大罪型ハーベスト戦で 1
「ここは何時の何処なんだい?祭ちゃん」
筵は知らない街の街並みを眺めながら祭に訪ねる。
しかし、その街は知らない街ではあったものの、周りの緊急事態らしき状況を見るとハーベストが襲来しそうなのだけは飲み込めた。
「ここは筵兄がいた時間軸から、数日もしくは数週間先の世界で、同時に筵兄のいた街から数十から数百km離れた場所に位置します」
「なるほどね、もっと機密っぽいことはお腹いっぱいなくらいにネタバレするのにそこは教えてくれないんだね」
筵はいつもの半笑いで数回頷く。
「で、なんでここに連れてきたんだい?」
「ここに第七の魔王型ハーベストが出現するんです。そしてその魔王型ハーベスト、通称大罪型ハーベストは7体のハーベストの集団ということになっているんです。表向きは」
「なるほど、すべて理解したよ」
筵は祭の言葉からここに連れてこられた理由を理解した。7つの大罪は元々9個の罪が統合され形であるという説がある。祭はその事を言おうとしたのだろう。
「でもだとしたら、なんでこの時間の僕を連れてこなかったんだい?」
「ああ、それですか。この時間の筵兄は忙しいんです。何せ第8の・・・おっと、これは本当に言ってはいけない奴でした。聞かなかった事にしてくれませんか?」
「OK、忘れとくよ」
筵は祭の言った不吉な言葉を忘れるように努力する事にした。
7体で1つのハーベストであると思われていた大罪型ハーベスト。
歴史上確認されているのは、かぐやによって倒された色慾、スチュワートによって倒された怠惰、リマによって倒された嫉妬、憩によって倒された暴食、学友騎士団により倒された憤怒、名雲聖によって倒された強欲、そして日室刀牙によって倒された傲慢。
本当は9体居たとするなら憂鬱と虚飾が残っている。
「それにしても名雲くんも戦うんだね。以外だよ」
「はい、確かこの世界で"唯一"魔剣を使い続けることの出来る能力者ですよね」
「その通り、学園に所属しててもほとんど登校してなかった筈だけど・・・・・・まあ彼には彼の物語が有るんだろうね。きっと幼女とくっ付いたんだろう」
「筵兄、名雲さんは誰も人を周りに寄せ付けないみたいな人ですよ。そんな事をあるわけないじゃないですか」
そんな白々しい会話した後、歳の離れた歳の近い兄弟は棒読みで笑いあった。
「いよいよ来たみたいですね」
祭は薄暗く変色してワープホールが出現した空を見ながら呟く。
それと同時にワープホールの中から目にクマがあり長髪のパーマがかった女性の悪魔の様な姿をしたハーベストが出現する。
見た目でハーベストを判断するなら間違いなくこちら側が憂鬱だろう。
「はあ、帰りたいけどー、命令だからー、仕方ない的なー」
憂鬱はその名の通り憂鬱そうに言い、筵たちの方を見下す。
「取り敢えず掃除しようかなー」
憂鬱は手を上げるとシャボン玉の様な沢山の泡が出現し、手を下げると同時に筵たちに襲いかかる。
「筵兄、こちら側は任せます。私はもう一方を倒しますので」
「1人で大丈夫かい?」
「大丈夫ですよ。私は本田家の三女ですから」
祭はそう言うとドヤ顔で親指を立て、筵にジェスチャーをした後、瞬間移動で姿を消した。
祭が姿を消したのを見送ると先程のシャボン玉は筵の周りを取り囲んでいた。
「よそ見してんじゃねーし、・・・はあ、帰りた」
憂鬱はそう言って指を鳴らすとシャボン玉の一つ一つが物凄い爆音と共に爆発した。
「はあ、憂鬱だわー」
憂鬱は頭を掻きながら、爆発出てきた砂煙を眺める。
「君に一つ謝らなくてはならないことがある。・・・それは君が僕と戦ってしまうことで、歴史上に存在しなかったハーベストにされてしまうということだ」
筵は砂煙の中から例のごとく無傷で生還し、なんの気持ちもこもっていなさそうな謝罪の言葉を述べた。