表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/256

宇宙主義と平常授業 3

 校庭では色々不便ということになった一行は宇宙主義(コスモポリタン)と共にZクラスの教室に移動した。


 教室につき一段落した後、手始めに梨理が宇宙主義に勝負を仕掛ける。


 「じゃあ、あたしから行くぜ。お題はこちらが決めていいんだよな?」


 梨理は片腕の拳で片方の掌をうちつけながら気合十分に言った。


 「ええどうぞ」


 宇宙主義も余裕といった感じに答える。


 「あたしとの勝負のお題はジャンケンだ。分かるよなジャンケン」


 梨理は片腕をグーの状態で宇宙主義に見せる。


 「ええ知っていますよ。では始めましょう」


 「おいおい待てよ。ルールがまだちゃんと決まってねーだろ。そうだなー、一回勝負の最初はグーは無しでのスタートにしよう。そして大ヒントだ。"あたしは生まれた時からジャンケンでチョキしか出したことが無いんだぜ"」


 梨理は自身の能力、八百枚舌(スピークインジョーク)を発動させて嘘をつく。この能力は有り得ない嘘ほど信じさせてしまう能力であり、宇宙主義が機械の身体をしているが話が通じるため騙されるのではないかと判断しての行動だった。


 「それはいい事を聞きましたね」


 「そうだろ?じゃあ行くぜ。ジャンケン、ポイ」


 結果は梨理がパー、宇宙主義がチョキであった。


 梨理は少し驚いたような表情で宇宙主義を見る。


 「小細工をしたみたいですが、我々の殆どは機械です。故にたとえ能力でも騙されたりはしません。しかし、面白い戦いでしたよ」


 「ちっ、ダメだったか」


 梨理は敗者席とばかりにみんながいる教室の中心から離れた窓際の席に腰掛けた。


 「梨理ちゃんがやられたか、しかし、梨理ちゃんはこのZクラスの中でも最弱」


 筵が顎に手を当てながら鼻で笑う演技をする。


 「おい、筵テメー後で、ぶっ殺すぞ」


 「ちょっと梨理ちゃん。梨理ちゃんがこのクラスで最強っていうのがバレたら、舐められちゃうからここは乗っかってよ。土下座するから」


 「お前のその言動で、もろバレだよ」


 梨理は苦笑いをしながら、こっち見んなとばかりに手で"あっちに行け"というジェスチャーをした。





 

 「次は僕が行きます。お題はクイズです」


 少し不安そうな表情の湖畔が言う。


 「・・・どうぞ」


 「問題、大豆を納豆菌で発酵させることで作られる納豆ですが、納豆の発祥には諸説あります。その中でもある人物によって発見された事が有力であるとされているのですが、さてその人物は誰でしょう?」


 ・・・・・・。


 「これは・・・もしかしたら行けるかも知れませんね」


 湖畔の出した少しマニアックな問題に対して、(ふち)は数回頷きながら呟く。


 「こんな納豆好きにしかわからない激難問題、違う星から来た子に分かるわけないね」


 筵も淵の意見に賛同する。しかし数秒後、宇宙主義は少しだけほくそ笑むと口を開く。


 「答えは"源義家"です」


 「せっ、正解です」


 湖畔は驚きの中にも、何故か少し嬉しそうな表情の混ざった顔で答える。きっと納豆好き仲間だと感じたのだろう。


 しかし、残念ながらそうでは無かったようで、宇宙主義はそれについて説明する。


 「これは今調べたという訳ではありません。この様な歴史の短い星の知識など殆ど学習済みです」

 

 宇宙主義の言葉に湖畔は少し肩を落とした。すると筵はその肩を軽く叩く。


 「湖畔、君のおかげで無闇な知識問題は通用しない事が分かった。それだけでも成果だよ。それに何時か本当の納豆仲間にも出会える日が来るさ」


 筵は手でグッドのサインをしながら言った。


 湖畔はそれで元気を取り戻して梨理のいる敗者席の方へと向って行った。






 「次はうちが行きまーす。お題は"友達の数対決"通称、フレンドリングで決めましょう」


 カトリーナは皆が何とか勝てそうなお題を考えていて、沈黙している中、その沈黙を破り勝負を提案する。


 「ルールは未だに連絡を取り合っている人の中で、対等と呼べる人物のみが対象です」


 「くっ・・・」


 カトリーナのお題に少しの動揺を見せる宇宙主義、"これは行けるかも知れない"と皆が思っていた。


 しかし結果は、カトリーナ 2人、宇宙主義 3人であった。


 「あちゃー、負けてしまいました。しかし全力は尽くしましたから、後悔はありません」


 カトリーナはスーッとしたような顔で敗者席に向かう。


 カトリーナの2人とはきっと淵と湖畔の事だろう。カトリーナの提案した"対等と呼べる人物"の部分が図らずも宇宙主義を苦しめていたが、カトリーナ自身もその条件により、先輩後輩の仲の筵たちを数に入れる事が出来ず、結果、物凄い低い次元で僅差になってしまった訳である。


 「あの条件なら私勝てるんだけど、行っていいかな?」


 れん子が筵に小声で話しかける。


 「どうかな?僕は何だか少し可哀想な気がしてきたけど」


 筵もれん子の質問に小声で答える。


 するとその会話を聞いていたのか宇宙主義は慌ててルールを付け加える。


 「お、同じお題は無しです。そちらの条件で戦っているのですからこのくらいは呑んでください」


 宇宙主義は機械らしく無い様子でルールの追加を提案して、Zクラスのメンバーは渋々それに合意した。


 しかし、筵はそれ以前に宇宙主義の反応が気になっていた。もしも筵の考えが正しいのであれば、宇宙主義との対決はギリギリのものになってしまうかも知れないからであった。


 そう筵の予想、宇宙主義が"心を持った機械"なのだとしたら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ