トリプル(ブッキング)デートで休日を 5
筵、譜緒流手、愛巣の3名はチケットとポップコーン、飲み物を購入して映画館の上映スペースに入り指定された席に愛巣、筵、譜緒流手の順に座った。
周りの客はまばらで、映画を見るには素晴らしコンディションであると言えた。
「オレ、映画が始まる前の謎の映像嫌いなんだよな」
譜緒流手は映画独特の注意勧告をする映像を見ながら呟く。
「確かにサイケテリックな映像を見たときと同じ、何とも言えない気持ちになるよね」
「あとオレは童話とかの変なキャラクターとかを見ても同じ感覚を覚えるかも。卵のおじさんとか」
「それも確かにあるよね。愛巣ちゃんはどう?」
筵は横に座っている愛巣に話をふった。
「ふぇ?・・・ごくん。・・・全然聞いてなかった〜」
ポップコーンを口いっぱいに頬張っていた愛巣はそれを飲み込みながら答える。
「聞いてなかったか〜、まあいいか。・・・そう言えば、愛巣ちゃんも能力ってあるの?今までの2人は能力者だったけど?」
「ん?あるよ。と言うか普段から発動しているんだけどね。季節が冬か夏ならわかり易いんだけど」
「へぇ、興味深い能力だね」
「ん〜、便利だけど戦いではあまり役に立たない能力なんだよね、私の能力って。私の能力は治外法権的家庭内規則って言って私を中心とする六畳一間の空間を、私が定めた、法律、法則、ルールで縛ることが出来る。冬と夏だと分かりやすいのは、この能力のデフォルトルールで六畳一間の中は常に適温なんだよね」
愛巣はポップコーンをつまみながら説明する。
話を聞くと愛巣の能力のデフォルトルールには、プライベートルーム内では愛巣はダメージを受けない。プライベートルーム内での戦闘の禁止、プライベートルーム内での人物の排除の自由などがあるらしい。
愛巣の能力は今の時代なら恐らくZクラス入りだろうが、それでも栖の隔世遺伝を予想させる程の能力だった。
筵はそんな事を考えていると映画の予告や注意勧告の映像が終了して映画が始まった。
「なあ筵、お前3人の子供たちのことどう思ってる?」
映画も中盤に差し掛かったところで譜緒流手は愛巣が爆睡しているのを確認すると筵に問いかける。
「かわいいと思うよ。もちろん父親としてね」
「そう意味じゃなくて、違う未来から来たっていうの」
譜緒流手は的確に筵のされたく無かった質問をぶつけて来る。
「・・・・・・」
「どうした筵?」
「いや、言いたくないことを言わない事は嘘をついている事と変わらないのかなと考えている所だよ」
筵は今まで隠し事はしても、嘘はつかない様に努めてきた。しかし今、嘘をついてしまうか、黙りを決め込むか二つに一つの選択を迫られた。
「そうだね・・・・・・。僕は同じ未来から来たと思っているよ」
「ふ〜ん、と言うことは未来の筵はオレと梨理とれん子にほぼ同時期に子供を産ませたってこと?」
「そうなってしまうよ。死んだ方がいいね。そんな奴は」
筵の言葉に譜緒流手は少し考えた後、口を開いた。
「筵は死んでも死ねないでしよう。とツッコミを入れたい所だけど、真面目に答えると、もしかしたら筵なら3人と均等に付き合う事が出来るかも知れないね。それがいいとは言わないけど」
「優しいね、譜緒流手ちゃんは・・・」
「まあ、もっとも筵相手に特定の1人では、荷重すぎると言う考え方も有るけど」
譜緒流手はそう言うと一度、筵に対して笑顔を向けて、再び映画に集中する。
その様子を見た筵も、そろそろ後半の畳み掛けに突入しそうなアクション映画に目を向けた。
「予告までの記憶しか無いんですが」
愛巣は映画が始まる前にポップコーンを食べ終わり眠りについていたため、映画本編の記憶がまるで無いようだった。
今は映画館のロビーで椅子に座って休憩している最中であった。
「未来に帰ったら旧作で借りられるからいいんじゃない?十数年後にも残っているような名作だったかは疑問だけど」
譜緒流手はなかなか辛口なコメントを言い筵を見る。
「僕は結構面白かったと思うよ。アイドルの吹き替えとか」
「一々、敵を作らないと気が済まないのかアンタは」
筵の軽い小ボケに譜緒流手がツッコむと、愛巣はまじまじと2人の様子を伺っていた。
「当たり前だけど、やっぱりお父とお母なんだね〜。今の会話の雰囲気、まるっきりそうだったよ」
愛巣がそんなことを言ったが、筵と譜緒流手はそういうことで恥ずかしがるようなタイプでも無いため"へえ、そうなんだ"と相槌を打つ。
それから筵たちは、まだ時間が余っているため、何か他の遊びを見つけるために映画館の外へと出ていった。




