結界内で平常授業 2
「これってオレたちのお手柄じゃね?」
町で得た情報を総合的に考えた譜緒流手は顎に手を当てながら言った。
どうやらこの島を覆っている結界は、雇われたメイドさんたちの中にまぎれた、ハーベスト信者によって張られた物らしい。
ハーベスト信者とは、ハーベストを地球の怒りの体現とか、神罰の執行者とか思っている人たちのことで、そのもの達によって張られたこの結界は一ヶ月間、確実に対象を封印するというものらしい。
"どうやって結界など張ったか"という疑問で先程のキューブの様なものが出てくる。これはいわゆる秘宝で対象の命を吸い発動することができる。
これが島の至るところにあり、ハーベスト信者のメイドの命を吸い結界を発動させた。
しかし、どういう事か結界は未完成の状態で発動して一ヶ月間""確実"に封印すると言うわけでは無くなっていたらしい。
筵たちは情報を得るとまずはスーパーに向かった。今はまだ結界を解除する方法を探している生徒が多く、あまり混雑しては居なく、店員をやっていたメイドさんも、裏切りによる欠員で違う仕事に掛り切りなっていて姿が無かった。
「まあ、もう少ししたら、ここは戦場なるだろうね」
筵は半笑いのまま言い、楼はそんな筵の腕にしがみついた。
「さすがはお兄様、冷静な判断お見事です」
「そうでしょ、さすおにでしょ?じゃあ早速、楼ちゃん適当に取っちゃって」
「はい、分かりました」
筵の言葉に満面の笑みで答えた楼は、能力を発動させて鎖を呼び出し、商品に鎖をつなぐとその商品は何処かに消え去ってしまった。
その状況を楼の事をあまり知らないものたちは、唖然としていたように見ていた。筵はその硬直しているメンバーに気づくと楼の能力について説明を始める。
「楼ちゃんは鎖で繋いだモノの所有権を得ることが出来るんだよ。そして所有権を奪ったものは一旦、別の時の停まった空間に保存しておくことが出来るんだ。敵の必殺技とかも保存しておけるんだよ」
「さすがは楼様、お姉様と呼ばせてください。さすおねです」
紅來莉子が訳の分からない言葉に対して、楼は"きもい"と言って回し蹴りで紅來莉子を蹴り飛ばした。
楼が着々と食品やお菓子、飲み物を確保していると、れん子が筵の肩を軽く叩いた。
「ねえ、これ勝手に取っちゃっていいの?」
「災害時は食品を無償提供する所って結構あるんだよ。ここがそうかは知らないけど」
「知らないんだ・・・あっ、あとこんなに取っていいのかな?」
「れん子ちゃんは優しいね。でも僕たちはZクラスだよ。食品を分配するにあたって、下りてくるのはFクラスより下。最悪、僕を使ったウミガメのスープ作戦ていうのがあるけど、それでもいいの?」
「よーし、楼さんじゃんじゃん取っちゃって」
筵の言葉を聞いてれん子は、額に汗をかきながら楼の近くまで行って商品を指差して指示を始める。
「ブラックすぎるでしょ?さっきのジョーク」
譜緒流手は苦笑いを浮かべながら筵に近づき話しかける。すると、半笑いを作り真顔に変えた筵が振り返る。
「譜緒流手ちゃん、そう言えば全ての食材には旬があるんだってさ、だとしたら・・・何時なんだろうね」
「いやいや、こわいこわい」
譜緒流手は筵の作り真顔に少し怯えながら両手を前に突き出した。
するとお菓子コーナーから大量の食玩を持ったカトリーナが走ってくる。
「筵先輩、これもいいですよね?緊急事態ですもんね」
「もちろん、緊急事態だからね」
親指を立てアイコンタクト交わしている筵とカトリーナに対して、譜緒流手が割って入る。
「それは・・・どうなんだ?」
「ラムネが入ってるんでセーフだね」
「ありがとうございます。筵先輩」
お辞儀をしたカトリーナは保存してもらう交渉を行いに楼の方へと走っていった。
入れ替わるように今度は湖畔が、両手に大量の何かを抱えながら歩いてくる。それは納豆であった。
「筵先輩、これやっぱりバレたらまずくないですか?」
「言っている事とやってる事がかみ合ってないね湖畔。でも大丈夫だよ。監視カメラ止めておいたから」
「というか湖畔くん納豆好きなんだ、結構意外」
筵の言葉に安心して、譜緒流手の言葉に赤くなって頷いた後、てくてくと楼の方へ歩いていった。
「筵、お前はいいのか?」
譜緒流手が首をかしげながら横にいる筵を見る。
「僕は食事取らなくても大丈夫だからね」
「つくづく便利な能力だよな」
「ああ、Zクラスだけど最高の能力だと思ってるよ」