崩壊都市で・・・ 1
筵と楼が学園のある町に着くと、そこは南の島との時差により夕方であった。
町は瓦礫に埋もれていて、ハーベストとの熾烈な戦いがここで行われていることが伺い知れた。
そして、瞬間移動して来た場所から少し離れた所では30mはあろうかと言う巨人の様なハーベストや4m程の沢山の翼竜のようなハーベストなどが見えていて、たった今もハーベストとの戦闘が行われていることが分かった。
「なかなかの大きさですねお兄様。倒しに行きますか?」
「そうだね。・・・あと一つお願いがあるけど聞いてくれる」
「ええもちろんです。何でしょうか?」
楼は上目遣いで筵に訪ねる。
「結界を破ったのと、ここまで移動したのは、楼ちゃんがやった事にしてくれないかな?」
そのお願いを聞いた楼は驚愕の表情を筵に向けた。
「どう言う事ですかお兄様?お兄様の功績を知れば他の三下共もお兄様の素晴らしさの1%は理解出来るはずです」
「そうだろうね。でも僕はまだZクラスから離れるわけにはいかないんだ。魔剣の事を知られたら戦いに狩り出されてしまうでしょ?」
「それはそうですが・・・」
楼は複雑そうな顔で悩んでいたが、しばらく考え渋々それを承諾した。
戦闘が行われている辺りに近づくと30mほどの大きさの巨人型ハーベストや数十の翼竜型ハーベストと戦っている日室刀牙、藤居かぐや、そして本来は筵の護衛である斬人の姿を目視で確認することが出来た。
他の学園から派遣された者達は違う場所で戦いを行っているようだった。
「あの程度の敵に苦戦するなんて、やはりただの三下ですね」
「まあ、そう言わないであげてよ。きっと戦い漬けで疲れてるんだよ」
鼻で笑いながら言う楼を筵が諭し、続けて筵は楼に依頼をする。
「では楼ちゃんアイツら何とかしてくれないかな?」
「分かりましたお兄様。すぐにぶっ殺します」
楼はそう言うと何らかの能力で筵の隣から姿を消して巨人型ハーベスト首元の真後ろに姿を現し、そしてそのまま浮いた状態を維持している。
楼は誰かから奪ったテレポートと浮遊の能力を使ったのだろう。テレポートの他にも楼は自分にちょっかいを出してきた者等から能力を取り上げてしまっている。
そして楼が人から奪った能力は30を越えていて、その全てを元の持ち主よりも遥かに上手く使いこなしてしまっているのである。
「次はこれで行きましょう」
楼はそう言うと巨人型ハーベストの身体の周りに黒い球体のようなものが無数に現れる。
そして、楼が指を鳴らすとその球体一つ一つがかなりの威力の爆発を起こす。
それにより、巨人型ハーベストは跪き苦しそうにしているが、この攻撃は致命的なダメージにはなっていない様でそいつはまだ生きていた。
「まだ死にませんか。少し気に入りました。特別にコレクションに加えて上げましょう」
楼が能力を発動させると楼の後ろに魔法陣の様なものが無数に現れそこからいくつもの鎖が猛スピードで射出される。
そして、その鎖は巨人型ハーベストの身体の至る所に突き刺さる。
「かなり弱っていますね。やはり使い捨てですか」
完全に巨人型ハーベストの身体の所有権を得た楼がそいつの肩に着地すると残念そうにため息をつく。
「まあ、雑魚を倒すのにはちょうどいいですね」
楼がそう言うと鎖を出していた魔法陣の色が赤く変色して、その赤色は鎖にまで広がり、巨人型ハーベストに突き刺さっている部分にまで到達した。
「"慈悲 異形活性"」
何かを注入されている様子の巨人型ハーベストは筋肉が増えたり、角の様なものが生えてきたりで目に見えて進化している様子が伺えた。しかし、目は血走っていて、無理矢理に限界を超えさせていると言った感じでもあり、とても健康に悪そうであった。
楼の能力により無理矢理強化させられた巨人型ハーベストは跪いている状態から立ち上がり、自身の周りを飛んでいた翼竜型ハーベストをまるで五月蝿い蚊を潰すように殺し始める。
巨人型ハーベストの裏切りにより、周りの翼竜型ハーベストたちは過半数が殺され、残りはちりじりになって逃げ回った。
「まあこの位で良いですかね」
楼は逃げ惑う翼竜型ハーベストを見下しながら呟き、続いてゴミを見る様な目で巨人型ハーベストを見る。
「これも用済みですね」
楼の言葉と共に赤かった魔法陣が今度は黒く変色して、さらにその漆黒は鎖に伝染して巨人型ハーベストに注がれていく。
「異形活性 応用版 過剰活性」
楼は瞬間移動の能力で少し離れた地面に移動する。すると巨人型ハーベストは急に苦しみ出してのたうち回り、体を掻きむしり、至るところの血管が破裂し、やがて白目を向ながら地面に倒れこむと、それ以上動かなくなった。