トリプル(ブッキング)デートで休日を 4
かなりの大食いである梨理とアジトによって、散々昼飯を、というか最早、次の予定がある3時近くまで飯を集られた筵は次の予定の場所に行くために席を立った。
「おお、見ろアジト。モテ男が次の女との予定に向かうぞ。こんな男にはなるなよ」
梨理は持っていたフォークで筵を指しながら言った。
「そう言わないでよ、梨理ちゃん。僕も本当はこんな事したくないんだから」
筵は疲れたような表情で言うと伝票を手に取った。
「まだ頼むなら、お金を置いておくけどどうする?」
「いや、もう頼まないからいいわ。サンキュー」
梨理はデザートのパンケーキを頬張りながら一応、筵に感謝を伝えた。
筵はまだ食事をしている梨理とアジトにいつもの半笑いで笑いかけると会計に向かい、料金を払って店の外に出た。すると、そのすぐ後からアジトが少し駆け足で追いかけくる。
「父さん。なんで未来のことを聞かなかったんだよ」
「ああそのことなら、さっき安住ちゃんにいろいろ質問して困らせてしまったからね、反省したんだよ。あともしも僕の予想が正しかったのなら僕と君たちは協力関係にあると思う。わざわざ自分から真実を暴くような真似はしない方がいいんじゃないかな」
「父さん、・・・・・・」
アジトが何か言おうとしたところで筵が人差し指を立て”静かに”というジェスチャーをしてそれを止めた。
「未来が僕の予想した通りでも、そうでは無かったとしても真実は聞かない方がいいと思う。その方がいろいろ動きやすいからね」
筵はそう言うとアジトに手を振りながら、次の約束の場所へ向かい、アジトは再び梨理の待つファミレスの中に入っていった。
続いて筵は譜緒流手たちと会うために映画館に向っていた。見る映画などは決めずに取りあえず、3時の集合にしてしまったため、面白そうな映画がやっているか以前に、ちょうどいい時間に映画がやっているかの方が心配でもあった。
当初の目的は子供たちから事情を聴くことだったが、今となっては筵の予想が譜緒流手に悟られないようにすることが目的となってしまっていた。
そのためにはつまらなそうな映画より、なるべく面白くて派手な映画の方が好まれ、同時にたくさん人が入っている方が上映中、話をすることが憚られて筵にとって好都合であった。
筵が待ち合わせ場所に到着したのはギリギリだったが譜緒流手たちはまだ来ていなかった。よって今回は筵が相手を待つ形となっていた。
それから数分たって、小さいのに目立つ、よく似た二人組の幼児体型の少女たちが待ち合わせ場所に到着した。
「すまん、筵待ったか?」
幼児体型の片割れ、筵の幼馴染でもある譜緒流手が筵に問いかけてくる。
「5分41秒くらいかな。この時間から考えると、今来たところというには少々時間が立ち過ぎているけれど、別に待ったというほど待ってはいないので、全く心配する必要はないことを伝えるにはどうしたらいいのだろう」
「ああ、今ので全部伝わったから大丈夫。それにしても時間を秒単位で正確に数えてるとかマジか。いや正確なのは良いことだけど、ただ性格は悪いな」
譜緒流手は筵に苦笑いを向けて言った。
続いて筵は幼児体型のもう片割れ、愛巣に向かって話しかける。
「愛巣ちゃん、こんにちわ」
「お父、あいすでは無く、氷菓子のイントネーションであいすと呼んでよね?昨日も言ったでしょ」
愛巣は筵譲りの腐った目で筵を下からのぞき込みながら注意する。
「ごめんごめん、すっかり忘れていたよ」
筵は愛巣に謝りを入れると映画館の中へと入っていった。
「感動系の作品って結局、ヒロインが死んじゃって最後に手紙読んで終るよね。馬鹿の一つ覚えみたいに」
筵は今から30分待ち位で見られる映画のリストを見ながら呟く。
「確かにそういうの多いけど、今、色んなところを敵に回したぞ」
譜緒流手は筵の発言に少し焦りながらツッコミを入れる。
「いやいや、誰かが死ぬ事で感動に持っていくのはどうなのかなと思うだけだよ。死を司る僕としてはね」
「別にあんた死を司ってわないだろ!?」
「ただ良く知っているよ。何せこの世界で僕より死んだ人間なんていないだろうからね。そういった意味では第一人者と言ってもいい」
「でも筵、すぐに蘇るでしょ?」
「そうだね。でも死の重みについて忘れたことは一度も無いよ。この前ダンボールで手を斬った時も死の重みを感じながら復活したものだよ」
「そこに重量はあるのかな!?」
「まあ、とにかく感動系は却下だね」
感動系の映画は死の第一人者を自称する筵の一任で却下された。
続いて、他の映画リストを見ていた筵はある重要なことに気づいた。
「恋愛映画は変な空気になってしまうとか、アニメは引かれるとか考える前に、愛巣ちゃんからしたら、どれもかなり昔の映画になってしまうわけだよね」
「それもそうだな愛巣、何か見たいのある?」
筵の意見に同調した譜緒流手は愛巣に見られる映画リストを見せながら意見を求める。
「そうだね、私的にはお金がかかってて派手な奴がいいな。そうしたら内容が詰まんなくてもギリ許せるでしょ?あとはポップコーンがあれば文句はないよ」
「「ああ確かに」」
愛巣の意見に筵と譜緒流手が関心して、結局、外国のよく爆発したりクラッシュしたりする映画を見ることになった。