平常授業で平常授業 1
安住たちがこの時代に来て、1、2週間たち、その間に上のクラスでは数回ハーベストによる出動命令があった様だが、そのいずれもそれほど大変な規模では無く、祭のネタバレした魔王型ハーベストは出現してはいなかった。
この国には8個の能力者の学園があり、それぞれが特定の地域の防衛をまかなっていて、この学園は関東地方でのハーベストからの防衛を行っている。
能力者は100人に1人くらい存在するが、その多くはFクラスにもみたない、例えばマッチをすったくらいの火を起こすことが出来る程度の能力者であり、故に学園は8個ほどで事足りてしまうのである。
そして何が言いたいかというと、この学園が防衛している関東地方だけでも、一、二週間で、数回はハーベストの襲撃があるということである。
さらに補足して能力の説明をすると、能力には固有能力と普遍能力の二つがあり、わかりやすくい言うと固有能力はこの世界に唯一無二の能力であり、普遍能力は何人もの人間が同じ能力を持つ可能性がある能力である。
「ちなみに僕達Zクラスの全員や、父さん以外の本田家の人間は皆、固有能力の持ち主で特典として、その能力の名前を自分で決めることができるんだよね」
筵の発言にZクラス全員が俯く、能力名を決めたのはここにいる全員にとって決していい思い出ではないからであった。
「ね、れん子ちゃん?」
「私にふられた!!・・・・・・ああ、そうだね」
「某人気グループの冠番組みたいな能力名だもんね。れん子ちゃんのは」
「ぐはぁ!!」
れん子は机に崩れ落ちる。
今日は安住たちはおらず、いつも通りのメンバーで平常授業が行われていた。
今は現代社会の授業でハーベストの出現から能力の発症、さらに学園の設立などに関する説明を、例のごとく筵が教卓に立って行っている。
「ちなみに能力はハーベストの最初の出現と共に、目醒める人が現れだしたらしくて理由はさだかではないんだね。何やってんだろうね学者さんは、・・・いやこの場合、責めるべきはもしかしたら神なのかもしれないけどね」
筵はため息をつきながら呟く。
「あ、見てください筵先輩、なんか先輩の一族っぽい人が教科書に出てますよ。本田古巣さんですって」
カトリーナが教科書をパラパラとめくりって見つけたページの人を指さして言った。それはボサボサの長髪黒髪、漆黒の瞳を持つ少し動きやすそうな着物きた女性でカトリーナの言う通り、確かに本田家の人間の特徴を多く持つ人物であった。
「その時はまだ本田古巣さんだよ。本田家の初代当主だね。でも今では本田古巣と名乗っているから正解ではあるかな」
「今では?」
「ここの所、姿を見ないから、きっと実家に行っているんだろうね。その内姿を見せるかもしれないよ」
「えっ?もう、亡くなられてますよね」
「ああでも、もはや幽霊がいたっておかしくない世界だろここは」
筵はいつもの半笑いでカトリーナに返す。筵の言葉に1年組は驚いていたが、2年組はそんなでもない反応をしていて面識があるのだと思われた。
すると今度は淵が苦笑いで発言する。
「やはり、ぶっ飛んでますね筵先輩の家系は」
「ああ、ぶっ飛んでしまっているね」
筵は淵に笑い返した。
「ではこの、聖剣とか魔剣とかって何なんですか?」
もう1人の1年生である湖畔は教科書をめくり、聖剣や魔剣の項目を発見して発言した。その言葉に筵以外の2年生組はハッとしたような表情をしたが、筵は表情ひとつ変えずにその質問に答える。
「ああ、それは言わば能力の至りだね。心の底から力を求めた能力者の所に現れると言われていて、それがいい方に転べば聖剣、悪い方に転べば魔剣て感じかな、そして元々の持ち主が死んでもそれは残り続ける。でも聖剣は殆どが元々の持ち主以外には使用出来ないケースが多いね。魔剣は誰でも使えるけどその分リスクがある、そんな感じかな。さらに、秘宝と呼ばれるものもあってこれはわかりやすく言うと聖剣と魔剣の戦闘用で無い物だね」
筵の説明に湖畔がなるほどと納得する。その長たらしい説明を聞いたれん子は机に倒れ込んだ状態から顔を上げる。
「ところで何でそんな説明を前に出てしてるの?」
れん子の質問を受けた筵少し真顔になった。
「当たり前じゃないか、れん子ちゃん・・・現代社会の授業だからだよ」