答えることは出来ないでしょう。しかし我々は違います。完全なる心システムを搭載した我々にはパラドックスは通用しません。・・・答えは"解決方法は無い"です」


 「せ、正解です」


 宇宙主義は平然と答え、淵は悔しそうに呟く。


 「すみません筵先輩。ダメでした」


 「いや、心を持った機械だと確信を得ることが出来ただけでも十分だよ。それが分かっているのと、いないのとでは意気込みが違ってくるからね」


 筵は淵の肩を軽く叩いて宥めた。


 そして筵が宇宙主義の方を向き直す。すると宇宙主義はほくそ笑んで筵を見返す。


 「残りは貴方1人ですね。さあ早く決着をつけましょう」


 宇宙主義の言葉に筵は一度、深呼吸をする。そして地球の運命をかけたお題を発表する。


 「そうだね。皆がいろいろヒントをくれたから、必勝法とまでは行かないけど光明は見えてきたよ。お題は・・・確か文化祭の時の残りがあった筈だから粘土細工にしようか。そしてテーマは愛。評価基準はオリジナリティーなんてどうだろう?」 

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